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第269話 初日


「ようやくDランクの依頼にも慣れてきたところよ。まだまだ先は長いわね」


「安定して依頼は達成できるようになってきたくらいだ。ニコレの言う通り、これからだな」


 それでも冒険者という危険の多い職業で頑張りながらも、これまで大きな怪我をしてこなかったことはすごいことである。


 ただ、それと同時に3人がこの街を去ってしまうのもそろそろなので寂しい気持ちになってしまう。3人は俺の命の恩人であるだけでなく、これまでずっとこの街で仲良く過ごしてきた大切な友人だからな。


 とはいえ、一生の別れというわけでもないし、リリアのように冒険者を引退したらこの街に戻ってくる可能性もある。冒険者としてのステップアップなので、その時は笑って送り出してあげたいところだ。


「テツヤ、あっちの庭はすごいな! 実際に組み立ててあるテントやチェアをこの目で見られるのはすごくいいと思うぜ」


 ……おっと、感慨に浸っている場合じゃなかったな。今日は新規店舗のオープンの日だ。みんな頑張っているわけだし、俺もしゃんとしよう。


「ああ、前の店と比べてこの店はだいぶ広くなったから、いろいろと置けるようになったんだ。やっぱり金額の高い買い物をする時は実際自分の目で見てから買いたいものだよな」


 ロイヤが店の中庭を指差す。新規店舗には中庭があり、営業中はそこに組み立てたテントやチェアを置いて、お客さんは自由に試すことが可能だ。


 これは元の世界のアウトドアショップのアイディアである。俺も昔アウトドアショップへ行った時にはチェアの座り心地を試したり比べたりしたものだ。やはり実物を見たり触ったりすると購入する時の後押しになるものだからな。


 さすがに今は種類が少ないけれど、いずれはいろんな種類の商品を置いて好きな商品を選んでもらえるようにしたいものだ。


「私たちもそろそろテントや寝袋を持ってもいいかもしれないわね」


「確かにそうだな。何度か日をまたぐ想定で森の中で野営してみるのもいいかもしれない」


 森の中で野営か……。あの森ではそれほど強い魔物はいないものの、俺にはゴブリンですら無理だ。ロイヤたちもあんまり無茶はしないでほしいものだ。


「へえ~これまでに見たことがあるテントと組み立て方が違うんだな」


「ああ、グレゴ工房で新しい形式のものを作ってもらったんだ。素材も従来の物とはちょっと違うぞ。その分値段の方は少し高くなっているけれどな」


「こっちのイスの座り心地が良いわね。それにこんなに小さくなるんだ」


「う~ん、イスまではいらないけれど、テントはありか」


 庭には実際に組み立てたテント、チェア、タープなんかがあり、それとは別に1セットずつ自分で組み立てを試せるようにしている。テントのポールは元の世界の造りで、だいぶ組み立てやすくなっているからな。


 とはいえ、やっぱり冒険者にチェアまでは不要と考える者は多そうだ。基本は地べたに座る者が多い。


「いろいろとあるから見ていってくれ。また今度一緒にご飯でも食べに行こう」


「ああ、もちろんだぜ」


「いつもの宿の飯屋だな。改めて新規店オープンおめでとう」


「頑張ってね、テツヤ。フィアちゃんにもよろしく!」


 ロイヤたちの他にもお客さんは多いからな。俺も仕事に戻らなければ。


 みんなとの付き合いも長くなった。あとどれくらいアレフレアにいてくれるのか分からないけれど、その時はみんなで盛大に送り出すとしよう。






「「「ありがとうございました」」」


 新規店オープン初日が無事に終わった。


「ふう~みんな今日一日本当にお疲れさま!」


 お客さんの数は過去一番多かったが、大きなトラブルなく終わったのは幸いだった。正直なところ、久しぶりにお店を開いたことと、新しく大きな店に移ったことで何らかのトラブルはあると踏んでいたが、嬉しい誤算だった。


『ふむ、思ったよりも忙しいものだな。しばらくは我もこちらに専念するとしよう』


「スヴィーさんも本当にお疲れさま」


 トラブルが起こらなかった要因のひとつはまちがいなくスヴィーさんのおかげだろう。


 実際の接客は初めてだというのに、ルーンゴーレムを操り、実に3人分の働きを見せてくれた。ミスもほとんどなかったし、本当にすごかった。……改めて賢者という称号を持っているのにうちの店で働いてもらっていいのかなとは思うが。


「それじゃあ、閉店作業から始めよう。そのあとは今日の反省会と今後の改善点を話していこうか」


「ああ、了解だ」


「頑張るです!」


 リリアとフィアちゃんにはこの異世界に来て最初の露店から助けてもらった。


「僕も今週はお手伝いするよ」


「俺もみんなの足を引っ張らないように頑張らなければな」


「私も頑張ります」


 ランジェさんには毎週ではないけれど、収納魔法や氷魔法を使ってたくさん手伝ってもらっている。力持ちのドルファは倉庫から一度で多くの商品を運んでくれるし、接客の得意なアンジュは男性冒険者の心を掴んでくれた。


 新しい従業員のスヴィーさん。お店のみんなだけでなく、いつも護衛をお願いしているベルナさんとフェリーさん、冒険者ギルドのライザックさんやパトリスさんにルハイルさん、グレゴさんに宿屋のおっちゃんに駆け出し冒険者のみんな。


 この新しい店を開くまでに本当にたくさんの人のお世話になった。


 少しずつみんなからもらった恩を返していくとしよう。


【お知らせ】

 いつも拙作をお読みいただきありがとうございます


 こちらの作品ですが、この後は書籍版の第3巻が発売される際にあわせて最終話を何話か投稿して完結となります。


 長く更新を続けており、新キャラも加わって新店舗がオープンし、本当はまだまだこの先を書き続けていきたかったのですが、筆者の力不足もあってそれも厳しそうです。


 ここまでお付き合いいただいた読者様、書籍版を購入していただきました皆様にはこの場にて厚く御礼申し上げます!


 最終話とエピローグではこの話の少しあとでテツヤとリリアの今後を書こうと思っています。ぜひ、最後の最後までお付き合いいただけますと幸いです。


 WEB投稿や他の作品はまだまだ続けていきますので、ぜひそちらの作品もよろしくお願いいたします


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◆アウトドアショップin異世界店◆
◇冒険者の始まりの街でオープン!◇

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― 新着の感想 ―
最終話……だと……? とても、とても残念です… だからこそ、最後まで楽しませていただきます!
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