第267話 新商品の発売
「まずはいきなり目玉商品からのご紹介です。こちらの商品は様々な香辛料を混ぜ合わせた特別製のソースとなります! これを少量かければ、一気にひとつ上のランクの味に大変身! 特に肉によく合うこのソースは『アウトドアソース』です」
「「「おおお~」」」
「いつものアウトドアスパイスもおいしいですが、こちらのアウトドアソースもとてもおいしいですよ。それでは早速味を見ていただきましょう。今回はワイルドボアの肉を焼いたものにこのソースをかけております」
みんなに手伝ってもらい、テーブルの上に試食品である小さく切ったワイルドボアの肉にソースをかけ、並んでいるお客さんへ配っていく。お客さんが多くて店に入るまで待っている時間もあると思って結構な量を準備してある。
今回はアウトドアソースの魅力を伝えるためにあえて一番馴染みのある安めのワイルドボアの肉を試食してもらう。
ちなみにアウトドアソースはバーベキュー、ガーリック、黒いソースなどいろいろな種類があるのだが、今回は冒険者がよく食べる肉に合うバーベキュー味を販売することにした。
「うおっ、何だこりゃ! 複雑で深みのある味じゃねえか!」
「へえ~いつも食べ慣れているワイルドボアの肉がこんな味になっちゃうんだ! 確かにこれは塩をかけるだけよりも遥かにおいしいわ!」
うむ。俺も焼き肉のタレもどきを自作しているが、このアウトドアソースは商品として販売されているだけあって、それよりもレベルが高い。肉を焼いてこのソースをかけるだけでかなりの味になる。
理想を言えば他の味も販売したかったが、容器の問題がある。この容器も他の木筒や保存パックと同様に容器ごと販売するのだが、液体ということもあって、こぼれにくい容器をグレゴさんに作ってもらった。
あんまり商品を増やし過ぎると容器を用意して、それを洗って再利用するのが大変になるからな。
「お次の商品は『レトルト牛丼』となります。こちらの商品はすでに販売しているレトルトカレーと同じ容器にて販売しますので、お間違いのないようご注意ください。また、レトルト牛丼はそのまま食べてもおいしいのですが、白米と食べるとよりおいしいのでぜひ試してみてください」
続いての新商品はレトルト牛丼だ。すでにレトルトカレーは販売しており、グレゴさんが作ってくれた液体を漏らさず、直接加熱できる茶色い袋状の保存パックに入れて販売する。
カレーと同様に熱湯で消毒をしているので、結構な期間もつことはすでに確認済みである。アウトドアショップの能力がレベル4に上がった際、牛丼、中華丼、麻婆丼の4種類が購入できるようになったが、今回は牛丼のみ新しく販売する。
というのも、この保存パックは回収して洗って再利用している。保存パック自体はグレゴさんの工房でいっぱい作っているが、馴染みの宿でおっちゃんやアルバイトを雇って洗ってもらうのにも限度があるからな。こちらもアウトドアソースと一緒で、少しずつ種類を増やしていくとしよう。
「うわあ~この甘いタレが最高ね!」
「うん、肉の味もなかなかだ。これをお湯で温めるだけで食えるなんてすごいな!」
「こんな少しじゃなくて、思いっきり食べたいぜ!」
お客さんの反応も上々である。
牛丼はこの甘いタレが最高なんだよなあ。これだけでもご飯が何杯もいけてしまう。試食品はスプーン一杯くらいの白米に少しずつ牛丼を載せているだけなので、お客さんの物足りないという気持ちもよくわかる。
カレーと同様に温めるだけでいいので、この街にある大きな森で探索の合間にすぐに食べられるから需要はありそうだ。
「これらの他にもテントや寝袋、チェアなどの新商品がたくさんございます。これまでは1種類ずつしかなかった商品が様々な大きさや色で購入できるようになりました。ぜひ店内にてご確認くださいませ!」
「へえ~確かにあのテントだと俺には小さかったんだよなあ。それに次の街へ行く時に数人で入れるテントがあればいいと思っていたんだ」
「寝袋かあ。そろそろ購入してみてもいいかも」
新商品という意味ではこの2種類となるが、グレゴさんたちが他の工房にもお願いして大量に作った様々な大きさのテントなどがある。アウトドアショップで購入した元の世界のテントやチェアを参考にしているので、小さく畳めて軽量である。
この街では日をまたぐ依頼はあまりないかもしれないが、遠出したり冒険者のランクが上がって別の街へ移動したりするときは重宝されるだろう。
そしてグレゴさんたちに作ってもらった商品の他にもウインドブレーカーや防水リュックなんかの色や大きさが違うものも購入できるようになったので、こちらも販売する。
これでようやく元の世界のような本格的なアウトドアショップっぽくなってきたぞ。