第258話 オープン準備
「そんなわけでスヴィーさんだよ。お客さんだけれど、一緒にお店の開店準備の手伝いをしてくれるからよろしくね」
「スヴィーだ。突然押しかけてすまない」
「フィ、フィアです! よろしくです!」
「ドルファだ。よろしく頼む」
「アンジュです。よろしくお願いします」
翌日の午後。今日もスヴィーさんがお店を訪れてくれていたので、今日から新規店舗のオープン準備に向けて集まってくれたフィアちゃん、ドルファ、アンジュの3人にスヴィーさんを紹介した。
3人とも突然現れた他国の要人であるスヴィーさんにとても驚いていた。それとスヴィーさんの師匠であるアースさんと俺がこことは別の世界からやってきたということも話してある。
さすがに数日の休みの間にいきなりそんな人が現れたら驚いても当然だよな。
「基本的にスヴィーさんは上の階にいながら、ルーンゴーレムを操作して手伝ってくれるんだ。ゴーレムは喋れないけれど、こちらの指示は聞こえているらしいから、商品の品出しを手伝ってもらおう」
「なんでも気軽に指示を出してほしい」
相変わらずスヴィーさんは俺のアウトドアショップで購入した様々な商品を検分するのに忙しいようだ。スヴィーさんのゴーレムにいろいろと手伝ってもらうかわりに、何か質問があれば俺が答えるといった感じだな。
俺がスヴィーさんの質問に答えるだけで、ゴーレム5体分の労働力を使わせてくれるのなら安いものである。
「それじゃあ手分けして商品を商品棚に置いたり、値札や飾りつけなんかを付けていこう」
昨日ランジェさんが少し進めてくれていたけれど、今日の朝にグレゴ工房とグレゴさんが協力をお願いしていたいろんな工房からテントやチェアなんかの商品が続々と届いている。
結構な種類と量だから、並べるだけでも大変である。それにこの新規店舗の倉庫は前の店舗よりもだいぶ大きい。こちらもすぐに必要な商品が取り出せるようにしっかりと整理しておくとしよう。
「あ、あの。こっちの商品をお願いしたいです!」
「………………」
「あ、ありがとうです!」
フィアちゃんの言葉にルーンゴーレムが頷き、フィアちゃんでは届かない棚の一番上へ商品を置く。ルーンゴーレムは力もあるので、そこそこ重い商品を軽々と棚の上に並べてくれる。
ふ~む、接客とかはできないけれど、すごく便利な魔法だよな。もしも商店を営業する際にこんな魔法を使えたら、人件費をだいぶ抑えることができそうだ。 品出しをしたり、店内を見回ってもらうだけでもすごく助かりそうである。
「それにしてもテツヤさんと同郷の方のお弟子さんとは本当に驚きました。賢者という称号は初めて聞いたのですが、やっぱりすごいのですよね?」
「ああ、俺も知らなかったけれど、パトリスさんに聞いてみたらAランク冒険者以上に少ない存在らしいよ」
作業をしながらアンジュの質問に答える。俺も気になってパトリスさんに聞いたら、それくらいの存在と聞いて驚いたな。
「すごいな、Aランク冒険者以上なのか。というか、このゴーレムもかなりの強さのようだぞ」
「やっぱりそうなんだ」
ドルファがそう言うのなら、あのゴーレム一体ごとが相当な強さなのだろう。そんなゴーレムを5体同時に召喚できるのだからすごい。
間違いなく商店の手伝いをしてもらってもらうような立場ではないと思うんだけれどね。まあ、スヴィーさんの方も集中して俺の世界の商品を検分できて満足そうにしているからいいのかな。
「テツヤ、こんなものでどうだ?」
「うん、いい感じだよ。まさかたった1日でほとんど終わっちゃうとはね」
時刻は夕方。昨日ランジェさんとスヴィーさんのゴーレムが進めてくれてたとはいえ、2~3日かかると思っていたオープン準備がたった1日で終わるとは思ってもいなかった。
力持ちのゴーレムのおかげで、大きな商品を棚へ並べる作業はほとんど任せることができたからな。他のみんなで小さな商品を並べたり、値札を張ったり、中庭へ設置する商品のレイアウトを考えたりと他の作業に集中できた。
「やっぱりスヴィーさんのゴーレムがすごかったね。フェリーさんの召喚魔法とは微妙に違うけれど、あれだけ長時間召喚できるのは本当にすごいことだよ。僕も召喚魔法は適性がないから羨ましいなあ~綺麗な女の子とかを召喚できたら最高だったんだけれどね」
「「「………………」」」
ランジェさんはいつも通りの平常運転だった。
すでにスヴィーさんのルーンゴーレムは召喚を解除してもらっている。おかげでオープンまでにだいぶ余裕ができたな。さて、スヴィーさんにお礼を伝えにいくとしよう。