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第255話 ルーンゴーレム


「これは我の召喚魔法である。若干他の召喚魔法とは異なり、生物ではなく我の指示通りに動く人形を召喚する魔法だ」


「……確かに他の召喚魔法とは少し違う。触ってもいい?」


「ああ、もちろんだ。自由に検分してみてくれ」


 あの人見知りなフェリーさんが自分からスヴィーさんへ聞きにいくとはよっぽど気になったみたいだ。


 確かにフェリーさんが召喚したスレプやシルフとは様子が違うらしい。スレプやシルフはフェリーさんの言うことを聞いてくれるが、しっかりと自身の意思があった。スヴィーさんが召喚したこの紋様のあるゴーレムは黙って立っているだけだった。


「このルーンゴーレムはそれぞれ我と繋がっていて、同時に操作が可能である。聴覚や視覚などの一部の感覚は我とつながっているので、指示をくれればその通りに動こう」


「……そんな召喚魔法、聞いたことがない」


「すごい魔法ですわね」


 へえ~なんとも便利な召喚魔法だ。それにしても、5体分のゴーレムと感覚がつながっているってどういう感じなんだろうな?


「商品を運んだり並べたりとなんでも言ってくれ。返事はできぬが、このゴーレムに話しかけてくれれば、その言葉は我に伝わるぞ」


「ええ~と、さすがに悪いですよ」


 というか、そんなとんでもない召喚魔法で召喚したゴーレムに商品の品出しとかをやってもらうわけにはいかない。それにスヴィーさんは他国の要人だ。さすがにそんな人を働かせるのはまずい気がする。


「ふむ、気にする必要はない。それに我自身は別に働くわけではないぞ。精神的には多少疲れるかもしれぬが問題ない。これで我はテツヤ殿が出してくれた不思議な道具を研究しながら、テツヤ殿の店を手伝えるわけであるからな」


「………………」


 目をキラキラさせながらそんなことを言うスヴィーさん。そこまでアウトドアショップで購入できる商品に興味を持ってくれるとは……


 さすがにそこまでしてくれるのなら断るのは野暮か。それにスヴィーさん本人を働かせているわけではないからセーフだろう。


 ……というか、5体のゴーレムと一部の感覚を共有しつつ、自分の頭で商品を研究するってすごいな。さすが他国で賢者の称号を受けたほどの実力者だ。


「わかりました、お言葉に甘えます」




「それではスヴィーさん、すみませんがよろしくお願いします。ランジェさんも留守番よろしくね」


「うむ、任せてもらおう!」


「うん、任せて!」


 午前中はみんなで今後の開店準備をどのように進めていくかを話し合った。明日はフィアちゃん、ドルファ、アンジュも出勤して全員でオープン準備を行う。そのための手順を再確認した。


 基本的に店内はグレゴさんたちが綺麗に作ってくれたばかりなので、商品を並べたり、装飾や値札を付けたりといった仕事がメインとなる。


 それに新しい店舗の商品のレイアウトも考えないといけない。ジャンルごとにわけたり、こっちの商品は目立つようにしたり、棒状ラーメンやインスタントスープなどと合わせて使えるシェラカップを横に置いたりと、いろいろと考えることはあるのだ。


 そして俺たちはスヴィーさんとランジェさんを残して冒険者ギルドとグレゴ工房へと向かう。スヴィーさんはルーンゴーレムを操って開店準備をしてくれつつ、上の階で俺が購入したキャンプギアなどを検分していた。


 特に盗られて困るような物はないので、スヴィーさんだけで留守番をしてもらっていても良かったのだが、ランジェさんも残ってくれるそうだ。……スヴィーさんを口説こうとしていたっぽいけれど、今のスヴィーさんは検分に夢中だったから厳しそうだと思うなあ。




「そういったわけで、スヴィーさんはこちらを害するつもりはまったくなさそうです。むしろ今も開店の準備を手伝ってくれています」


「……なるほど。まあ、国から冒険者ギルドを通している時点で、テツヤを害する意図はなかったと思っていたが、それほどまでにテツヤの世界の道具に興味を持ったとはな」


「冷静に考えてみればテツヤさんの世界の道具は不思議な仕組みの物ばかりなので、研究者にとっては研究をしたくてたまらないのかもしれませんね」


 パトリスさんの言う通りなのだろう。そういえば職人であるグレゴさんも出会った時からローテーブルの仕組みなんかに興味津々だったもんな。


「そっちは問題なさそうでよかったぜ。ベルマルコンの方は王都でルハイルのやつが進めているから問題ないか。もしかしたらダンジョンの魔物図鑑については面倒なダンジョンがあったら依頼はあるかもしれねえ」


「ええ、その場合は一度ご相談ください」


 とりあえず、ダンジョンの中に入って図鑑を購入するだけなので、条件や場所によっては受けてもいいかもしれない。


「それと、早速王都の方から連絡がありまして、例のシャンプーとリンスの使い心地は最高だったとの感想がありました。対価を払うので、ひき続き定期的に送ってほしいそうです」


「もう連絡が来たんですね。承知しました、今後も王都へ商品を送る際に一緒に送らせていただきます」


 早くもオーガニックシャンプーとリンスの感想をわざわざ伝えてくれたらしい。帰りにクエトのダンジョンへ寄っていたとはいえ、随分と早く感想を送ってくれたものだ。とりあえず肌に合わないとかがなくてほっとした。


 これで王都での件についてとスヴィーさんについては落ち着いたと思っていいだろう。さて、あとはお店の新規開店に尽力するとしよう。


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◆アウトドアショップin異世界店◆
◇冒険者の始まりの街でオープン!◇

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― 新着の感想 ―
王族とのコネも良好ですね。
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