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第246話 アース


「……ふむ、どうやら師匠がやってきた世界とテツヤ殿がやってきた世界は完全に同一のものと見て間違いはなさそうであるな」


「ええ。ここまで一致しているとなると、同じ世界と見て間違いないでしょう。それにしても、まさか()()()さんが俺よりも5年近く後から来たのは驚きました」


 あれからスヴィーさんとしばらく話をして、様々なことが分かった。


 まずスヴィーさんの師匠であるアースさんは俺と同じ日本人で、俺がこの世界へやってきた5年後からこの世界の300年前に転移してきたらしい。時間軸が完全にズレているとは思っていたけれど、まさか、俺より未来から、俺よりも昔に転移してきたとは思わなかった。


 そしてアースさんが転移した場所は俺が泊っていたキャンプ場ではなく、全然別の山の中で昼間登山をしている時に突然この世界へやってきたようだ。ひとりだったことと、自然の中だったことくらいしか俺と共通点がない。あのキャンプ場が異世界に繋がっているという訳じゃなさそうだ。


 ちなみにアースという名前はこの世界の名前ではなく、漢字で()()と書いてアースと読むらしい……。スヴィーさんは自分たちの住む星を表す言葉だとアースさんから聞いたとドヤ顔で言っていた。アースさん、自分の名前がキラキラネームということはスヴィーさんには言えなかったようだな……。


「少なくとも元の世界に帰れるような情報はないか。まあ、これについては元から若干諦めていたから大丈夫だ」


 アースさんが60代の時にこの世界で亡くなったと王都で聞いた時点で、元の世界へ戻ることは無理だと思っていた。


 スヴィーさんはアースさんが亡くなったあとも魔法を学びつつ別の世界のことを研究し、他の転移者がいないかを探し続けていたらしい。300年近く、他国も回ってその情報を調べていても見つからなかったということは俺の今後の人生で元の世界へ戻れる可能性は限りなく低そうだ。


 スヴィーさんが他国で賢者になったのも別の世界のことを研究しながらいろんな国を旅した結果らしい。


「どうやら、あまり有益な情報は渡せなかったようであるな」


「とんでもない! アースさんのお話が聞けてよかったです。本当にありがとうございました」


 時間軸のねじれもあると分かったことだし、元の世界へ戻るのは難しいということも再確認できた。元の世界へ帰るのはもう諦めてよいだろう。


 ただ、それとは別に同じ日本からの転移者がいたこともわかった。もしかしたら、この世界に俺以外の転移者が現れる可能性は全然あるし、もしかすると現状に苦しんでいる転移者がいる可能性もあるため、転移者の情報は引き続き集めていくことにしよう。


「このままスヴィーさんの質問に答えていきたいところなのですが、もし可能でしたら日にちを改めていただけないでしょうか?」


 すでにスヴィーさんと話し始めてから2時間以上は経っている。俺は元の世界の話ができて嬉しいけれど、他のみんなは頭にハテナマークを浮かべているし、俺たちはさっきこの街に帰ってきたばかりだ。


 ここで日にちを改めてもらうのは申し訳ないけれど、なんだか一気に疲れが出てきた……


 このあとは新店舗の状況を見にグレゴさんとも話したいし、日を改めたいところだ。


「むう……我としてはもっとテツヤ殿の話を聞かせてほしいのではあるが、確かにテツヤ殿たちは今日この街に戻ってきたばかりであるか……。承知した、それでは後日改めて話を聞かせてほしい」


「はい、もちろんです。ちょうど明日は空いているので、スヴィーさんが空いているようでしたら、1日ゆっくりと話をさせていただきます」


「本当であるか! 感謝する!」


 今日はここまでと言われた時はものすごく落胆していた表情だったが、明日話すと伝えた途端に一気に満面の笑顔となった。とても分かりやすいな。


 スヴィーさんはさっき話していた車や飛行機など、元の世界の知識にとても興味を持っていた。きっと師匠であるアースさんと同じ世界から来た転移者のことを待ち望んでいたのだろう。


 俺も今日はたくさんの有益な情報を聞けたし、明日は身体を休めながらスヴィーさんと話をさせていただくとしよう。俺もまだ話したいことがいろいろとある。




「それではテツヤ殿、明日またよろしく頼む」


 スヴィーさんが俺に向かって頭を下げてギルドマスターの部屋を出ていく。


 部屋に残された俺たちは一息つく。


「ふう~とりあえず、スヴィーさんが俺を害そうと思っているわけじゃなくてほっとしたよ」


「確かにテツヤと話していた時の彼女の表情は年相応のものだったよね。純粋にテツヤの故郷のことを知りたいって感じだったと思うよ」


「ええ。私には難しいことは分かりませんでしたが、ランジェさんの言う通り、悪意はないように思えました」


 ランジェさんもパトリスさんも俺と同意見のようだ。あれだけ無邪気に目を輝かせながら俺の話を聞いてくれていたスヴィーさんに悪意はないように思える。


 もちろん警戒は必要だけれど、他国に頼まれて俺を攫うつもりとかではないようだ。わざわざ冒険者ギルドを通している時点でその可能性は低いと思っていたけれど。


最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます!

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誤字脱字、日本語のおかしいところがありましたら教えて頂けますと非常に嬉しいです( ^ω^ )

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― 新着の感想 ―
親は子供がその名前を一生背負う事になる事をちゃんと考えるべきだと思う…
 キラキラネームかぁ。『アース』と言うから『◯◯大地』さんかと思ったら、『地球』さんだったか。俺の同級生でも何人かいたな、キラキラネーム。  自分の子に『悪魔』と名付けようとして裁判に、なんてのもニュ…
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