第243話 緊急の用件
「テツヤさん、アレフレアの街が見えてきましたわ」
「おっ、ついにか。まだ一月も経っていないのに、だいぶ久しぶりに感じるよ」
「ふふ、テツヤは大袈裟だな」
リリアはそう言うけれど、前回王都へ行った時は1週間の弾丸ツアーみたいなものだったからな。
今回はたっぷり王都や道中の街やクエトのダンジョンを回って、ベルマルコンの発見や王妃様との謁見やダンジョンに入るなどあまりにも情報量が多かったこともあって、何だか数か月はアレフレアの街から離れていた気がするよ……
さて、グレゴさんたちにお願いしていた新規店舗はどうなっているかなあ。いや、その前にまずは冒険者ギルドによっていろいろな報告からか。きっとライザックさんもパトリスさんも驚くだろうな。
「それじゃあ、また2日後にね。フィアちゃん、レーアさんによろしくね」
「はいです! テツヤお兄ちゃん、お土産もいっぱいありがとうです!」
アレフレアの街へ入り、ドルファとアンジュと別れ、フィアちゃんを家まで送る。まだ昼過ぎだから、フィアちゃんの母親であるレーアさんはまだ仕事中のようだ。当然レーアさんにも王都でのお土産をたくさん買ってきてある。
明日と明後日はみんなお休みだ。王都までの長い旅の疲れをゆっくりと癒してもらう。そのあとは新しいお店のリニューアルオープンの準備をみんなで準備だ。やることはいっぱいあるぞ。
「それじゃあ、次は冒険者ギルドか」
アウトドアショップの新規店舗の現状を確認する前に冒険者ギルドへ向かう。ベルナさん、フェリーさん、ランジェさん、リリアと一緒に5人で冒険者ギルドへと向かった。
「おう、テツヤ! まずは無事にこの街に帰ってきてくれて何よりだ。他のみんなもテツヤの護衛、お疲れさん」
「お帰りなさい、皆さん。長旅お疲れでした」
冒険者ギルドへ行き、受付さんに話を通していつも通り冒険者ギルドマスターの部屋へ通されると、ライザックさんとパトリスさんが出迎えてくれた。
「ベルナさんとフェリーさんはテツヤさんの護衛をありがとうございました。何でも少し寄り道をしてきたようですね。詳細は後ほどお伺いさせていただきます」
「はい、早速いろいろと報告させてもらいますね。報告しなければならないことがいっぱいあります」
王都の冒険者ギルドマスターであるルハイルさんからの依頼でクエトのダンジョンへ寄り道していたこともあって、当初の予定よりも2日ほど遅れてアレフレアの街に到着したが、そのことはすでに王都から連絡が入っているようだ。
一応王都からアレフレアの街まで安全に情報を送れる信頼のあるルートを確保できたようだけれど、どちらにせよ報告することがいっぱいあるので、2日遅れることだけ話して詳細な報告はアレフレアに戻ってからするつもりだった。
さて、まずは2人が一番気になっていそうな王妃様との謁見のことについてからかな。
「……ああ~そのことなんだがな、テツヤたちの報告の中で緊急性の高い用件はあったりするか?」
報告を始めようとしたところで、ライザックさんが今まで以上に真剣な表情となる。
「えっと、緊急な用件はないですけれど、どうしたんですか?」
「そうか。それなら先にこっちの用件を聞いてもらうとするか」
「……っ! 何かあったんですか!? 新規店舗に嫌がらせとか、俺の知り合いが怪我をしたりとかですか!」
もしかして、俺たちが王都へ出掛けている間に何かあったのか!
「テツヤさん、誰かが害されたというわけではありませんので落ち着いてください。実はテツヤさんたちが王都へ出掛けている間に、テツヤさんへ来訪者がありました」
「来訪者ですか?」
誰だろう。商人とかかな?
もはや王都の王妃様と謁見したくらいだし、大商人や貴族くらいでは驚かないぞ。
「……実はな、そいつはテツヤの故郷から来た人物を知っていると言っていた」
「えっ!?」
俺の故郷ということはつまり……
「ここにいる皆さんはテツヤさんが別の世界から来たというお話をすでに知っておりますね。真偽の方は定かでないですが、その方の知り合いはテツヤさんと同じ世界からやってきたと言っておりました」
「マジですか……」
つい先日王都でルハイルさんから得た情報で300年ほど前に転移者がいたかもしれないという情報を得た。もしかすると俺以外にも別の転移者がこの時代にいる可能性もゼロではないと思っていたが、まさかそういうことか。
「最初はテツヤさんのお店に直接行かれたようですが、しばらくお店を休んでいることと、冒険者ギルドの協力店ということを知ってこちらに来られたようですね」
「テツヤが以前に言っていたニホンとアメリカという国の名前を知っていた。それだけなら冒険者ギルドがその情報を集めていることから知った可能性もあるが、アニメだとかマンガだとか、テツヤが言っていたことについても知っていたから信憑性は高いと思うぜ」
冒険者ギルドでは俺の故郷のことについての情報を集めてもらっている。日本やアメリカという国の名前に加え、もし本当に転移者だったら知っていそうなことをリストにしてライザックさんたちに渡していた。
ライザックさんの言う通り、それを知っているのならかなり信憑性は高いと思う。
「その方は他国の要人なのですが、アウトドアショップの棒状ラーメンやレトルトカレーなどの商品の噂からテツヤさんのことを知り、わざわざこの国までやってきたようです」
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