第242話 クレープとゼリー
ちなみに実際には4種類の果物で試してみたのだけれど、1つは寒天が固まらなかった。確か寒天は酸性が強いとうまく固まらない場合があったはずだ。ゼラチンの場合は果物の酵素がまずいんだったっけな。
もしかしたら別の原因があるかもしれないけれど、4つのうち1つだけ固まらなかった。逆に3つもちゃんと固まってくれたからよしとしよう。
「うわあ、ひんやりしていて甘くてとってもおいしいです!」
「ああ、ゼリー飲料よりもこっちの方がうまい。それにゼリーだけでなく果物の果肉まで入っているのはいいな」
フィアちゃんもドルファもスプーンを使っておいしそうにゼリーを食べている。ゼリー飲料はエネルギー補給が目的であって、果汁の甘味や砂糖の甘さではないからな。
確かに果汁のゼリーだけでなく、果肉も入っていた方がうまいな。もしかすると固まらなかったやつは果肉を入れたことが原因の可能性もある。
「このプルプルした食感がたまらない! この黄色のゼリーが好き!」
「私はこっちの赤いゼリーが好きですわ! 甘味だけでなく酸味もあっておいしいです!」
「俺は紫色のやつかな。確かにこれはどれが好みかは個人によってわかれそうな気がする」
フェリーさんは黄色、ベルナさんは赤色、俺は紫色のゼリーと見事に好みがわかれている。みんなもそれぞれ好きなゼリーが異なっていた。
一番多かったのは赤色のゼリーのようだ。
「あとは砂糖の量は要調整かな。ちょうどいいのもあったけれど、少し甘すぎたり、もう少し砂糖の甘さが控えめの方がいいゼリーもある。その辺りはいろいろと試してみて研究だ。とりあえずうまく固まってくれたからよしとしよう」
ちゃんと固まってくれたことが第一だけれど、このゼリーはまだまだいろいろな改良点がありそうだ。それに一応ゼリーに合いそうな果物を選んだつもりだけれど、別の果物も試してみたい。
う~ん、下手をしたらスイーツ作りは料理よりも奥が深いかもしれないな。スイーツの基本である砂糖を安く手に入れる方法をドルファが発見してくれたことを感謝しよう。
「ちなみに昨日のクレープと比べたらどっちがおいしかった?」
「え~と……どちらもとてもおいしかったですが、やっぱり私は昨日のクレープの方が好きかもしれません。ゼリーはゼリー飲料に近い味だったのですが、あのクリームの甘さは今まで食べたスイーツの中で一番の味でした!」
「悩むところだけれど、私もクレープの方が好きだな。ただ、暑い日や疲れた日なんかはこっちのゼリーの方が冷たくて食べやすくて良いと思う」
アンジュもリリアも基本的にはクレープの方が好きらしい。リリアの言う通り、確かに暑い日や疲れた日はゼリーの方が食べやすくて人気が出るかもしれない。
アンジュがそこまで言うのも珍しい。よっぽどクレープが気に入ったようだ。
「悩むが俺はゼリーの方がさっぱりしていて好きだな」
「僕もどちらかというとこっちのゼリーかなあ。それに見た目もとっても綺麗だし、これは女の子へのいいお土産になりそうだよ。今度王都へ行く時はルハイルさんにも持っていこうっと!」
ドルファとランジェさんはゼリーの方が好みのようだ。やはり甘いものがどれくらい好きかもありそうだな。俺は男だけれど結構な甘党だから、どちらかというとクレープの方が好きだ。
「どっちも同じくらい好き。テツヤ、ランジェ、クレープもゼリーもいっぱい作ってほしい。ランジェにはちゃんと報酬を払う」
「……難しい質問ですが、クレープですわ。おふたりには申し訳ないですが、私も両方ともたくさんほしいです」
「僕の方には報酬はいらないよ。2人にはこうして王都まで護衛してもらっていることだしね。あっ、テツヤ。いつも悪いけれど、僕の分もお願いするよ」
フェリーさんは同じくらい、ベルナさんはクレープか。
う~ん、もちろんみんなには現在進行形でお世話になっているし、料理と同じようにクレープやゼリーを作ること自体は全然構わないのだが……
「ランジェさんは大丈夫そうだけれど、ベルナさんとフェリーさんは本当に大丈夫? もちろん作ることは全然大丈夫だけれど、さっきも言ったように特にクレープは太りやすいんだよね。あるだけ食べちゃったりしないかな?」
以前から3人には俺が作った料理やようかんやチョコレートバーを渡しているのだが、1~2か月に一度アレフレアの街に戻ってきた時には大体早めに食べ尽くして禁断症状みたいなものが出ているんだよね。
「……自信がまったくない」
「私も我慢できる自信がないですわ……」
うん、やっぱりそんな気もしてた。
「了解。それじゃあ太りにくいゼリーを多めに作っておくよ。クレープはたまに特別なことがあったら食べるようにするといいかもね。実は昨日のはシンプルなクレープだったんだけれど、生の果物の他にチョコレートバーを刻んで溶かしたチョコレート、ようかんを溶かした餡子、果物のジャムみたいにいろいろとトッピングができ――」
「テツヤ、それも絶対にお願い!」
「テツヤさん、どうかよろしくお願いします!」
「テツヤお兄ちゃん、フィアも食べてみたいです!」
「テツヤさん、私もお願いします!」
「テツヤ、私も頼む!」
「「「………………」」」
めちゃくちゃ食い気味だったな。女性陣のスイーツへの執着はすごいと聞いていたが、まさかこれほどとは思わなかったぞ……
う~ん、生クリームやゼリーの砂糖の量はこっそりと減らしておいた方がいいかもしれない。
さて、明日は3週間ぶりくらいにアレフレアの街へ帰還する。予定では新規店舗が完成しているはずだ。そして冒険者ギルドのライザックさんとパトリスさんに色々と報告しないとな。
ベルマルコンの砂糖やダンジョンでの魔物図鑑など、2人の驚く顔が楽しみである。
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誤字脱字、日本語のおかしいところがありましたら教えて頂けますと非常に嬉しいです( ^ω^ )