第237話 魔物図鑑
「確かにこれまでの魔物図鑑と比べるとだいぶ分厚い気がする」
「ダンジョン内の魔物が載っている可能性が高そう」
「……うん、内容は全部魔物の情報だし、やっぱりこれはいつもよりも分厚い魔物図鑑だ。ダンジョンの外に出て中を確認しようと思っていたけれど、もうほぼ確定的だな」
リリアとフェリーさんも俺と同意見のようだ。
なるほど、確かにこのクエト付近の魔物の情報に加えて、ダンジョン内の魔物の情報が載っていれば普通の魔物図鑑よりも分厚くなるのは当然のことか。
ちなみに昨日宿で地図と魔物図鑑を購入した際には他の場所で購入した時と同様の地図と魔物図鑑が購入できた。魔物図鑑だけダンジョン内部で購入すると変化があったようだ。
「地図の方はさすがに駄目か。元の世界のアウトドアショップで販売している地図は詳細に記載されていて本になっているタイプのもあるから、もしかしたらいけるかとも思ったけれど、さすがに無理だったみたいだね」
地図は普通の1枚の地図の他にも登山用の詳細の地図の本やツーリング用の全国の地図なんかがある。まあ、この国全土の詳細な地図なんかが出てきたら出てきたでいろいろとヤバイことになっていた可能性の方が高いけれど。
「……やっぱりこの付近には生息しないと思われる魔物の情報が載っている。相当強い魔物の情報もあるし、このダンジョンの深い階層で出現する魔物だと思う」
「了解。確認ありがとうね、フェリーさん」
通路に他の人が来ないことを確認しつつ、フェリーさんに魔物図鑑の内容を見てもらい、そのまま収納魔法でしまってもらう。
地図はともかく、魔物図鑑の確認方法は魔物に詳しい冒険者のみんなに見てもらおうと思っていたけれど、まさか図鑑の厚さで分かるとはな。
「予定通り1階層だけ降りてみるか、テツヤ?」
「そうだね。ないとは思うけれど、ひとつ階層を降りたら内容が変わる可能性もあるかもしれない」
予定ではダンジョンの1階層に加えて2階層に降りた場所で地図と図鑑を購入するつもりだった。さすがに内容は変わらないと思うけれど、せっかくここまで来たことだし、2階層まで降りて同様に地図と魔物図鑑を購入するとしよう。
1階層に出てくる魔物はリリアとフェリーさんがいれば問題ないし、すでに1階層のマッピングはされて公開されてすぐに2階層へ降りることができるからな。
「へえ~2階層目は1階層目とは全然違うんだね」
「階段を降りてきたら広々とした草原があるとは不思議な感覚だな」
事前に入手していたクエトのダンジョンの1階層目のマップ通りにダンジョンを進んで、2階層へ降りる階段を見つけた。
1階層目に出現した魔物はスライムの他にゴブリンと大きな蝙蝠の魔物がいた。ゴブリンの方は俺がこの世界に来て初めて遭遇したゴブリンと似たような姿をしていたな。リリアとフェリーさんは瞬殺していたけれど、やはり俺では勝てなかっただろうな。
そして2階層へ降りると、そこには広々とした草原が広がっている。高い天井があって日の光は入らないはずなのに明るいのは不思議でしょうがない。ダンジョンの中に草原があるとか、本当にどういう仕組みなんだろうな……
「ここはまだ2階層だから道もあって優しいほう。深い階層だと何の目印もなくて本当に苦労する」
「なるほど。確かに方位磁石があると攻略が楽になりそうだね」
事前に聞いていた話だと、ダンジョンにはこの2階層目のような草原だけでなく、森や沼地なんかの地形もあるらしい。フェリーさんの言う通り道や高い山などの目印なんかのない階層では探索に苦労しそうだ。
ダンジョンに入っている人たちの半分以上は方位磁石を持っていたみたいだから、ダンジョン攻略に方位磁石が多少は浸透してきているのだろう。ここから近い王都でルハイルさんたち冒険者ギルドが方位磁石を完成させたことだし、これからはもっと方位磁石を持つ人が増えていくに違いない。
「……魔物図鑑の最終ページ数も変わらないし、さっきの魔物図鑑と同じっぽいな。詳細はあとで見るとして、ダンジョンから出よう」
「ああ、わかった」
「了解」
この階層は開けた草原だったので、少しだけ道から外れたところでアウトドアショップの能力で地図と魔物図鑑を購入した。
地図も魔物図鑑も今のところは先ほど購入したものと同じようだった。細かい検証はダンジョンの外に出てからみんなで確認するとして、今はダンジョンを出るとしよう。
「……どうやら地図は全部一緒みたいだね。図鑑の方はダンジョン内で購入したものはダンジョン内に存在する魔物が載っているようだな」
無事にダンジョンを出て宿へと戻ってきて、地図と魔物図鑑の内容をみんなで確認している。この宿はとても簡素で声が漏れてしまうので、フェリーさんが盗聴防止の魔法をかけてくれた。
地図についてだが、ダンジョンの外、ダンジョンの1階層目と2階層目で購入したものはすべて同じだった。正確に言うと、購入した場所がほんの少しだけずれているから、ほんのわずかにだけ異なるが、ダンジョン内の地図はなかった。
そして魔物図鑑の方は俺たちがダンジョンに入っている間にみんなが集めてくれたこのダンジョンに出現する魔物の情報と照らし合わせたところ、このダンジョンに出現する魔物であることが判明した。