第234話 魚料理
「ダンジョンにはそこにしか出ない魔物もおりますわ。場所によってはダンジョンに出ている屋台を巡るのも楽しいですね」
「場所によっては宿や値段が高い場所もあるのが難点」
「へえ~ダンジョンもいろいろと楽しめそうだね」
きっとベルナさんとフェリーさんはいろんなダンジョンを巡ってきたんだろうなあ。
うん、ダンジョンに入らなくてもそれはそれで楽しめそうである。ルハイルさんから報酬もいただいたことだし、お金はあまり気にせず楽しむとしよう。
「ダンジョンのご飯も気になりますが、今日のご飯もとてもおいしいですね」
「ああ、この味は初めて食べる味だな」
「王都には魚も少し売っていたからね。それに今回は時間もたっぷりあったから、いろんな調味料や香辛料を買うことができたよ」
こいつは魚の煮つけだ。アンジュもドルファも気に入ってくれたらしい。
今回は王都に滞在する時間も長かったから、たくさんの調味料と香辛料を扱っているお店を回ることができた。味噌と醤油もしっかりと補充できたし、新しく酢やみりんに近い味の調味料を購入することができた。
酢やみりんがあるということは原材料となる米もあるはずだったのだが、店が違うようで見つけられなかった。まあ米に関してはアウトドアショップの能力でアルファ米を購入できる。
それに品種改良されていない米はあまりおいしくないらしいからな。これまでの日本の米農家のみなさんの努力に感謝である。とはいえ異世界の米がどんなものかも気にはなるから、見つけたらとりあえず確保しておきたいところだ。
「こっちの南蛮漬けという料理もとってもおいしいです!」
「ああ、酸っぱくて不思議な味だけれど、なんともいえない味でおいしいぞ。小さくて安い小魚をどうしてあんなに買ったのか不思議だったけれど、丸ごと食べるとは驚いた」
「フィアちゃんとリリアも気に入ってくれてよかったよ。小さい魚を丸ごと揚げているから骨ごと食べられるんだよ」
煮つけの他には南蛮漬けを作ってみた。小魚に片栗粉をまぶして、フライパンに薄く張った油で揚げて、酢とみりんと醤油を加えた合わせ酢に野菜と一緒にしばらく漬けて完成だ。
個人的にこの南蛮漬けは結構好きなんだよね。お酢やみりんなんかの調味料が増えると料理にもいろんな幅ができるからありがたい。今後は砂糖も安くなるだろうから、いろんなお菓子でも作ってみるかな。
「ブルオオ!」
「ワオン!」
フェリーさんの召喚獣であるスレイプニルのスレプとシルバーウルフのシルフもおいしそうに魚料理を食べている。
召喚獣は普通の魔物と違って俺たちと同じものを食べられるし、どちらも好き嫌いはないみたいだな。
「南蛮漬けは一晩くらい漬けてから冷やして食べてもおいしいんだよね。いっぱい作っておいたから、明日は冷やして食べようか」
作ったばかりの南蛮漬けは魚の味と風味がまだ残っていておいしいのだけれど、個人的には長時間漬けて合わせ酢に馴染んだ南蛮漬けの方が好きなんだよね。
ポータブル冷蔵庫と発電機があれば冷やすことも簡単だけれど、ランジェさんの氷魔法を使って冷やした方が早いので、あとでお願いするとしよう。
「こっちの酸味のある方はお酒にもよく合いそうですわ。あの、テツヤさん。どちらもとてもおいしいので、また作っていただけるととても嬉しいのですが……」
「魚料理はとても貴重! 特にこっちの甘辛いのが好き。いっぱいほしい!」
「そう言うと思って多めに作っておいたから大丈夫だよ。南蛮漬けの方は明日まで漬けておいたやつも持っていってね。もちろんランジェさんの分もあるよ」
「はい! ありがとうございます」
「さすがテツヤ、分かっている!」
「僕の分もありがとうね、テツヤ」
ベルナさんとフェリーさんには王都や他の街へ寄る際にうちの店の商品を卸してもらっているお礼に、ようかんやチョコレートバーなんかのアウトドアショップの能力で購入したお菓子や作った料理を渡している。
ランジェさんもうちの店の商品を仕入れるフリをしてもらっているから同様にだな。フェリーさんとランジェさんが収納魔法を使えてこそだ。
「今日はフィアちゃんやアンジュとリリアにも手伝ってもらえていっぱい作ることができたおかげだよ。こちらこそ、いつも護衛や仕入れのフリをありがとうね」
普段は俺だけだが、今日はフィアちゃんとアンジュも手伝ってくれたから、いつもより少ない時間でたくさん料理を作ることができたおかげだ。それにたまにはみんなで料理するのも楽しいものだな。
そして普段はリリアやランジェさんと一緒に食べているご飯だが、こうやって大勢で楽しむのもまた違った楽しさがあるものだ。フェリーさんの可愛い召喚獣であるスレプやシルフも一緒でさらに素晴らしい。
前にアレフレアの街の外でやったバーベキューも楽しかったことだし、開店前にまたみんなを集めて楽しむとしよう。