表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

229/274

第229話 再現


 正直に言って、元の世界の優れたキャンプギアをこちらの世界の素材や技術で再現できるとは思ってもいなかったけれど、こちらの世界には魔法や魔物の素材があるため完璧に再現はできなくとも、代替品のような物を作ることができることが分かった。


 それに元の世界のキャンプギアをこちらの世界の素材で再現するのって結構面白いんだよね。グレゴさんと一緒にああでもないこうでもないと話したり、ライザックさんとパトリスさんと魔物の素材のことについてあれこれ話し合ったりするのも楽しい時間だ。


 俺の生活基盤も落ち着いてきたことだし、もしもこちらの世界の素材や技術で作り出せるなら、俺がいなくても作れるそっちの方がいいからな。まあ再現ができたとしたら、生産や支店での販売なんかはすべて丸投げするつもりだけどね。


「うむ、約束しよう。支店のこと以外についても何かあればこちらに相談するがよい。この度はとても有意義な謁見であったぞ」


「はは! こちらこそ王妃様にお会いできて光栄でした。今度ともよろしくお願いいたします」


「お、お願いいたします!」


 リリアと一緒に席を立って王妃様に向かって頭を下げる。


 どうやら無事に王妃様との謁見が終わったようだな。なにか粗相をすることもなく、アウトドアショップを目にかけてくれるようなので、今回の謁見は大成功だと言えるだろう。


 あとは今回献上するオーガニックのシャンプー、コンディショナー、石鹸がどれくらい喜ばれるかで今後の付き合いも変わっていきそうだ。商品の使い心地や品質は問題ないと思うから、あとは王妃様の肌にあうことを祈るとしよう。




「ふう~リリアもお疲れさま。とりあえず謁見はうまくいったようでよかったよ」


「テ、テツヤはよく王妃様と普通に話せていたな……」


「もちろん俺も緊張はしていたけれど、身分が上の人と話すことは慣れていたからね」


 王城から高級宿への帰り道、相変わらず豪勢な馬車の中でリリアと一緒に王城での謁見を振り返っている。あれだけキラキラと豪華な謁見の間でこの国の王妃様と直接話していたのかと思うと、現実感がまったくない。


 ある意味では現実感がなさ過ぎたおかげで王妃様と多少はまともに話せたのかもしれないな。それに前の世界では上司と話す時は敬語だったし、この世界の人の口調は少し荒いから、俺の話し方でも大丈夫だったようだ。


「王妃様もそうだが、騎士団長のメルトン殿の圧もすごかったな。間違いなく私よりも強いだろう。ベルナかフェリー、冒険者で言えばAランク冒険者かそれ以上の力を持っていたと思うぞ」


「メルトンさんはそんなに強かったんだ……睨まれた時は怖かったけれど、俺の方にそこまで圧は感じなかったかな」


 どうやらリリアは王妃様の隣にいた騎士団長のメルトンさんから圧を受けていたこともあって緊張していたようだ。そりゃこの国の騎士団長だから、強いに決まっているよな。


 動きのまったく見えないベルナさんや強大な魔法を使うフェリーさんと同じかそれ以上の力か……リリアも元Bランク冒険者だけれど、メルトンさんはそれ以上の力を持っているらしい。


 俺は一度睨まれたけれど、そこまで強い圧は感じなかった。強者にしか分からないのか、俺が完全に戦闘の素人だから加減をしてくれていたのかもしれない。


「そういえば最近テツヤがいろいろと料理を試していたのは支店のこともあったからなのか?」


「そうだね、こっちの食材でいろいろと作れないか試しているんだよ。でも料理については俺だけじゃ限界があるから、もう少し人手を探したいところだね」


 キャンプギアに関しては鍛冶屋のグレゴさんと冒険者ギルドのライザックさんとパトリスさんと相談していろいろと見通しが立っているけれど、料理なんかはそこまでアドバイスをもらえる人がいない。


 アンジュとフィアちゃんが少し料理をできるから、この世界の食材についてアドバイスをもらいつつ試行錯誤をしているけれど、元の世界にはない食材が多くてなかなか難しい。


 ちなみに俺がこの世界に初めて泊まった宿のおっちゃんはかなり料理に詳しいから、洗ってもらった木筒を回収する時に少し話を聞いたりもしている。


「……普段は店もあって忙しいのだから、あんまり無理はするんじゃないぞ」


「ちゃんと休みは取っているから大丈夫だよ。それにやってみると結構面白いからね。むしろいい気分転換にもなるんだよ」


 この世界には娯楽のようなものがあまりないからな。元の世界のキャンプギアや料理をこちらの世界の物で再現するのはかなり面白いので、むしろ今では娯楽のような感覚で楽しんでいる。元々料理も好きだったから、良い気分転換になってくれるのだ。


 ちなみに棒状ラーメンは再現できそうなのだが、そのスープが難しいんだよね……ランジェさんの氷魔法によって食品を凍らせるまではできたけれど、そこから凍らせた水分を取り除くのに一工夫が必要そうだ。


 元の世界のフリーズドライを魔法や魔道具なんかでできればそっちも作れそうなんだけれどな。今回ベルマルコンから砂糖が得られたのと、小豆に近い豆があったから、それを使えばようかんはいけそうだ。チョコレートバーは材料のカカオがまだ見つかっていないから難しそうである。


 そんな感じでいろいろと考えるのが楽しいのである。


 さて、これで王都へ来た用事は終わったから、今日と明日はみんなと王都を楽しむとしよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

◆アウトドアショップin異世界店◆
◇冒険者の始まりの街でオープン!◇

(上をクリックで挿絵やキャラ紹介のある作品ページへ)


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ