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第228話 お願い


「それほど大したお願いではございません。まず、こちらの商品を献上しているのがうちの商店であることを秘密にしておいてほしいのです。実はまだこちらの商品は生産体制が整っておらず、当分の間は商品として販売しない予定なのです。他の貴族の方々に欲しいと言われても提供できないのが現状ですので」


 香辛料に続いて美容品を扱うとなるとそれなりの準備が必要になる。容器の問題もあるし、他の美容品を販売している店の配慮もある。少なくとも当分の間は販売する予定がない。


 その間に他の貴族から欲しいと言われても困る。それに貴族の中には面倒な連中もいるだろうからな。


「ふむ、承知した。この件については妾の親しい者の内に秘めておくとしよう」


「ありがとうございます。もうひとつのお願いですが、うちの商品につきましての詮索はしないでいただければと思います。こちらの商品や当店で販売している商品は私の故郷の特殊な製法によって作られている物ばかりなので、その製法を秘密にしておきたいのです」


 本人の俺すらも詳しい作り方は知らないからね。


 方位磁石の作り方をルハイルさんに教えたことはすでに知っているだろうから、うちの店の商品すべてがどこかから持ち込まれたわけではないとは理解してもらえているはずだ。


「むしろ、うちの店の商品の仕入れを探るような者がいたり、うちの店にちょっかいを出そうとしてくる者がいたらそちらを何とかしていただきたいのです」


 アウトドアショップの仕入れは収納魔法を使用できるランジェさんが行っていることになっている。これまでも何度か尾行をされたことがあったらしい。


 アレフレアの街で新規店舗を建てて、店が大きくなったこともあり、これからうちの店にちょっかいを出してくる輩はさらに増えてくるだろう。Bランク冒険者で、逃げることが得意なランジェさんとはいえ、それ以上の実力者をお金や権力で集められたらさすがに厳しいだろうからな。


「それについてはすでに国として動いているので安心するとよい。これだけ国益に繋がる商店をわざわざ他の商店や貴族などに潰させるつもりはないのは夫と同意見であった。今後そのシャンプーとやらを献上してもらえるのであれば、国との商取引のある商店としてこちらからも正式に通達ができるようになるからのう」


 ……どうやらすでに国としても動いてくれているようだった。目立ちすぎる商店は杭を打たれると思っていたけれど、むしろ他の商店や貴族から守ろうとしてくれていたとはな。


 ルハイルさんが言っていたようにお金だけを考えている国ではないようでほっとした。俺や従業員に直接危害を加えて商品の秘密を聞き出そうとか考えている王族でなくて良かったよ。


 国からも認められているようだし、これまで真面目に商売をしてきた意味はあったようだ。


「小さな商店や個人の商人はともかく、この国の大きな商店や貴族からは手を出させないことを約束しよう。これほど早く選ばれるのは快挙であるぞ。それもアレフレアの街に本店を置く商店では初めてのことである」


「それはとても光栄ですね。本当に感謝いたします。私からのお願いは以上になります」


 よく分からないが、国の指定する商店リストみたいなのがあるのかもしれないな。それに選ばれるのもとても名誉なことなのだろう。まあ、俺にとっては名誉よりも他の商店や貴族が手を出してこなくなることの方が非常にありがたい。


 俺が予定していたお願いは2つとも問題なさそうだ。王都の冒険者ギルドのルハイルさんからも協力を得ることができたし、これで俺が今回王都へ来た目的は果たせたことになるな。


「それについてだが、テツヤ殿は王都に支店を出す気はないのであるか? 聞けばアレフレアの街では様々な便利な商品や美味なる携帯食などがあるようではないか。妾もようかんとやらを食したが、非常に美味なる菓子であった。もしも王都に支店を出す際はできる限り支援するつもりであるぞ」


「支店についても検討はしているのですが、アレフレアの商店も新しく大きな店にしたばかりですし、当分は後になりそうですね。王都へ支店を出す際にはいろいろとお力添えをいただけると非常に助かります」


 もちろん支店のことについても多少は考えてはいる。現在は冒険者ギルドを通して数種類の特に必要な商品を置かせてもらっているけれど、他の商品もほしいという冒険者の声は多い。アレフレアの街にいる冒険者は力を付けていずれは他の街へ行くことが多いから、そういった気持ちもあるのだろう。


 とはいえ、支店となると俺のアウトドアショップの能力ですべての商品を賄うのは難しいし、それだけの量の商品を扱うのはいろいろと問題も起こる。そのため、支店となる商店にはこの世界の物を使って作ることができる商品を取り扱いたいと思っている。


 雷魔法を使った方位磁石もできたことだし、魔物の素材を使用した保存パックもグレゴさんの協力を得て開発できた。


 現在はテントと寝袋をこちらの世界の素材で作っているし、浄水器なんかも多少は大きくなりそうだけれど、こちらの世界の素材で再現ができそうだ。アウトドアショップで購入できる完成品を見本にすることにより、多くのものはこちらの世界の素材を使って作り出すことが可能なのである。


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◆アウトドアショップin異世界店◆
◇冒険者の始まりの街でオープン!◇

(上をクリックで挿絵やキャラ紹介のある作品ページへ)


― 新着の感想 ―
[一言] 書籍系が買えるのならシャンプーとか「作り方」が分かる物も結構あるんじゃないかなぁ。 まぁ同等素材があるかという問題はあるが。
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