第227話 オーガニック
「ほう、ドライシャンプーよりも優れたものとな!」
「はい。外の方にリュックを預けておりますので、少々お待ちください」
さすがに謁見の際にリュックを持ってするのは無理なので、謁見の間の外の騎士の人たちに預けてある。当然中身は武器や毒でないことも確認してもらっている。
少しだけ失礼して、謁見の間の外にいた騎士の人からリュックを受け取った。ちなみに交渉に難があった場合にはさっさとドライシャンプーのことだけ話して帰るつもりだった。
「こちらがシャンプーとコンディショナー、そして石鹸でございます」
騎士の人から受け取ったリュックの持ち込み許可を得て、テーブルにアウトドアショップで購入した商品を並べる。
いつも通り俺のアウトドアショップの能力では容器などは付いてこない。今回は王妃様に献上するということもあって、シャンプーとコンディショナーはこちらもアウトドアショップで購入した綺麗な円柱の形をしたガラスの瓶に入っている。
「ふむ、こちらのシャンプーとコンディショナーとやらはドライシャンプーとは異なって液体のようであるな。こちらの石鹸は他の石鹸とは異なって綺麗な色をしておる」
アレフレアの街では石鹸を見かけなかったが、ここ王都では石鹸が販売されている。とはいえ元の世界のように真っ白な石鹸ではないようだ。
これらの商品はアウトドアショップのレベルが5になった時、購入できるようになった商品である。アウトドアショップでシャンプーやコンディショナー? と思うかもしれないが、最近のアウトドアショップではオーガニックな商品が販売している。
そもそもオーガニックとは環境や生態系・人間の健康な暮らしなどに配慮した農業や加工方法のことだ。食品で言えば、化学合成農薬や化学肥料の使用を最小限に抑えて育てた食品となる。
このオーガニックシャンプーやコンディショナーに石鹸は天然由来成分100%で分解性が高く、元の世界の化学的な成分を一切使用していないので、使用しても自然に還ってゆく。
ちなみに植物由来の成分が原料で作られているため、肌や髪への負担が少なく刺激を最小限に抑えてスキンケアにも優れているのがポイントだな。洗浄力はそれほど強くないかもしれないが、王妃様の目的的にはそちらの方が大事だろう。
他にも食器洗いのオーガニック洗剤なんかもあって、キャンプ場でも食器を洗うことができる。キャンパーは自然を汚さずに来た時よりも綺麗にして帰るが基本だからな。
「お店の説明にも記載しておりますが、ドライシャンプーは一時の髪のべたつきをなくすための道具であって、毎日使う商品ではないのです。こちらの商品は普段使いするための商品となっております」
「それは素晴らしい! こちらのコンディショナーというものはなんであるか?」
「コンディショナーはシャンプーを使用した後に使用するものです。2度髪を洗うのは手間かもしれませんが、余分な皮脂や汚れをシャンプーで落としたあとに、コンディショナーによって表面をコーティングし、なめらかに整えることで髪にしっとり感とツヤを与えてまとまりの良い状態にすることができます」
「ほう、しっとり感とツヤであるか!」
俺は面倒だからシャンプーとコンディショナーが混ざった一本のやつで髪を洗っていたが、長い髪を持つ女性はちゃんとシャンプーとコンディショナーを使って2回洗う方が良いらしいな。
すでに従業員の女性陣には試してもらってとても好評だったのだが、なにせ液体ということもあって、いつも使用している木筒の容器だと扱いがちょっと難しい。レトルトカレーを入れている保存パックに入れて売るというのも微妙だ。
一応鍛冶屋のグレゴさんにお願いして、元の世界のシャンプーの容器のようなものが作れないか試してもらうつもりだが、優先度は他の商品を高くしてもらっている。美容系のものを販売するには香辛料とは違ったことにも配慮しないといけないからな。
「こちらの石鹸も肌がスベスベになる成分が入っているので、ぜひ一度試していただければと思います。ただ人によっては肌に合わない方もいるそうなので、最初は少量だけ肌と髪に使ってみて、一度確認をしてみてください」
シャンプーや石鹸などは人によってあわずに肌がかぶれたりする可能性があるらしい。俺やみんなは大丈夫だったけれど、王妃様の肌に合わない可能性はゼロではないからな。
……もしも王妃様に何かあったら、本気で打ち首になってしまいそうだ。まあ基本的にオーガニックの物は化学成分由来の物に比べてそういったことは起きにくいらしいけどね。
「……これほどの物をいただいても本当に良いのであるか?」
おっと、王妃様が少しこちらを怪しんでいる。ドライシャンプーだけでなく、突然これだけいろいろな物を献上すると言われれば何か魂胆があると思われるのかもしれない。
「はい、ドライシャンプーもこれらの商品も王都へ定期的に献上させていただきたいと思います。ただし、いくつかお願いがございます」
「………………」
騎士団長のメルトンさんの目が少し光ったような気がした。
違うからね、悪徳商人とかが利権を回してくれとか言う話じゃないから! 王妃様相手に条件と言うと角が立つと思ったからお願いという言葉を使ったのだけれど、そちらの方がむしろ怪しかったか……
そんな大した条件じゃないし、あくまでもうちの店の安全を保障してもらいたいだけである。
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