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第221話 元の世界


「もちろん、私にそのことを打ち明けてくれたテツヤくんのことを誰かに話すような恩知らずではないから安心してほしい。とはいえ、特にこの地図や図鑑に関してはそれくらい危険な物だということを理解しておいた方がいいかもしれないね」


「はい、改めて再確認しました……」


 さすがルハイルさんだ。


 いくつか見せたキャンプギアよりも先に地図や図鑑の危険性を指摘してくれた。


 そしてこの世界では拉致やら洗脳やら、倫理観なんかクソくらえのようだ。まあ、魔物がはびこる危険な世界で、魔法で非人道的なことができる世界なら倫理観よりも大事なこともあるのかもしれない。


「……なるほど、例の方位磁石という便利すぎる道具も別の世界の道具と考えれば、ある意味納得もできるというものだ」


「俺がいた世界では魔法がない分、電気や科学というものが発展していったんですよ」


 もしもこの世界のように魔法という便利なものが発展していけば、収納魔法が使えるようになって、冷蔵庫なんかも生まれなかったかもしれないもんな。


「ルハイルさんにこのことを話した理由はいくつかあるのですが、まず俺と同じように別の世界から来たという人物や伝承は残っていないのかを聞きたかったんです。情報が多く集まる王都であれば、もしかしたらそういった話を聞いたことがないかと思いまして」


 いろんな村や街を旅してきたランジェさんやAランク冒険者のベルナさんやフェリーさん、アレフレアの街の冒険者ギルドのライザックさんやパトリックさんも知らなかったことだが、それよりも情報が集まっている王都になら――


「……ふむ、そういう話ならひとつだけ心当たりがあるな」


「本当ですか!」


 マジか!


 正直に言ってまったく期待をしていなかったけれど、まさか俺以外にもこの世界に転移してきた人がいるのか!


「期待させてすまないが、もしも私の聞いた伝承が本当のことであったとしても、今から数百年も前の出来事になるはずだ。それに本当かどうかも疑わしい内容だった。だからこそ、私も記憶にほとんど残っていないというのが正直なところだよ。とはいえ、テツヤくんがそういった事情であるなら、すぐにもう一度確認してみよう。王都の図書館は上級貴族や王族しか入れないのだが、私なら入ることができるからね」


「はい、よろしくお願いします!」


 数百年前であろうと初めての転移者の情報だ。この世界に来てから初めての情報でもある。


 正直なところ、もう元の世界のことに関しては諦めていたけれど、もしかしたら元の世界に帰れるヒントがあるかもしれない!


「……やはりテツヤは元の世界に帰りたいのか?」


 リリアが少しだけ暗いトーンでそう言う。


 確かそれは以前にもリリアに聞かれたことだ。


「……そうだね。もしも元の世界と行き来できそうなら、一度だけは帰りたいかな。正直なところ、元の世界にはほとんど未練がないけれど、家族にだけは一言別の世界で楽しくやっているから安心してって伝えたいんだよ」


 そう、俺は元の世界にほとんど未練という未練は残っていないが、家族のことだけは唯一未練がある。


「みんなには伝えたけれど、俺は本当に訳も分からずこっちの世界にきちゃったから、家族も心配していると思うんだ。一言だけでも伝えられば満足なんだよね。もちろんこっちの世界に帰ってこられなくなるなら、俺はこっちの世界で暮らしていきたいと思っているよ」


「そ、そうなのだな。うん、テツヤには新規のアウトドアショップの店もあるから当然だ!」


 リリアがほっと一息を吐く。


 俺もこの世界に来たばかりならいざ知らず、今ではこの世界で積み上げてきたものが多くなった。仮にもうこちらの世界に戻ってこられなくなるのなら、その時はこっちの世界で暮らしていきたいと思うほどには。


(ほう、彼とリリアはそういった関係なのだな)


(ええ。周りのみんなも早くくっついちゃえと思っているのですが、どちらもそっち方面はふたりとも奥手なんですよ)


(ふむ、リリアは冒険者時代から冒険者一筋だったようだが、そういった良い相手が見つかったのなら何よりだ)


 ……ランジェさんとルハイルさんがこそこそと何か話しているみたいだけれど、だいたい予想ができる。


 いいんだ、完全回復薬を手に入れたらリリアにプロポーズするつもりなんだから!




「……ごほんっ、それでルハイルさんにお話ししたいことの本題についてはこちらのベルマルコンという野菜についてです」


 もしかしたら俺以外の転生者の情報が手に入るかもしれずに驚いてしまったが、話を本題へと戻す。その情報については数日後にまた冒険者ギルドを訪れる際に話を聞く予定だ。


「確かこの街で売っている野菜だな。それほど高価な物でもなかったと思うが……」


「今回王都へ来る途中にうちの店の従業員が気付いてくれたのですが、実はこのベルマルコンからは砂糖が生成できるんですよ。こちらが実際に自分たちで作ってみた砂糖です」


 フェリーさんの収納魔法でしまっていたベルマルコンと、ベルマルコンから抽出したベルマルコン糖を取り出した。アンジュ糖は本人に却下されたので、俺たちの中ではベルマルコン糖と呼ぶことにしたわけである。


「なにっ! 砂糖だって!?」


 ……おう、想像よりもルハイルさんは驚いている。まあ、そこらへんで安く売っている野菜からこの世界では貴重な砂糖が生成できるのだから、それは驚いても当然か。


 元の世界の大根が金……とまではいかないが、銅くらいの価値のある物に変換できるわけだからな。


最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます!

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誤字脱字、日本語のおかしいところがありましたら教えて頂けますと非常に嬉しいです( ^ω^ )

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◆アウトドアショップin異世界店◆
◇冒険者の始まりの街でオープン!◇

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