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第219話 新しい方位磁石


「はは、こんな行き遅れの女にそんな言葉をいただけるとはね。ランジェくん、感謝するよ」


「いえ、僕がそうしたかっただけなのでお気になさらず」


 そう言いながらランジェさんの猛アタックをやんわりと受け取るルハイルさん。


 ランジェさんみたいな甘いマスクのイケメンエルフにそんな言葉を囁かれてしまえば普通の女性なら一瞬で落ちてしまいそうであるが、ルハイルさんは顔を赤くすることもなく、平然と対応している。


 ルハイルさんは30代前半とこの世界だともうそれほど若くはないのかもしれないが、年齢を感じさせないほどとても美人だし、もしかすると他の男性にも口説かれ慣れているのかもしれないな。


 とはいえ、ランジェさんのアピールを嫌がっていたり、本気で拒絶しているようにも見えない。まあ、まだ2人が会ったのはこれで2回目だし、これからの展開に期待というところか。


 いや、俺こそそんな人の恋路に口を挟めるような立場でもないんだけれどね……




「それではテツヤくん、まずは方位磁石のことについてだな」


 一旦渡したお土産をしまってもらってから、仕切り直してルハイルさんと向かい合う。


「先日伝えた通り、テツヤくんから教えてもらった製法で方位磁石ができたわけだ。こちらが完成品だよ」


 ルハイルさんから受け取った方位磁石を見てみる。俺がアウトドアショップで購入した方位磁石と同じで、丸い円の中心に半分赤く塗られた針がゆらゆらと動いている。


 方位磁石を振ってから止めると、針が一定の方向へと戻っていく。念のためにアウトドアショップで購入した方位磁石と並べてみるが、ちゃんと同じ方向を指している。


「問題なさそうですね。無事に完成したようで何よりです」


「ああ、これもテツヤくんのおかげだよ。どうしてある鉱石に雷魔法を当てるとこのような性質を持つのかは未だに分かっていないけれどね」


「俺もそれについては詳しくは分からないんですよね。そういう性質を持った鉱石としか知らないです」


 俺もさすがに磁石の詳しい仕組みなんかは知らない。地磁気とか細かくは説明できないし、そういった性質を持った鉱石として説明するしかなさそうだ。


「ともあれこれで我々でも方位磁石を作ることができた。とはいえ、こちらで作った方位磁石は原価だけでも銀貨5枚近くは掛かってしまったよ」


「もしかしたら、俺が仕入れている方位磁石の材料の鉱石とは違うのかもしれませんね。それに王都では物価が高いですから」


 さすがに値段まで同じとはならなかったようだ。そもそも王都の物価は高いし、こちらは雷魔法を使っているから魔法使いの人件費なんかも掛かるのだろう。


 アレフレアの街では銀貨2枚で販売している方位磁石だが、他の街では馬車の輸送費や向こうでの販売の経費もあって銀貨4~5枚くらいで販売しているところが多いそうだ。


 王都にはベルナさんとフェリーさんが収納魔法で運んでくれているが、実際に収納魔法を使用して輸送をしたらそれくらいは掛かってしまっても不思議はない。


「なるほど、そうかもしれないな。それでは約束通りこちらで作った方位磁石は他の場所でも販売させてもらうよ。その代わりに利益の一部は定期的にテツヤくんに届けるからね」


「承知しました」


 方位磁石の製法を教えて販売する権利を冒険者ギルドへ譲渡する代わりにそこで作って販売した方位磁石の利益の一部はこちらでもらえることになっている。


 手間の掛かる製造や販売、そしてなにより面倒な商人や貴族なんかのしがらみもすべて引き受けてもらえるので、もらえる利益が少なくとも十分だ。というか不労所得バンザイである!


「あと方位磁石が作れるようになっただけで金貨3000枚もいただいてもよかったのですか?」


 王都での製造に目途が付いた時点で成功報酬をもらう契約だったが、まさか金貨3000枚ももらえるとは思ってもいなかった。


「ああ、もちろんだよ。この方位磁石という道具にはそれほどの価値がある! ダンジョンの中でも一定の方角を指し示し、目印がほぼない海の上でも一定の方角を指し示すこの道具は本当に素晴らしい道具だよ! この道具さえあれば、道や海に迷って失われるはずの多くの命が救われることになるはずさ!」


「な、なるほど……」


「おっと、私としたことが興奮してすまなかったね。それほどこの方位磁石という道具は素晴らしいということだよ。むしろ金貨3000枚でも少ないのではと迷ったほどだから気にしなくていいさ」


「……分かりました。ありがたくいただいておきます」


 ルハイルさんは方位磁石の利益よりも冒険者や商人の命のことを考えてくれているようだ。


 リリアやベルナさんとフェリーさんに加えてライザックさんも言っていた通り、やはりルハイルさんは良い人らしい。


 王都へ来てルハイルさんと話すのはこれで2回目だが、俺も彼女は十分に信頼できると判断した。


「ルハイルさん、別件で少し話したいことがあるのですが、人払いをお願いできないでしょうか?」


最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます!

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誤字脱字、日本語のおかしいところがありましたら教えて頂けますと非常に嬉しいです( ^ω^ )

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◆アウトドアショップin異世界店◆
◇冒険者の始まりの街でオープン!◇

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