第216話 二度目の王都
「野菜をそのまま食べるよりもこちらの液体を掛けた方がおいしいですわ」
「もちろん生の野菜もおいしいけれど、ドレッシングを掛けた方がおいしく食べられるよね」
ベルナさんの言う通り、サラダにはドレッシングを掛けた方がうまい。アレフレアの街でも今は香辛料が広まってきたため、塩だけでなく香辛料を掛けて生の野菜を食べるようになってきている。
香辛料や砂糖なんかが広まると、色々な料理が発展していくのはこういうことである。
「次はベルマルコンを煮たものと焼いたものだよ」
サラダの次はベルマルコンをインスタントスープの中華スープに醤油を加えて煮込んだものと、軽く下茹でして焼いたものだ。
ベルマルコンの見た目はダイコンかカブに似ているので、とりあえず同じように料理してみた。
「……なるほど、そこそこおいしいね」
「味が染みこんでいて結構いけるな」
「ああ、なかなかうまい」
ランジェさん、リリア、ドルファの順に感想を述べているが、みんなの顔を見ればその反応でだいたい分かった。
調理すれば多少はおいしくなるが、普通の野菜と同じくらいのおいしさといったところだろう。この辺りは値段相応の味といったところだな。
「やっぱり肉が欲しい……」
「うん、もちろん肉は用意してあるよ」
フェリーさんは正直だな。
さすがにベルマルコンだけでは少し物足りないだろうと思っていたから、それとは別に肉も用意してある。まあ、普通に食べたベルマルコンの味はそこそこといった感じか。
やはりこのベルマルコンという野菜はどちらかと言えば普通に食べるよりも砂糖に加工した方が有用性はある気がするな。
とりあえず明日には王都に到着するから、王都の市場も見てみることにしよう。もしも王都にベルマルコンが売っていたら、一度王都の冒険者ギルドマスターであるルハイルさんに相談してみるとしよう。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「王都が見えてきましたわ」
「無事に到着した」
翌日の夕方。
馬車の前に座っているベルナさんとフェリーさんの言葉を聞いて、窓から頭を出すと王都の巨大な城壁が見えた。
「今回も大きなトラブルはなく無事に王都へ到着できたね。これもベルナさんとフェリーさんのおかげだよ」
ベルマルコンの発見という良いことがありつつ、今回は魔物と戦闘をすることなく王都まで到着することができた。これも普通の馬車よりも遥かに速く走ることができるスレプと、夜に見張りをしてくれたシルフのおかげである。
アレフレアの街よりも遥かに巨大で強固な城壁を見るのは久しぶりだ。この周辺に生息する魔物はアレフレアの街に出没する魔物よりも遥かに強いため、あれほどの城壁が必要となるのだろう。
また王都へとやってきたんだな。
「テツヤ様ですね。冒険者ギルドよりお話は伺っておりますので、本日の宿へご案内させていただきます」
「……あっ、はい。よろしくお願いします」
王都の門は一般人が入る門と貴族や大商人が通るための門がある。ルハイルさんからこちらの門へと事前に連絡されていたので、そちらの門へ行って騎士団の人にそのことを伝えると、なんだか偉そうな方々が現れてそう伝えられた。
ありがたいことに今回も王都での滞在費は王都の冒険者ギルドが支払ってくれるようだ。そして数名の騎士の人たちに案内されて今日の宿へと向かう。
時間も時間なので、冒険者ギルドへと挨拶するのは明日になる。アウトドアマットがあって多少振動は少なくなっているが、さすがに4日間も馬車の中で座っていると身体がかなり固くなってしまっているから、今日はゆっくりと休ませてもらおう。
ちなみに宿へ行く際に少しだけ市場に寄らせてもらったが、ベルマルコンは王都でも売っていることが確認できた。そうなるとこの王都でも砂糖の生産ができるようになるわけだ。それも含めてみんなと相談するとしよう。
「……なんだか前回よりも高級な宿じゃない?」
そして案内された宿だが、今回は前回王都に来た際用意してくれた宿とは別の宿だった。ただ別の宿という訳ではなく、俺の記憶が正しければ、前回王都へ来た時に泊った高級な宿よりもさらに高級そうな宿だった。
「こちらは王都でも3本の指に入るほどの最高級宿ですね。テツヤさんの功績を考えれば、それも当然のことかと思います」
「テツヤのおかげで護衛の私たちも泊まれてラッキー」
「な、なるほど……」
エイブラの街の高級宿よりも上だった前回泊まった王都の宿、それよりもさらに上な王都でもトップスリーに入るほどの高級宿……
方位磁石の報酬として金貨3000枚分をポンと出してくれたし、お金はあるところにあるようだ。
もちろん、それだけあの方位磁石の作り方が有益だったという意味なのだろうな。
「ようこそ、テツヤ様。何かございましたら遠慮なく従業員までお申し付けください」
「は、はい! こちらこそよろしくお願いします」
ずらりと並んだ執事のような格好をした男性とメイド服を着た女性が一列に並んで俺たちに頭を下げる。
一般市民である俺にとってこの歓迎の仕方は少し恥ずかしいし、むしろ緊張してしまうぞ……
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