第214話 エイブラの街での食べ歩き
「おお~これまたアレフレアの街の市場とはだいぶ違うね」
「お店がすっごくいっぱいあるです!」
「やはりこの時間帯だと多くの店が開いているな」
午前中はベルマルコンから砂糖を抽出するための試作をしていたが、それも無事に確認できたため、このエイブラの街にある大きな市場へとやってきた。
リリアの言う通り、昨日もこの街へやってきてベルマルコンを購入しに市場へ寄ったが、時刻が夕方ということと、それほど大きな市場ではないこともあって、この大きな市場とは開いている店の数が全然異なっていた。
ちょうどお昼時ということもあって、この市場の通りにはお客さんも大勢いる。朝食は高価な宿でしっかりといただいたから、お昼は屋台で軽くすませるつもりだ。
「街の市場を回るのは楽しいですからね」
「ランジェも来ればよかったのに」
当然護衛となるベルナさんとフェリーさんも一緒だが、ランジェさんはひとりでこの街を回りたいそうだ。
まあ大勢で街を回るのも楽しいが、ひとりで自分のペースでぶらつくのもそれはそれで楽しいからな。それにランジェさんは護衛の必要もないBランク冒険者だし、安全面を心配する必要はないだろう。
「アレフレアの街よりも少し物価が高めのようだな。それでも王都までとはいかないようだが」
「比較してみると、やっぱり王都が少し高すぎる気もしますね。でもその分王都の方が報酬をもらえるお仕事が多いと思います」
ドルファとアンジュの言う通り、アレフレアの街よりも物価は少し高いくらいだ。この国の物価は国の中心である王都へ近付くほど上がっていくようだからな。
スレプのおかげで一気にエイブラの街までやってきたが、本来ならばここまで馬車で何日も掛かるわけだから、改めてアレフレアの街から離れたことを実感してしまう。
「売っている商品も微妙にアレフレアの街で売っている物とは違うもんな。それじゃあ市場を回りつつ屋台街の方も回ってみよう」
様々な日用品や食材を販売している市場を抜けて、持ち帰りの料理などが販売している屋台街へとやってきた。
ちゃんとした料理店でゆっくりと腰を据えて食事をするのも良いが、おいしそうな匂いがする中を歩きながら目の前で実際に作っている様子を見て選ぶ楽しみというものもあるのだ。
「やっぱり場所が違うと売っている料理や食材も違うね。昨日の宿の食事もおいしかったけれど、こういう屋台街で食べるのもいいよね」
「その土地の料理を楽しむのもいい。テツヤは分かっている」
「新しい土地へ行った際にはその土地の料理を食べるようにしています。これも冒険者の楽しみのひとつですわ」
俺の意見にフェリーさんとベルナさんも同意してくれる。どうやら高ランク冒険者であってもその辺りの感覚は同じようだ。
冒険者になると様々な街を巡るので、旅をしながらその土地の食べ物や観光ができるのはちょっとうらやましかったりもする。その分魔物や盗賊と遭遇するリスクがあるのは戦闘能力のない俺にとっては死活問題になるのだが。
「まあ2人は自分たちで料理を作れないから、街で出来上がった料理を食べるしかないしな」
「そ、そうとも言いますわね!」
「……テツヤからもらったインスタントスープと棒状ラーメンなら料理できる!」
いや、フェリーさん……さすがにお湯を加えるだけのインスタントスープと棒状ラーメンは料理とは言わないぞ。
「らっしゃい! 焼いた肉に特製の香辛料を振りかけた特製串焼きだよ!」
「うちの店はじっくりと煮込んだ煮込み料理にたっぷりのコショウを掛けてあるのにたったの銀貨1枚だ! ぜひ味わっていってくれよ!」
屋台街を回っていると、様々な料理の香りがあちこちから漂ってくる。
「どこの店からもうまそうな香りがしてくるな」
「とってもおいしそうです!」
「アレフレアの街と同じで様々な香辛料を使用した料理を提供する店が多いですね」
「やっぱり香辛料が安くなってきたから、それを利用するお店も増えてきたんだろうね。これは味にも期待できそうかな」
アンジュの言う通り、様々な香辛料を売りにした料理を出すお店が多い。アレフレアの街もそうだが、魔法を利用した香辛料の栽培によって安くなった香辛料のおかげで、今では普通の屋台なんかでも香辛料を使った料理などを提供している店が増えてきた。
「テツヤお兄ちゃん。あっちのお店の串焼きがおいしそうです!」
「こっちの麺料理もおいしそうだな」
「そうだね。大人数だから、それぞれ食べたい料理を買って分けようか」
こういうのはみんなでシェアして、その分いろんな種類の料理を楽しむのが大人数かつ屋台での楽しみ方だよな。
「うん、どの店もなかなかいけるな!」
みんなでいろんな料理を購入してきて、屋台街にあるテーブルと椅子に座りながら、みんなで購入した料理を楽しんでいる。
「テツヤの料理の方がおいしいけれど、以前にこの辺りの街で食べた料理よりもおいしい」
「以前の味付けは塩ばかりでしたからね。香辛料が普及したおかげもあって、様々な味が楽しめて良いですわ」
やはり香辛料が普及していくと、それに伴って料理のバリエーションなどが増えていくので食文化も発展してくる。
こんな感じでベルマルコンから作れる砂糖を広めることによって、新しいお菓子なんかもたくさんできるようになるだろう。
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誤字脱字、日本語のおかしいところがありましたら教えて頂けますと非常に嬉しいです( ^ω^ )