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第211話 ベルマルコン


「えっ、本当に!?」


「ああ、このページを見てくれ」


 ドルファが今開いている植物図鑑のページを見せてもらった。俺は揺れる車の中とかで本を読むとすぐに気持ちが悪くなってしまうタイプなのだが、ほんの少しの間なら大丈夫だろう。


 植物図鑑には俺が植物図鑑を購入した地点を中心にして一定の範囲内に生息する植物の情報がその植物の画像と一緒に載っている。ベルマルコンと書いてある植物の外見は白くて若干丸、細長い植物で、その上からは緑色の葉が生えている。


 元の世界で言うと、ちょうどダイコンとカブの中間みたいな植物だな。


「なになに……このベルマルコンを弱火で焼いた後に細かく刻んで温かいお湯につけて、抽出した液体を煮詰めて乾燥させた粉を甘い調味料として使用できるか……確かにこの説明だと砂糖として使えそうな気がするな」


 植物図鑑にはその植物の名前と写真、そしてポーションの素材になるなどの効能や使用方法までもが記載されている。魔物図鑑と同様にその有用性は計り知れないので、アレフレアの街では図鑑の内容を複写して冒険者ギルドを通して公開している。


 魔物図鑑についてはすべてだが、植物図鑑についてはいろいろと毒殺とかに悪用できそうな情報もあったので、冒険者ギルドマスターのライザックさんと副ギルドマスターのパトリスさんたちと内容を精査して、役に立ちそうな情報だけを抽出している。


 アレフレアの街で購入した植物図鑑にこのベルマルコンという植物は記載されていなかったので、あの辺りには生息していない植物なのだろう。


「だれか、このベルマルコンって植物を知っている人はいる?」


 少なくとも俺は知らないが、もしかするとこの辺りの地域では砂糖の原材料として有名な可能性もある。


「……私は知らないな」


「すみません、私も見たことがありませんわ」


「私も知らない」


 リリア、ベルナさん、フェリーさんはこのベルマルコンという植物を知らないみたいだ。そこまで有名な植物ではないらしい。


「僕知ってる! この辺りで採れる野菜だね。確かに少しだけ甘い味がしたと思うけれど、市場で普通の値段で売っていたと思うよ」


「おおっ、そうなんだ。ありがとう、ランジェさん」


 どうやらアレフレアの街だけでなく、この辺りの村や街を回って依頼を受けているランジェさんはこのベルマルコンを知っているらしい。


 甘い野菜……もしかすると、元の世界で言うところの甜菜(てんさい)あるいはビートと呼ばれる野菜に近いのかもしれない。俺の記憶によると、確か甜菜は北海道とかで採れる野菜のはずだ。


 砂糖の原材料としてはサトウキビが有名だけれど、実は砂糖の多くはこの甜菜を材料にして製造されているようだ。さすがに詳しい製造工程なんかは知らないけれど、もしかするとこの植物図鑑に書いてある通りにすれば砂糖を作れるかもしれない。


「……もしもこのベルマルコンが安価に手に入って本当に砂糖が作れるのなら、今の高価な砂糖を安くすることもできそうだね」


「ええっ!? すごいです!」


「ああ、香辛料はだいぶ安くなったが、まだ砂糖は高価なままだからな。それが安く手に入るようになるのは素晴らしいことだ!」


 フィアちゃんとリリアが言う通り、もしも砂糖を従来の方法よりも安く生産できるのならば、それはとても素晴らしい発見に違いない。


「……確かに素晴らしいことですけれど、色々と考えなければならないことも多そうですね」


「うん、アンジュの言う通りだね。素晴らしい発見であることは間違いないけれど、色々と調べなければならないことも多くありそうかな」


 元の世界では素晴らしい発見の一言で済みそうだけれど、こちらの世界だとこういった情報は慎重に扱わないといけない。それこそ一番初めに販売を始めた方位磁石と同様に便利な道具や情報にはそれ相応のリスクが伴う。


 とはいえ、今の俺は最初にこの世界へ来た時のように何もないわけじゃない。頼りになる人たちも大勢いるから、きっといい方向へ持っていけるだろう。


「とりあえず、まずはこのベルマルコンから砂糖が本当にできるのかを試してみてからだね。この辺りで採れる野菜なら、これから向かうエイブラの街の市場で売っているかもしれないから、市場で探して値段も確認してみよう」


 この辺りで採れて市場で売っている野菜なら、エイブラの街でも売っている可能性が高い。まずはそれを購入して実際に砂糖を作れるかを確認して、生産するコストと市場で売られている砂糖と味や生産時間なんかも比較してみたいところだ。


 それと今砂糖を生産して販売している商店なんかを調べた方がいいだろう。ひとつの商店が砂糖の市場を独占しているとかだと、面倒になる気しかしないもんな。


 まあ、もしもひとつの商店があえて値段を釣り上げているとかだったら、遠慮なく別の複数の商店に匿名で情報を流すけれどね。砂糖は料理でもよく使うし、少しでも安く普及してくれた方がありがたい。何にせよ、いろいろと調べてみてからだ。


最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます!

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誤字脱字、日本語のおかしいところがありましたら教えて頂けますと非常に嬉しいです( ^ω^ )

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