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第209話 焼き立てのパン


「おはよう、シルフ」


「ワオン!」


「お~よしよし! それにしても、オオカミなのに本当に可愛らしいよね!」


「ああ。それにこの美しい銀色の毛並みの触り心地も素晴らしいな」


「クウン」


 川の隣で大型テントを張った翌日、ランジェさんとドルファと一緒に女性陣のテントのみんなよりも先に起きてきた。


 フェリーさんの召喚獣であるシルバーウルフのシルフが夜通し見張りをしてくれていたおかげでぐっすりと眠ることができたな。夜通し見張りをしてくれていたシルフは暇だったのか、尻尾を振りながら俺達の方へ来てくれた。


 ドルファの言う通り、この美しい銀色の毛並みの手触りは最高だった。もちろんスレイプニルのスレプの白い毛並みも素晴らしかったけれど、シルフの毛皮も本当に素晴らしいものだな。前世でペットや動物と触れ合う機会がほとんどなかった俺にとって召喚魔法はすごく羨ましい。


「それじゃあ、おいしい朝ご飯を作るからちょっとだけ待っていてくれよな」


「ワオン!」


 男3人で早く起きてきたのは朝食の準備をするためだ。俺ひとりで起きて準備をしても良かったけれど、ドルファもランジェさんも手伝うと言ってくれた。どちらにせよ俺が目覚ましを掛けて起きる時に同じテントで寝ている2人も起こしてしまうし、ひとりじゃ時間が掛かるからお願いした。


 もちろん女性陣も手伝うと言ってくれたのだが、特にベルナさんやフェリーさんは日中護衛で忙しいから、ゆっくりと休んでもらうことにしたわけだ。


「テツヤ、僕達はなにを手伝えばいい?」


「あまり難しい料理はできないが、簡単な料理なら冒険者時代に作っていたから任せてくれ」


「ランジェさんもドルファもありがとう。それじゃあ2人にはサラダとベーコンエッグをお願いするよ」


 今日の朝食のメニューは洋風のシンプルな朝食でサラダとベーコンエッグとパンだ。だが、パンは街で購入した物じゃなくて、昨日の夜にみんなで作ったパン生地をポータブルピザ窯で焼いて作るパンになる。


 パン生地の方は昨日すでに準備をして、酵母を加えてクーラーボックスにランジェさんの氷魔法で作った氷を入れて十分に発酵させておいたものだ。あとはこの生地を焼き上げればいいように準備してある。




「おお、すごい火力だな。まるでベルナさんの火魔法を見ているようだ」


「へえ~こっちのガスバーナーを横にした感じかな?」


「これはトーチバーナーと言って、主に火を付けるための道具だね。確かにランジェさんが今使っているガスバーナーと似ているね」


 ドルファが後ろで野菜を切って、ランジェさんがガスバーナーでフライパンを熱してベーコンエッグを作りながら、俺がパンを焼くための火を起こしている様子を見ている。


 アウトドアショップのレベルが5へ上がった時に購入できるようになったトーチバーナー。ガストーチとも呼ばれるこのキャンプギアはガス缶の上に直接装着するだけでバーナーの代わりになるという道具だ。


 ファイヤースターターで一から火を起こすのも楽しいのだが、朝は早めに出発したいからこれを使用する。これがあれば燃えやすい麻紐から小さな枝や木材へ火を大きくする必要がなく、一気に薪に火を付けることが可能だからな。


 確かにこういう道具がないこっちの世界だと、ドルファが言うように火魔法を使っているように見えるのかもしれない。ちなみに昨日の火おこしは火魔法を使用できるベルナさんが一瞬でつけてくれた。


「よし、あとは窯の温度を一気に上げるだけだな」


 どちらかというとパンを焼く時間よりもパン窯の内部の温度を数百度に上げるまでの時間の方が掛かる。トーチバーナーや燃料となる木質ペレットがあるとはいえ、それだけの温度になるまでには数十分は掛かってしまうのが玉に瑕だ。


 それにポータブルピザ窯の大きさはそこまで大きくないので、昨日のピザを焼く時と同様に2つのポータブルピザ窯へ火を入れている。




「……よし、これくらいだな」


「おお、いい香りだな!」


「うん、これはおいしそうだね!」


 ポータブルピザ窯に入れていたパンを取り出すと、焼き立ての小麦の香りが辺りに広がる。白色だったパンの生地は焼き上げることによって売り物のような美しい茶色をしたパンの色へと変わっている。


「あちち……うん、中も真っ白でちゃんと膨らんでいるね」


 当然焼き立てのパンは物凄く熱いので、これまたアウトドアショップで購入した軍手を付けながら丸いパンを半分に割ると、中からは真っ白で柔らかなパンの中身が現れ、先ほどよりも一層香りが広がっていく。


「うん、味もバッチリだな。はい、ふたりもちょっと味見してみて」


「どれどれ……うん、外はパリッとしていて、中はふんわりと柔らかくて最高においしいよ!」


「ああ! 店で売っている物よりも全然うまいぞ! テツヤさんはパン屋にもなれるんじゃないのか!?」


「さすがに大袈裟だよ。でもうまく焼けたみたいでよかった」


 当然ながらパンを焼くのは初めてではなく、ちゃんとアレフレアの街で予習はしてきてある。キャンプ飯を作る時に少し難しい物を作る場合に予習は必須だからな。とはいえ、予習の時の味見はリリアにお願いしたから、2人は焼き立てのパンを食べるのは初めてだ。


 少し大袈裟だけれど、初めて食べる焼き立てパンの香りや味は衝撃的だろう。街で売っているパンもおいしいけれど、焼き立てのパンは中々食べられないからな。


「ちょうどみんなも起きてきたみたいだね。それじゃあ朝食にしよう」


 焼き立てのパンの香りに誘われてか、女性陣のテントから音が聞こえてきた。みんなも起きたみたいだし、さっそく朝食としよう。


最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます!

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誤字脱字、日本語のおかしいところがありましたら教えて頂けますと非常に嬉しいです( ^ω^ )

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