第174話 アウトドアスパイスの販売
「さあ、本日も朝早くから当アウトドアショップへ並んでいただきまして、誠にありがとうございます!」
今日も朝早くから大勢のお客さんがお店の前に並んでくれている。普段のアウトドアショップの並びは10人くらいだが、今日は50人近くのお客さんがこのコンビニほどの大きさのお店の前に並んでいる。というのも、今日から新しい商品を複数販売すると、数日前から告知をしていたからだ。
アウトドアショップの能力がレベル5に上がって、数多くの商品が購入できるようになったが、今のところは方位磁石や地図のように大きな影響を与える商品はなかった。そのため、少しずつだが新たな商品を販売していくことにした。
「まずはいきなりですが、当店の新たな目玉商品となります! こちらが当店おすすめの『アウトドアスパイス』です!」
「「「おおお~!」」」
木筒に移し替えてあるアウトドアスパイスを掲げると、お客さんの方も大袈裟に驚いてくれる。うちのお店のお客さんもお約束というものを分かってくれている。
しかし、今回のアウトドアスパイスは本当におすすめできる商品だ。いつもの食品系の新しい商品は試食をするところだが、このアウトドアスパイスは調味料だ。そのまま試食させることは難しい。
そこで、このアウトドアスパイスを効果的に宣伝できる方法がこれだ!
「さて、皆さんもこの街の冒険者なら、こちらの干し肉はよくご存じですよね?」
「……ああ、昔はよく食っていた干し肉だな」
「そういえば、この店ができて棒状ラーメンやアルファ米がなかった頃はよく食っていたな……」
「確かに値段は安いんだけれど、あの臭いと味がねえ……」
どうやらこの街を拠点にしている駆け出し冒険者のみんなはこの干し肉のことを俺以上に知っているようだ。この干し肉は値段がとても安く、かなり日持ちするので、駆け出し冒険者の携帯食や保存食として重宝されていた。
俺が最初にこの街へやってきた時にロイヤたちからもらったやつだな。値段が安い分、味の方はそれほどおいしくない。というよりも臭いがあまりにもきつくてまずいまである。
最近ではうちのお店の棒状ラーメンやアルファ米の販売を始めたので、そちらの方が利用されてるようになった。それでもこの干し肉はとても安いので、あまりお金に余裕のない冒険者たちはまだこの干し肉を購入している。
「この干し肉を軽く火で炙ったものがこちらになります。ご存じのようにこの干し肉は少し火を通すと臭いが多少良くなります」
ロイヤたちにも聞いた話だが、この干し肉は火を通すと臭いが多少マシになる。最近ではファイヤースターターがだいぶ普及してきたこともあって、火を起こして昼食を食べる冒険者も増えてきた。
「確かに火を通せば多少はマシになるけれどよう……」
「それでもまだ臭いが厳しいわよね……」
どうやらお客さんたちもすでにそのことは知っているようだ。
「そして炙った干し肉にこのアウトドアスパイスを掛けて……試しに味の方を見てみてください」
フィアちゃんやアンジュたちが炙った干し肉を小さく切ってアウトドアスパイスを掛けた試食品を並んでくれていたお客さんへと配っていく。
「スパイスということは香辛料か。だけどやっぱりまだ臭いが残っているな……」
「う~ん、あの干し肉に何かかけたところで……いや、悪くねえぞ!」
「本当! 臭いは少し残っているけれど、全然食べられる味だわ!」
アウトドアスパイスにはコショウやガーリックなどに加えて、ハーブなどの香草が複数含まれているため、この干し肉のような獣臭が強い肉なんかにもよく合うようにできている。
……まあ、この干し肉の臭いは結構なものだから、完全に臭いを消し去ることはできなかったんだけどな。とはいえ、それでも普通に食べるよりはかなりマシな味になった。
「こちらのアウトドアスパイスは様々な香辛料や調味料が混ぜ合わさっており、肉や野菜や魚など多くの食材にあう調味料となっております。もちろんこちらの干し肉だけでなく、焼いた肉に少しかけるだけで、いつものご飯が一気にグレードアップしてしまう優れものなのです!」
「へえ~そりゃすごい! この干し肉の味がここまでまともになるなら、普通の焼いた肉にかけたらどんだけうまくなるんだろうな!」
「お肉だけじゃなくて、魚や野菜にも使えるのね。外だけじゃなくて、普通に料理する時にも使えそうね!」
「少し前に特殊な魔法を利用した香辛料の栽培方法が考案されまして、それに伴い香辛料や調味料の値段が下がっております。そのためこちらのアウトドアスパイスはなんとたったの銀貨5枚での販売となります! また、他の商品と同様にこの木筒を持ってきていただければ、次回は銀貨4枚でのご提供となります。普段の料理やたまの贅沢に、ぜひこちらのアウトドアスパイスを試してみてください!」
「おお、この香辛料がこれだけの量で銀貨5枚はなかなかいいじゃないか!」
「そうか、それで最近香辛料の値段が下がってきていたんだな!」
「少し高いが、結構な量が入っているし、実質は銀貨4枚か! これは試してみるしかねえな!」
アウトドアスパイスは銀貨2枚で購入できるから、容器である木筒を除くとひとつ売れて銀貨2枚のもうけだ。まだ少し高い気もするが、香辛料はもう少し値段が下がっていきそうだから、その際にはもう少し値下げするとしよう。
最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます!
執筆の励みとなりますのでブックマークの登録や広告下にある☆☆☆☆☆での評価をいただけますと幸いです。
誤字脱字、日本語のおかしいところがありましたら教えて頂けますと非常に嬉しいです( ^ω^ )