51、みな、それぞれの宿へ
すた すた すた すた・・・・・・
たたっ たたっ たたっ たたっ・・・・・・
あかねと絢子は、同じ方向へ並んで歩いてゆく。
「もしかして、ウチと同じとこに泊まっとると? そこの観光旅館?」
「そのようやなぁ。鍋島さんも、同じとこなんねぇ? ご家族と?」
「じいと、両親が一緒たい。よか旅館よねー。うまかもんが、たくさん出るとよ」
「そう言えば、さっきの子・・・・・・。あれは、驚きましたよねー?」
「早乙女小紅?」
「そう。かなりの腕だと思いますわ。・・・・・・面白そうな大会になるわぁ」
「早乙女小紅がいかに強かぁ女だ言うても、ウチは、ぜーったいに負けんとよ!」
「頂点に立てるのは、ただ一人やしなぁ。私も、譲る気はあらへんで? ふふふっ」
「まいこ! あやこ姉が、すっごく、きあいはいっとるわぁ!」
「すごいわぁ! こーなったあやこ姉は、すごぉくつよいから、たのしみやー」
朋子と舞子の手を引きながら、絢子はあかねに対して微笑みながら、鋭い目を見せる。
「ところで、この子らは、何ね? ・・・・・・藤川絢子には、もう娘がおるとね?」
「ちゃいますって言うのに! ・・・・・・私、そんなに老けて見えるんかいなぁ・・・・・・」
同じ頃、水穂と澪は小紅の後を追いかけていた。
「待ってってばぁー。小紅センパーイ! どんどん行っちゃうんだもんなー」
「歩くの早いなぁ。・・・・・・やっぱり、小紅サンは根本から鍛え方が違いますよね」
「まったく。あたしのいない間に、他県の選手たちと海で遊んでるなんてさー」
「だってー。何て言うか、成り行きでー。でも、すごいメンバーだったね」
「たまたま、あの砂浜に、いろんな人達が集まっちゃったって感じなんですかね」
「まぁ、何でもいいよ。面白そうな相手いっぱい見つけたし! 退屈しなくて済むね」
小紅はジャージのポケットに両手を突っ込み、笑顔を見せつつ大股で歩いてゆく。
その顔は、まるで子供が最新のオモチャを見つけたかのように、嬉々とした表情。
「みかんには負けないとして、藤川絢子、鍋島あかね、鈴鹿葉月! 面白そうだわ!」
「小紅センパイ。他にもあと二人、いたよー? 島村と草笛って人は?」
「あたし、その二人には、そこまでのものは感じなかったな。弱くはないだろうけど」
「すごいですね小紅サンは。わたしと水穂はもう、実力者に囲まれて困りましたよー」
「あんたらもかなりの実力なんだし、自信持ちなよ! 優勝は、柏沼北中だからさ!」
絶対的な自信を持っている小紅。三人は陽炎の立つ道を、宿に向かって戻っていった。




