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潮騒の、すず  作者: 糸東 甚九郎
第3章 葉月と翔平が決めたこと
12/128

12、にぎやかわいわい壮行会

「「「「「 おぉーっ! これで役者が揃ったっぺよ! いぇい! ひゅーひゅー 」」」」」

 

   パチパチパチパチ!  パチパチパチパチ!  パチパチパチパチ!


 葉月が到着し、大人たちが一斉に声をあげて迎え入れた。

 畳敷きの大広間に並べられた長テーブル。その上には、既に何本も空いた瓶ビール、麦焼酎の瓶、日本酒の一升瓶、大皿に盛られた刺身やお寿司、炒め物、煮物、お蕎麦などがたくさん出されている。


「(う、うわー。ほんとに亜弓もりんも、この中であいさつしたの?)」

「(そうだよ。なーに、はづきなら、大丈夫だっぺ! ほれ!)」


 亜弓に背中をぽんと叩かれた葉月は、咳払いを一回。ぴしっと姿勢を整え、ぺこりと一礼した。


「いよっ! 待ってましたー、葉月ちゃん! 亜弓ぃ、ほれ! そこ、どいてやれー」

「葉月ちゃん、しっかりね。あいさつ、大トリだからね」


 徹と団五郎も、頬を赤らめながら、笑顔で葉月のあいさつを待つ。


「(ぱく)(きゅいっ)・・・・・・葉月ー。遅れてきた分、元気よくやりなさいよーっ?」


 睦子も、お刺身をぱくりと頬張って日本酒をくいーっと飲み干し、大きく手を振りながら葉月に向かって叫ぶ。

 公民館の中にいる人々の視線が、同時に葉月へ集まった。


「(み、みんな、プレッシャーかけないでよー。・・・・・・試合より緊張しちゃうよー)」


   どきどき  どきどき  どきどき・・・・・・


 葉月の心臓は、少しずつ鼓動が早くなってゆく。


「葉月! 全国で戦う方が、もっと緊張するはずだぞー。ぱーっと言っちゃえーっ!」

「(! 翔平! ・・・・・・うん。・・・・・・そうだね!)」


 翔平が最後に、一番遠いところから大きな声を張り、葉月を勇気づけた。


   どきんどきん  ・・・・・・すうっ!


 心音が一番高鳴った時、葉月は大きく息を吸った。


「みなさん、遅れてすみません。大荒井中学校三年一組、鈴鹿葉月です・・・・・・―――」


 葉月は、きりっとした表情で、明るく丁寧な挨拶をする。さっきまでの緊張が嘘のように、スラスラと言葉を述べてゆく。


「―――全国大会、個人も団体も全力で頑張ります。応援よろしくお願いします!」


 にこっと笑い、ぺこりと頭を下げる葉月。


   パチパチパチパチパチパチパチパチ!

   パチパチパチパチパチパチパチパチ!


「「「「「 いいぞーっ! 葉月ちゃんーっ! 頑張れよーっ! 」」」」」

「「「「「 日本一目指してねーっ! 頑張れ葉月ちゃん! 」」」」」


 公民館は、まるで何かのコンサート会場であるかのような雰囲気になった。挨拶を終えた葉月のもとへ、スーツ姿で恰幅の良い男性が満面の笑みで近寄り、握手をした。


「あ! え! び、びっくりしました! わたしなんかと握手なんてー」

「はっはっはぁ! いやぁ素晴らしい挨拶だったよ! さすがだね。はっはははは!」


 その男性は、この町の長である緒川(おがわ)(しん)二郎(じろう)。七福神の布袋様のような顔と、優しい笑顔が特徴で、三期目を勤める人気の町長だ。


「町長、どうですか? 本校の生徒は、元気いっぱいでしょう!」


 校長の長谷屋(はせや)嘉夫(よしお)が、町長の肩をぽんっと叩いた。


「はっはっは! 実にいい子たちですな、長谷屋校長! 大荒井中は素晴らしいですよ」

「この町の未来を支える、貴重な子たちですから! ぜひ、応援してあげて下さい」


 町長と校長は、笑顔で公民館内を見回す。

 再び、ほんわりとした雰囲気の笑顔を見せる町長が、グラスを掲げて声を張った。

 「剣道部のみなさんに、海道館道場のみなさん。朗報、待ってますからねっ!」


「「「「「 はいっ! 」」」」」

「「「 はぁいっ! 」」」


 町長の激励に対し、一斉に応える剣道部と葉月たち。

 その後、町長は「そろそろ私は」と言って、全員と握手をして公民館から去って行った。

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