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【外伝】あなたが教えてくれたこと  作者: 小林汐希
4話 日常生活と思い出
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【4-1】 もう1年経つんだ…




「じゃあ、あたし片付けとお風呂に入って寝るね」


「おぅ、じゃあ俺はレポートでもやるかぁ」


 食事も終わって、あたしは食器の片づけと洗濯に取りかかる。


 概ね2週間に一度、和人は実験レポートを抱えるので、その週の金曜日はこの時間から部屋にこもることが多い。


 そこで調べたりないものがあると土曜日に図書館での調べ物に行ってしまう。


「冷えるから、風邪ひかないでね」


「千佳もな」


「うん、ありがとう」


 邪魔をしないように、リビングのテレビと照明を消してキッチンだけの明かりにした。


 和人の部屋でパソコンを立ち上げる音がする。この部屋を借りたとき、唯一の問題だったのが、古い物件だったために十分なインターネット環境が入っていなかったこと。


 この部屋を契約したときに、電話は携帯が2台あることから固定電話は見送ったし、学生二人というまだ半人前のあたしたちが電話や光ケーブルなどの工事契約をするわけにもいかない。


 そうかと言ってスマートフォンで全てをこなすわけにはいかない。そんなときには流石に理系の和人だった。


 窓際に固定式のWi-Fiルーターを置いてくれて、この問題をあっという間に解決してくれた。マンションの1部屋で、特に動画を毎日観ることもないあたしたちの使い方なら十分に用が足りる。


 二人分の部屋代を半分近くに減らすことが出来ていたから、その費用も賄えた。


 お皿を洗いながら去年の春を思い出す。


 お互いの両親から二人で同居の許可をもらった後のことだ。お部屋を決めて、和人の名前で契約もしてもらった。


 いざ荷物を運ぼうとそれぞれの持ち物を確認したときに、和人の部屋からは机と本棚、小さなコタツくらいしか荷物がなかった。


「もー、どういう生活していたのよ?」


「だって必要ないし?」


 彼が借りていた部屋が1口コンロに小型冷蔵庫付きの物件だったこと。目の前にコンビニやコインランドリーなどの便利な設備があったから、何も買う必要がなかったという。テレビだってパソコンで補っていたし。


「どうりで、いつもあたしの部屋に遊びに来ていたわけだねぇ」


「何もない割には散らかっていたからな」


 さすがに女のあたしが下着までコインランドリーというわけにいかないし、食費の節約のためには自炊が一番効くから、洗濯機や少し大きめの冷蔵庫やレンジも買ってあった。


 狭い部屋に勉強机を持って来ることも出来なかったから、リサイクルショップで買ったあたしの部屋の二人用のダイニングテーブルを食卓兼用にして転用した。


 テレビも今の部屋は端子がリビングにしかなかったから、あたしが持っていた物を提供した。


 その前に和人が持ってきたコタツを座卓兼用で置いた。こんな感じで、それぞれが持っていたものを持ち寄ったから、新しく買い足した出費は大きくなかった。


 あたしがこの部屋に来て買ったのは、自分の部屋に置く折りたたみテーブルと座椅子くらいだ。


「もう1年経っちゃうんだなぁ」


 食器を片付けて、テーブルの上を拭く。ダイニングの明かりも消してパジャマを取りに自分の部屋に戻って衣装ケースをあけた。


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