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【外伝】あなたが教えてくれたこと  作者: 小林汐希
6話 進路指導室での衝撃
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【6-3】 同い年じゃ相手にならないよ




 冬休み、あたしは塾の講習に通いながら、その帰りがてら結花の部屋に面会に行く毎日を過ごしていた。


 ある日、結花が部屋にいなくて看護師さんに聞いてみたら、院内の美容院に行っているというし、そのまま待っているようにと言付(ことづ)けを預かっていたと教えてくれた。


「ちぃちゃん、待たせてごめんね」


「結花……、かわいい……」


「へっ?」


「だって……、そこまで短くした結花って初めてかも」


 以前に切ったときは、とにかく手術前ということもあって、髪型もなにもなく「切り落とした」というのが正しい表現だった。


 今回はまだ長さはともかく、今後伸ばしても平気なように、後ろ髪の長さを揃えてくれていた。そのうち、またアクセサリーが付けられるようになっていくのだろう。


「お薬が変わってね、もう髪の毛が抜ける心配もないって」


「本当!? よかったぁ……」


 薬にもいろんな種類があって、髪の毛が抜けてしまうと言われる抗がん剤もそのうちの一部だ。全ての治療にそれを使うわけではなく、お医者さんが病状や本人との希望によって使う物は変わる。


 強い薬を使わないでいけるという判断なら歓迎する話だ。結花の体にもそれだけ余裕が出てくる。


 自宅に帰ってからお父さんに聞くと、検査で腫瘍マーカーの数値が下がったまま安定して、新しい箇所への転移がないということなのだろうと教えてくれた。


 その言葉を待って、結花も復帰に向けた一歩を踏み出したということなんだ。


「ちぃちゃん、クリスマスはいいからね。彼氏さんと楽しまないとだよ」


 薬を変えたと言っても、まだ投薬治療が年内は続くと言うことから、年内の一時帰宅は出来ないと話していた。





「原田のクリスマスか……。何か考えなくちゃならんな」


 冬休みに入る直前、すっかりおなじみになってしまった、小島先生とあたしの指導室会議での話題。


 教科書やプリントを机の上に広げているから、誰かが入ってきても全然問題ないし、先生も結花の補講の準備だと言ってあるようで、職員室で誰かに後ろ指をさされることもないんだって。


「まだ退院していないから、ケーキってわけにもいかないしな」


 ここまで吹き込んでおけば、先生があとは考えてくれるだろう。





 クリスマスの当日は、そんな結花の言葉に甘えさせてもらって、あたしたちの時間を作らせてもらった。


 あたしが同じクラスになった和人と付き合っていることは誰にも公言していないし、そもそも気づいているのは結花だけだったから。


 あたしが親友にしてあげられたのは、ありがとうの言葉を告げるだけだったけれど、彼女は嬉しそうに笑ってくれた。


 そして教えてくれたんだ。小島先生が結花にプレゼントと称してイルミネーションを一緒に見に行った時間のことを。


「小島先生もやるなぁ。修学旅行の時もそうだったけどさぁ。やっぱり結花は特別なんだなぁ」


 学校ではそんなそぶりも見せないのに、プライベートではしっかり大人のエスコートをしてくれている。


「あれじゃぁ、同学年じゃ相手にならないねぇ」


 その時はそれでよかったのだけど、まさか先生と生徒という見えない距離が思わぬ事態に発展していくとは、その時のあたしには想像することができなかった。


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