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思いもかけぬ援軍は

 どこの世界にもいるんですね、乙女小説の愛好家って。

 たしかにあれは恋愛小説の一種ですけれど、内容的にはちょっと。

 あまりにもノクターン過ぎて、口にするのは憚られる内容なのですよ。


「で。どんな協定を?」


 これはドゥーラに知らせる事の出来ない、超機密の扱いになるでしょう。

 でも、それは知っておかないと。知らないでいて後で困るのは私です。


「戦士団をイガルタに降下させてくれるって」


 どゆこと? もう少し詳しく。

 …あ、ちょっと待って、とりあえず心の準備をするから。


 たい焼きをぱくり。渋く淹れた緑茶をごくり。

 味のコントラストが口の中で何とも言えないハーモニーを奏でますね。

 ぱくぽく、もぐもぐ…… ごっくん。


 ……ふぅ。


「ナギ、もういい?」


 話してください。 ……現実逃避しそこないましたね。

 ここはひとつ覚悟を決めますか……


「アマネさんは、黒ドワーフ戦士団の空挺作戦を手伝ってくれるって。これなら地上に降りるのは戦車を運ぶ人たちだけでいいんじゃない?」

「それにね、戦略的なメリットもあるわよ」


 たい焼きを片手に、花音が作戦というか… 計略ですね、ここまで来ると。


 ええと、騎士団を囮に… ですか。確かに1万人規模の軍勢が進撃するのですから目立つどころの騒ぎじゃありませんよね。


 迫りくるドラゴンは片端から叩き落すし、魔物の群れはバリスタで撃滅して。

 あの時に渡したバリスタ用の特殊砲弾は徹甲榴弾だけじゃありません。

 焼夷弾や親子爆弾も含まれています。


 それをドカドカ使っているのですから、いくらなんでも目立ちますよね。


「それに対してイズワカから出撃したのは、重駆逐戦車50両と装甲兵員輸送車だけなのよねぇ」


 と、なると武士団を含めても全部で1000人もいませんね。さらにドワーフ全般に言える事は、機械に強いという事ですかね。たとえ戦車が故障しても簡単に修理するでしょう。それに、彼らの護衛はベゼルガです。

 ある意味では隠密行動に近いかも。


「ご明察。加えて言えば、確率は高くないけど奇襲効果が狙えるのよねぇ」


 そう言うこと…… か。


 2つの部隊はそれぞれが囮であり、打撃力でもある訳で。

 これって魔族にとっては悪夢そのものですね。だって防衛戦で避けなくてはならないのは、戦線──お互いの戦力が衝突する場所──が増える事。

 戦力の分散は、時として致命傷になりかねないのです。


 それに、剣と魔法の軍団が相手をするのは、鉄と炎が生み出す嵐なのです。

 ドラゴンと対峙するのは、ロケット戦闘機とベゼルガのエクサイマー。

 たとえ魔物の群れが来ようとも、重駆逐戦車やバリスタが粉砕するでしょう。

 そして地球と魔族の世界をつなぐゲートの先に対しては……


「超兵器A1号を撃ち込むのよねぇ」


 物質とエネルギーは等価である。

 同じ質量の──我々の世界を構成する物質と、電気的には正反対の反物質が触れ合えば、それは純粋なエネルギーに変換される。これは相対性理論から導き出された結論であり、同時に宇宙の法則の一端でもある。


 解き放たれるエネルギー量は、新型水爆8000発を同時に爆発させたものよりも確実に大きい。これが惑星攻撃用の超兵器とされる所以でもある。

 その弾頭に使う反物質はレオノールの反物質生成装置から取り出したもの。

 そしてそれをミサイルの本体は……


「神雷に操縦席を付けるなんて、と思っていたけれどねぇ」

「そうなのです。あれって直掩機だったんですね。有人対地ミサイルなんてモノを作り上げていたとすれば、その場で彼を成敗していたかも」


 ミサイル本体を作り上げたのは松戸である。


 彼は最初から対地ミサイルとしての無人型と、直掩機としての有人型の2種類を考えていたのですね。で、イズワカ城の大手門をブチ壊してくださりやがったのは、有人型の方… と。

 何やら花音が感心していますが…… どうしたのです?


「対地ミサイルと直掩機が同じなら、護衛も楽なのかな… って」


 たしかに。直掩機が援護する対象についていけなかったら、それこそ問題ですもの。同型機ならそのあたりも心配無用… そう考えていいかも。

 ねえヘルマ、あなたなら今後の展開を……


「……ヘル… マ?」


 たい焼きも食べずに、一体どうしたのです?

 そして両手の上に浮かんでいるモノは?

航宙艦母艦の動力システムはひとつではありませんが、その中にも反物質反応炉もあるのです。そして、機密保持用の自爆装置は反物質爆弾です。

これは前に書いた物語で登場したアステーシアという航宙艦母艦に積まれていたシステムですが、レオノールも同型艦ですから……

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