家老様のなさったこと
番外編(用語解説的なもの)を18時に投稿します。
本編とは関係がありませんが、ネタバレがあるかも。
みなさまよろしく。
──ナギが来た。
その報せが来たのは、午後のお茶の時間を少し過ぎたあたりでしたか。
それも正門から里に入るとは。
彼女は水神様のお気に入りですから祠を経由すると思っていたのです。
ならば東の門から入ると思っていたのですが……
「よぉ、ソルナック。食いもンを持ってきたぜ」
「ザーラックでしたか。いつになくご機嫌ですね?」
「嬢ちゃんが来たぞ」
「……来ましたか」
ふむ。
あの試合以来、ずいぶんと彼女の事を気にしているものだな。
容貌うんぬんはともかくとして、強いから… だろうか。
私も彼女の強さの一片を体験していますからねぇ。
「ずいぶんクールな反応だな。もう少し怯えるとか……」
「このソルナック、恐怖を覚えるものなど何もありませんよ?」
私はモダテの里の家老職を預かる身なのだ。
そんな下らん感情に左右されるほどヤワな精神の持ち主ではない。
「そうか?」
ニヤリと笑みを浮かべたザーラックは
「ユーミィにも言っておくよ」
「ちょっと待った!」
部屋を出ようとしたザーラックは、くぅるりと振り返えった。
その表情からは邪悪という文字が浮かび上がっているようにも見える。
「恐くはないんだろ?」
こいつは……
私はクイックムーブでザーラックの背後をとると、右足を彼の左足に絡ませた。
「ぬぁ? 何をする!」
「……そう急がなくても良いでしょう。まず用件を聞きましょうか」
次に自分の左足を相手の首根っこに引っ掛けて…… 「いだだだだ!」
右腕で何かをアピールしているようですが、あの時はたしか……
「ぎゃあああ!」
そんなに力を入れたつもりは無いんですが。
やっぱりこうなりますか。
「どうしたんですか、ザーラック。私はそんなに力を入れていませんよ?」
「いいからっ! とにかく…… いでぇぇぇ!」
「ふむ……」
この前ナギにかけられた技だが、私でも出来るとは。
そう言えば、あのあと身体中の関節が致命的なダメージを受けたな。
こうしてみると関節にダメージを与える技だったのか。
「……ふう、なんつーヤバい事をしやがるんだ」
「実によく考えられた技能でしたね」
秘書に回復魔法を施されているザーラックに話しかけた。
振りほどかれて反撃されれば、格闘術の経験が浅い私はどうにかなってしまったかも知れない。相手は戦闘のプロフェッショナルなのだ。
「……チョットマテ」
「どうしましたか?」
「おめー、いま『よく考えられた技能』っつーたな?」
「言いましたが何か」
「……誰から習った?」
鋭いな。
私が技を編み出したという考えは最初から除外… か。
まあいいでしょう、伏せておくような情報でもなし。
「教わってはいません。盗んだんですよ」
「……誰から?」
「ナギからです」
「なんだとおおお?」
ザーラックは頭を抱えてしまったが…… 気持ちも分からなくはない。
まあ、頑張ってくれ。
夕方になると、執務室にナギが飛び込んできた。
強い光に恐怖とか不安を感じるかと聞いてきたのだが。
理由については思い当たる節もあるが、根本的にな所はな……
まあいいか。
そのうち時間を作っておくとしよう。
チーズや卵の燻製もいい具合に仕上がる頃合いだ。
明日は… 無理か。
明後日にでも行ってみるとしよう。
ええと…… ソルナックさんが使ったのは「まんじ固め」という技だそうです。
……とっても危険な技でした(涙)




