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目撃者がいなければ

 いやいや、さすがにあの時ばかりは死んだと思いましたよ。

 花見に出かけたらプレシアが人型戦車を地球に『お取り寄せ』している所に出くわすなんて思ってもいなかったし。

 それを見つけた私が、プレシアに近づいてツッコミを入れた途端に、この前のように疑似空間に……


 いえ、あれは疑似空間であって疑似空間ではない場所だったのです。

 全ての次元空間が時間と言う縦糸によって編み上げられた巨大な… 樹の姿をしたもの。


「ねぇえ、なぁぎぃ。素直に世界樹って言えばぁ?」


 しれっと言い放つプレセアに、私も言いたい事があるのです。

 一言で言えば、イヤゲモノは要らん! という事になりますかね。

 プレシアが常識改変をする理由は、この地球に異世界が混ざり合ってしまったとか、色々な漂着物とか… そういった事について気にしないようにすること。


 そのお陰で、魔族とも互角に戦ってくることが出来たのも事実です。

 そうでなければ、最初にドラゴンが現れた時だってヤポネスの航空部隊は対処しきれなかったかも知れません。予備知識も何もなしにドラゴンと空中戦なんか出来るはずもないし、ましてや全滅させる事は不可能ですもの。


「そうよぉ。あの時だって、私の常識改変が間に合わなかったらパニックを起こした挙句にどうかなっていたかも。まあ、まともに戦う事なんか出来なかったんじゃないかしらねぇ」


 たしかにその通りです。さっきも言いかけましたが、それに関しては感謝していますよ。もしかしたら地球も惑星アヴォニアと似たような運命を辿ったかも知れないのですから。

 たまたま創造神様がこの時空間にいたから… というのも大きいかしらね。


 どちらにしても、それはそれで仕方がない事なのでしょう。

 でも『お取り寄せ』は駄目だと思うのです。やり過ぎだと思いませんか?

 ヨツメドリと土王なんかは、漂着物? まあ、いいでしょう。

 そこは信じる事にしますよ。


「でも宇宙ロボットや人型戦車はどうなんですかね」


 あなたが常識改変をしているので、アレを見ても誰も違和感を感じてはいないようですけれど、間違いなく異世界から『お取り寄せ』をしたモノですよね。

 宇宙ロボットはともかく、人型戦車については言い逃れは出来ませんよ。

 それに、たった4機で何が出来ると……


「ああらぁ、補給基地ごと取り寄せれば……」「やめて!?」


 たぶん太古の遺跡から発掘された事にするつもりだと思いますけれどね。

 そういう問題ではないのです。私が言いたいのは戦後の事です。

 人類に、こういうオモチャを与えたら間違いなく喧嘩になりますよ。

 その結果はどうなるとお思いですか?


「あら、平和になっていいじゃない。すくなくとも数万年は静かになるわよ」


 内戦に次ぐ内戦の末に、全てを喪った人類は原始時代に逆戻り… てな事になりはしませんかね。そして、文明レベルが今の水準まで回復するのには、その位はかかってもおかしくは無いでしょう。

 それが拙いと言っているのです!


「そんな理屈は混沌神たる私には通用しないの。私はね、平穏な人生ほど退屈なものは無いと思うのよ。あなたは人類に、そんな残酷な運命を押し付けようとしているのよ?」


 だから乱世の時代をもう一度… って。

 そんな混沌とした時代なんか誰も望んで…… そっか、混沌神だからか。


「運命の天秤の片方に乗っているのは秩序。そして反対側は混沌。天秤は常に揺れ動いているけど、どちらか一方に傾く事は無いわ。

 でもこのままではどちらかに傾きすぎるかも。

 天秤がバランスを失ったあげく崩壊した先にあるのは、破滅でしかないのよ」


 そう言われてみれば、そうなのかも知れ…


「なーんてね。退屈なのは、このワ・タ・シ」


 あんだとぅ?


 この事を創造神様に話したら、貴女の立場はヤバい事になるでしょうねぇ。

 いんや、ここは何が何でもヤバい事にしちゃる。

 こいつは事案と言うには生ぬるい。ここまで来れば犯罪ですよ。

 人類の危機なのです。


「ねえ、ナギ?」

「なによぅ…」


 プレシアは嬉しそうに話を続けた。


「あなたは犯罪だというけど、目撃者がいなければ… どうなるかしら?」


 途端に周囲の世界から、色彩というものが消え失せた。

 辛うじて主張していた灰色さえもが、ひとつの色に塗りつぶされ……


「あ・… ああああ……」


 気が付いたら、私は地面にキスをしていて……

このお話の後で、疑似空間にヘルマが乱入するのですが……

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