女神とナギと聖なる像(後編)
番外編(用語解説的なもの)を18時に投稿します。
本編とは関係がありませんが、ネタバレがあるかも。
生物を定義する方法は色々あります。
その内容はユーディ達のような生粋の地球人と私達では、見てきたものが違います。それゆえに定義の内容が違うのは仕方がありませんが……
「埴輪が生物…… ですって?」
「別に不思議な事ではないでしょう。宇宙には色々な生物がいたでしょう?」
ヘルマが言っているのは、太陽よりも大きな鉱物生命体の事ですよね。
でもあれは80億年のあの日に、ブラックホールに沈んだはずでは?
それを見るために、私達はラックヴァルで時間旅行に行きましたよね。
途中で恒星に衝突したり、スキル人と色々と無茶をしましたが、今となっては良い思い出ですが……
「ああ、あのブラックホールは特殊なタイプなのよ。宇宙の法則が定まりきる寸前のタイミングで、あの空間を自分専用にしちゃったのよねぇ」
つまり、あのジャンクションは今でも存在しているという事ですね?
あれは本来ならば触れ合う事すらあり得ないいくつかの主要な時間線を結び付ける特異点です。だから短命で終わるはずだと思っていたのですが。
「宇宙の法則が定まるよりもあのジャンクションが出来る方が、ほんの少しだけ早かったから、あのまま安定しちゃったんだって」
そうなると、あの太陽よりも大きなアレは今でも生きている?
まあダンジョンコアだって鉱物生命体だし、とてつもなく長生きをするのは言うまでも無いでしょう。
でも、それと埴輪は別物だと思うのです。
だってね、埴輪は適当に作った登り窯で焼き上げた焼き物ですよ?
極端な事を言えば壺とかお茶碗なんかと似たようなモノです。
あれだって魔石の粉を使う事があるし……
「たしかに埴輪は作られたモノだけど、あれはもうゴーレムというより魔法生物かな。なによりも自我があるし、思考内容にも個体差があるのよ」
魔法生物? まさかぁ。冗談…… じゃない?
「ドワーフの言う通りなら、埴輪は生物という事にならない?」
定義の上では、そうですけど。でもあれは……
「諦めなさい、ナギ。そして認めなさい。あれがあなたの眷属だという事をね。
あれだけ懐かれているんだから、冥利に尽きると言うものでしょ?」
「ぐぬぬ……」
たしかにね。たしかに懐かれていますよ?
きゃわきゃわと集まってくる姿は可愛い! の一言ですよ。でも、こうなる事はマギー達──竜騎兵を名乗る埴輪三人衆──が生まれた時に予想してしかるべきでしたか。
埴輪たちの中心に居るのはマギーをリーダーにクララとソニアを加えた三人衆。
彼らは第3世代の──いま生産されている埴輪の試作品ゆえに、色々と無駄に機能の付いた超高性能バージョンです。
いつの間にか飛行ユニットを作ったりしていま… す…… が?
「まさかヘルマ。飛行ユニットって……」
「そうよん。今頃気が付いたの?
あのレベルの重力制御系なら魔晶石で模倣できる範囲よぉ?」
ちょ、おま…… 前衛のマギーは近接戦闘用専門だけど、それを支援するためのクララは長距離砲戦を。そしてソニアは広域探知って…
これらを仕込んで装備を与えたのも、あんただったのかあぁあ!
「だって、あんなに健気に訴えてくるんだもの。ついつい情にほだされて…」
……まあ、過ぎた事は仕方がないとして。
埴輪がこの星に生まれた新しい種族というのは確定ですね。ここまでヘルマが言い切ったという事は、創造神様は反対しなかったという事だし。
でも、私の眷属…… ですか? なんかなぁ……
「観念しなさい。それよりもね、もっと近くで聖像を見てみない?」
「……そう… しますか」
台座の高さ10メートル。その上に立つ聖像も同じくらいですか。
とにかく台座に昇る事… ですね。
いつもの服の下にはスキンスーツを着込んでいるから、あのくらいの高さならぴょーん、ってね。
「台座にしても像にしても、どうやらあなたのダンジョンに使われているのと同じ石材で作られているようね」
つまり私か昴のどちらかが生きていれば… いいえ、この星の寿命が続く限り経年劣化などあり得ません。
事実上、不滅の建造物という事になりますね。
「でも、あの聖像はアリですかね」
「アリでしょ? だって埴輪だもの」
台座の上で陽の光を浴びて輝いている聖像は、埴輪の姿をしているのです。
身長は10メートル、胴回りは6メートルというところですかね。
言ってしまえば埴輪神… だとすればヒノカグツチノミコトも祀っておいた方が良さそうな気がしてきました……
あとで水神様にも相談しておかなくちゃ。
まえがき
番外編(用語解説的なもの)を18時に投稿します。
本編とは関係がありませんが、ネタバレがあるかも。
埴輪さんの聖像と言えば……
父:薬の副作用のせいか食欲が出ない。
私:それでも、一番まともな組み合わせなんでしょ。
母:そういう時は寝てれば? あと風邪ひかないでね? あ・た・ま。
私:……毛糸の帽子もお忘れなく。
父:髪の毛は毛根から折れているだけだ! 断じてハゲでは……
母&私:埴輪さんに謝れ!




