表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/1000

水神様の眷属は

 (それがし)の名はディノイドと申す。

 種族は爬虫人(レプティリアン)…… と言っても馴染みがないかも知れぬ。

 生命が進化するかなり前の時点で哺乳類とは(たもと)を別った種族であるから。

 その我らが水神様の眷属となり、かれこれ10年ほどになろうか。


 初代様より伝わる伝承には、かく記されている。


 ある日の夜、星読みの者たちは見たり。

 夜空に輝く月の前を横切る影。

 あくる日に、占術師たちが告げたり。

 ――山よりも巨きな岩が天より墜つ。


 賢人たちは欲す。

 運命(さだめ)から逃れんと。

 異世界に途を求めんとす。

 これぞ人類保存計画なり……


 つまり、故郷の破滅を予見した祖先は異世界へと避難する事にしたのだ。


 異世界に逃れるにあたり、無数の不安要素はあったという。

 不幸な事に、その不安は的中してしまった。

 我らを待ち受けていたのは多種多様の種族が住まう社会だったのだ。

 だが、幸運の神は我らを見捨ててはおらなんだ。


 現地の神々が口にした言葉は……


「遠き異界より、よう参られた」「苦労しましたね」

「麿はこのあたりを治める水神でおじゃる」「fofofo vo\ov fofofo」

「住むあてが無いのであれば、我が眷属にでもなるかの?」


 こうして我らは、このヒノモトという地域で暮らす事になった。

 水神様の眷属とはいうものの、儀式を行ない隷属するわけでもなく。

 ただ自由意思で、ただ仕えるのみで良い、と。


 その時から、わが種族は水神様の目となり耳となった。

 ある時はかの地で盾となり、剣として戦う事もあった。

 大勢の者が死に、より多くの子供たちが生まれたもの。

 やがて、平穏な日々が続くようになったある日のこと。


「殿様、鏑矢(かぶらや)が…… 鏑矢の音が聞こえまする!」

「その音色はいかなるものであるか?」

「……翔鶴(しょうかく)にございます」


 翔鶴の()を引く鏑矢を放つのは水神様にほかならぬ。

 戦の前には鏑矢が飛ぶが古くからの倣い。久々に戦が始まるか。

 我らは水神様を御護りする盾であり、水神様に弓引く者を滅する剣。


「者共、戦支度じゃ! 水神様のお召しであるぞ」

「「おうっ!」」


 水神様の御許に、急ぎはせ参じたはいいが、敵の軍勢が見当たらぬ。

 このオジマの森は大して広くはないが、軍勢を隠す程度の事はできる。

 だが、我ら以外に人の気配は無い。


 敵はすでに討ち果たされたのであろうか。


「おや、ディノイドではないか。いかがした」

「主様。敵はいずくに?」

「敵…… とな?」


 水神様より命ぜられた。眼前の大樹に矢を射るべし、と。

 見れば先ほどの鏑矢は30間ほど先の大樹に刺さっている。

 某にとっても的を外す距離ではないが……


 ひゅん…… と、風を切って飛んだ矢は狙い違わず大樹に刺さった。だが……


 ……何かが、おかしい。


 矢が的に当たるのが遅れている。瞬きするほどの短かき刻ではあるが、大弓から放たれた矢はその間に5間(1間は1.8メートル)は飛ぶのだ。


「……あの森は妙でございますね」

「ならば調べてはもらえぬものかの」

「この命にかけても必ずや、ご期待にそうて御覧に入れまする」


 水神様からの御下命だ。

 我が命が果てようともかならずや森の秘密を暴いてみせようぞ。


「それだけはならぬ。互いに怪我人や人死にを出してはならぬ」

「なんとお優しいお言葉を。なれど……」


 水神様に仇を為す輩であれば討ち果たすものでございまする。

 それに、我が種族の生命は貴方様のものでございますゆえ。

 みな、冥府でさえも笑って赴くでありましょうに。

 なぜそのような事を仰せに?


「麿と同じ装束を身に着けた者が、この地を通るゆえにな」


 なんと! 水神様が公家装束を許すとは。妹背となられし御方でも?

 ならば穢れは欠片とてあってはならぬも道理。


 水神様は異界からの難民を暖かく迎え入れてくれた。

 この御恩は種族の命脈が尽きようとも返しきれるものではない。


 御神の妹背となりし御方のためにも、ここは頑張らねばならぬ。

かっ… カタい人になってしまった。

まあいいか、これはこれで面白そうなヒトだし。(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ