異世界人がやってくる
ここで暮らす主だった人物が一堂に集まったそうだが……
その全員が、肌の色が薄いのだ。体格も我らに比べると華奢に見える。
見慣れないものに対しては心理的な壁が出来るのは仕方があるまい。
だから乗組員は彼らと距離を…… もちろん同胞たちを除いて、の話だが。
しかし、そうも言っていられない事情が出来たのだ。
だからわしはケチラス号の船長として、彼らに頼まねばならん。
「モダテの。わしらの一部をこの地に住まわせては貰えんか?」
わしの一言は、彼らにとって意外なものだったようだ。
ケチラス号の本来の目的は、人類を絶やさないようにする事だが…… 我らには他にもやらなくてはならない事がある。いや、出来てしまった。
「急に言われて、びっくりしたけど…」
そう言ったのはエルフ族の女性… クラウゼルどのか。
我らの伝承では森に住まう者とされていたが、この星ではそうでもないか。
彼らはその暮らしを森ではなく地下に──それも地底都市とでも言うべき広大な空間を築き上げ、暮らしているのだ。
地底はドワーフ族の領分だと思っていたが、わしの思い違い… いや、これもところ変われば、というヤツだろうか。
「……我らの星は太陽系ごと滅びる運命にあった。それは以前から分かっていた事なので、我々は星間移住の準備を進めていたのだが……」
我々の星が滅びたのは仕方がないことだ。
原因は宇宙的な災害──宇宙が壊れ始めたせい… なのだが。
あまりにも荒唐無稽な話だから、絵空事と捉えられても仕方がるまい。
だが、真実を話さなくては、彼らから信は得られぬだろう。
「話せば長くなるが…… 全ての始まりは我が種族の天文学者が、奇妙な現象を見つけた事なのだ」
宇宙は水の中に浮かぶ泡のようなもの。そしてその泡は勢いよく膨れ上がるゴム風船のように膨張を続けている。
そして風船の中が宇宙… という事になるな。
その異変… 宇宙空間に広がり始める時空間の裂け目を見つけたのは、ほんの偶然に過ぎないのだ。
それは宇宙空間という巨大な風船が、破裂しようとしている事を意味する。
「私達の宇宙も完全に… ではありませんけれど、崩壊はまぬがれたようです。
でも、色々な物が転移してくるのは仕方がないかも知れませんね」
……なん、だと?
「この星の大地に広がる原生林の多くは、異世界のものですよ」
クラウゼルどのの話は、我らのものとよく似ている。
違いは、太陽系が滅びたか否か… だな。
彼らも星間移住を考えていたようだが……
「そして、ついに他の世界と時空間が繋がってしまったのです。そこから現れたのが魔族と呼ばれる存在ですよ」
ふむ、そこは同じだな。我々の住む星の科学者がワームホールと呼んでいたものだ。大半のものは短命だが、消滅する前にごっそりと大地を、海を抉り取っていったものだ。
「ワームホール… ですか。我々にも同じ言葉はありますが……」
そうだな、ソルナックどの。こちらでは遠く離れた2つの座標をつなぐトンネルのようなものらしいな。そこを通り抜けることが出来れば、短時間… いや、時間経過など無かったように移動が出来るという話だが。
だが、我々の世界で言うワームホールはな別のものだ。いわばブラックホールから伸びた触手のようなものだな。触手が触れる僅かな時間で、触れたものを喰らいつくすのだ。
だが、それは悪い事ばかりではなかったのだ。
触手が喰らいつくした後の大地には、ちょっと変わった性質を持った鉱石が残される。それを適切な形に削り出すと、異空間からエネルギーを汲み出すことが出来るようになるのだよ。
我々はこれを太陽結晶と名付けた。
「この世界では、それも完全ではなかったようですね」
ケチラス号が地表に留まっていられたのは、ほんの10分くらいであったか。
太陽結晶が汲み出したエネルギーが、どこかに吸い取られてゆくのだ。
急いで亜空間に戻り、レメディウス号に合流した時には非常用エネルギー・タンクの8割が空になっておった。
「では、あなた方はどうやって地上に?」
レメディウス号の転移装置を使ってだ。
あまり大きなものは転送できないし、時空間を強引に通り抜けるので連続使用も無理だが、人間くらいなら何とかなるらしい。
とにかく莫大なエネルギーを使うのでな。
だが、それでも今回はやるしかないのだ。
モダテの衆よ、聞いてくれ。
滅びてしまった我らの太陽系のことを。
我らが種族に降りかかった災難を。
かなり古い横型スクロールタイプのシューティングゲームに挑戦。
伝説からお笑いまで、3つともプレイしましたけど……
ROMカセット式のゲームの方が最近のものより面白いかも。




