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ちょっとお出かけを

 年明け早々に、やらかしたのはエスターです。

 多連装竹槍ランチャーの攻撃を──文字通りの意味で──突破したのは良いけれど、あまりにも直線的な飛び方をしていたのが運の尽き。

 市街地に展開していた銅鐸(ベゼルガ)さんを甘く見ていましたね。


「うむ、いつ見ても凶悪なヤツでおじゃる」

「だって、銅鐸(ベゼルガ)さんですもの」


 今日はイズワカの市街地の南の端までドライブです。

 ドライブとはいえ、私が乗っているのは戦車ヘッツァーだし、同乗しているのは2柱の神様。水神様と竜王様です。

 それに加えて、20体ほどの銅鐸(ベゼルガ)さんが周囲を固めているのです。


「ベゼルガたぁ、また古い言葉を持ち出したもんだな」


 おお、さすがに竜王様でも知っていましたか。

 北の国の古い神話とか伝承だというのに、なかなかやるものです。


「ありゃあ、すげぇ面白い英雄譚だからな」

「ヴォルスパの事でおじゃるな。荒唐無稽な所はあるが、あれはあれで良いものでおじゃるよ」


 ベゼルガというのはローレンシア大陸の北の方の言葉です。

 そこで暮らす民族の神話や伝承に登場する異能の戦士たちの事ですが、この民族が土地神の爺の子孫──かつて火星(メドリーフ)人が地球(ラーリッド)に降り立った最初の場所を支配していた部族とのハイブリッド──だったりするので、つい……


 だって、ねえ… 銅鐸さんにぴったりのネーミングだと思いませんか?

 伝承にある通り蒼い鎧に身を固め、決して敵に背中を見せないというか。抜群の戦闘センスと凶悪なまでの闘争本能の持ち主で、理不尽なまでに強いのです。

 敵が銅鐸さんの背中を見るのは蹂躙された後くらいですかね。


「敵に回すのはヤベエヤツだって事ぁ、俺様でも分からぁ。あんなの(ベゼルガ)が群れでかかってきたら、いくら俺様でも勝てる気がしねぇもんな」

「ほほう、飛雲(ひうん)でも勝てぬか」

森万呂(おめぇ)なら勝てるとでも言いたそうだな、オイ?」


 まったく、この2柱は仲が良いのか悪いのか。どちらも武闘派の神として知られている大物です。でもね、水神様はともかく、竜王様は……


「ただの喧嘩馬鹿でおじゃる」

「……馬鹿の喧嘩好き?」

「ンだとてめぇ、俺の事を何だと思ってるんだ?」


 ノギハヒメ様がいないと、なかなか威勢がよろしいようで。


「ん、まあ… な……」


 けけけけけ。悪いけど同じ神格持ちとはいえ、元はヒト族の竜王様がいくら頑張っても、姫様は龍人ですからね。竜王様は独学で頑張ったかも知れませんけど、種族の差は簡単には埋められないのよ。

 それに同じヒト族でも水神様は、爺の弟子だという事をお忘れなく。


「…ふん」


 おお、いい具合に拗ねてる。うっふっふ、やっぱり竜王様はこうでなくちゃ。

 てな事をだべっているうちに、目的の場所に着いたようですよ。

 先行した埴輪さん達が、すでに仕事を始めているようで。


「ほほう、アレを仕留めるか。うむうむ、飛雲(ひうん)よりもデキる者共よの」


 クレーンで釣り上げられ、台車に乗せられているのは装甲戦闘機(オウヴァ・ジーナ)です。それも外装を桜色にしているという事は、エスターの専用機ですね。


 正確には『だった』と言うべきですか。なめらかに仕上げられたセラミック装甲はズタボロになっているし、片方の主翼も脱落しています。

 そっちは別動隊が回収に行っていますから、あとで繋ぎ合わせてみますか。


「エスターめ。SIFのスイッチを入れ忘れるとは、なんたる失態であるか」

「お陰で、いい射撃演習になりましたから、オッケーなのです」


 銅鐸さんに装備しているエクサイマーが撃つのは波長の短い菫外線(きんがいせん)です。

 これは高エネルギー・ビームの一種ですから、航空機用のセラミック装甲程度なら、簡単に叩き割る事が出来るのです。

 それにしても、ねぇ……


「ううう、さすがに今回は駄目かと思いましてよ」


 よろよろとコクピットから這い出してきたのは、振り袖姿のエスターだった。

 なかなか艶やかなもので、よく似合っていますが、戦闘機の操縦には向いていないのでは?

 それと、前席が空いているとのは、どういう訳です?


「あ……」


 ジーラを待たずに出発したぁ?

 ちょっと待ちなさい。それが良いところのお嬢様がする事ですかね?

 それにあなた、ハイエルフでしょう?


 エルフ族の評判を下げて、どうするのよ。

イズワカ城の本丸御殿にて


水神:まあ、新年の余興としては、まあまあ及第という処であるな

竜王:俺様もそう思うぜぇ?

ナギ:ほらぁ、水神様や竜王様が呆れているじゃない。

エスター:しくしくしくしく……

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