イズワカ城に起きた怪異
昨日の18時に1話投稿していますので、よろしくお願いします。
ハイファは城に勤めるメイドの統領じゃ。
いわばナギのお世話係という役どころであるが、本丸御殿のセキュリティシステムを構築したのも、ハイファの仕事じゃ。
だから、何かあれば彼女に聞くのが一番じゃ。
「おかしいですね。本丸御殿で生体反応があるのは、あの部屋だけですよ」
「……それはそれで妙な話じゃのぅ」
ハイファを連れて、再びナギの部屋に行くと……
……部屋の真ん中には、毛皮の山があるだけじゃ。
「これじゃ。いつからナギは毛皮の山になったのじゃろうか?」
ナギの部屋の真ん中には、さきほど見た毛皮の山がある。
畳2畳分はあろうかという大きな座布団に座るのは、いかなる巨人であろうか。
大入道どころかオーガが座っても余りそうな大きさじゃ。
そこに座するように、毛皮がこんもりと山になっておる。
「でも、ナギ様は本丸御殿から出ていませんよ」
「そうは言うがのぅ…… では、あれがナギの正体という事であるかの」
い、いや、ほんの冗談じゃ。
不穏な空気が流れてきたから、笑い飛ばそうとしただけではないか。
だからの、頼むからその突撃銃を仕舞ってたもれ。
……というよりも、どこから出したのじゃ。
「メイドのたしなみと言うものでございます」
拳銃ならまだ分かるが、そなたが構えているのは全長3尺(999ミリメートル)もある突撃銃じゃぞ? 背負うておれば嫌でも目につくが、さっきまでは何も装備していなかったであろう。
あんなモノをどこに隠していたのじゃろ。いやマジで謎じゃ。
「メイドの秘密と思っていただければ。ちなみにあと35個ありますよ」
「まさかバックルに発電用の風車を仕込んではいないであろうな?」
「さあ?」
うむむ、これがアルカイック・スマイルというヤツか。
あいまいな笑顔と言うのは見栄えもするが、それだけに厄介じゃ。
あの笑顔を見せられた後では、これ以上追及する気にならぬ。
まあよいか、それよりも解決すべき問題が……
「ややっ? あれは何じゃ?」
部屋の中に鎮座する毛皮の山のてっぺんが、もぞもぞと動いたかと思うと、何か細いものがぴょこんと飛び出したのじゃ。
まるで笠の開ききっていないマツタケのようにも見えるの。
色つやカタチと大きさ。どれを取ってもマツタケじゃ……
「大きさはともかくとして、松茸に目はありませんよ」
「ううむぅ、神でもなければ、妖怪でもないのう」
キノコが神格化したクサビラ神というのがいるが、あれはどう見ても違う。
クサビラ神はオニシメジの化身ではないかと言われるほどに、キノコの形を見事なまでに体現しておる。シメジでなくば、マッシュルームであるかのぅ。
それに、かの神ならば軸の太さも妾の腰周りほどはあろう。
じゃこっ。
メイドが突撃銃を構えている。さきほどの音は遊底を引いて薬室に初弾を送り込んだ時のものだろう。
銃身の上にマウントされている弾倉には50発入っているが……
「待つのじゃ! 撃ってはならぬ」
毛皮の山から生えたマツタケは、きょろきょろと辺りを見回していたが、どうやら妾たちを見つけたようだの。
マツタケを見ている妾と視線が合うと、びくん、と身体を震わせると凍り付いたように動かなくなった。
しばらくにらみ合いが続くうちに、なんとも言い難い空気が支配している。
たしかに、このままでは埒が明かんのう……
それにしても、これは何者じゃ?
「……撃ちますか?」
「だから、発砲は控えるのじゃ」
突撃銃を構えたメイドが妾に問うてきたが、それは悪手ではろう。
そんなものを使ったら、後の片付けが大変じゃ。
ヘッケラーG11シリーズは、高速カービン銃のお手本のようなもの。
本丸御殿に廃墟を作りたい訳ではあるまい?
それに本丸御殿の中心には、土地神様が来た時に使う本殿があるのじゃ。
それがたとえ事故だとしても、じゃ。本殿に流れ弾が1発でも飛び込もうものなら、何が起こるか事になるだろうか。
想像するのも恐ろしいわ。
「本殿に流れ弾が飛ぶような事があれば、さすがに拙かろう?」
土地神様の機嫌を損ねてはならぬのじゃ。
ドゥーラの土地神… たしか猫神と言うたな。
かの神に降りかかったあれこれは、妾の耳にも届いておる。
時として、神とは残酷なものなのじゃ。
このお話を書いているのは、11月26日の午前中です。
ケーブルテレビは早朝に復旧しましたが、ネット回線は不通のままです。
投稿の準備をしたり、次のお話の打ち込みをしたり。
その他もろもろをこなしているうちに、夕方になりました。
どうやら、どこかで火事があって信号ケーブルが焼け落ちたそうです。
いつ復旧するかは不明だそうです。(続く)




