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歴史の道標

 碑文の解読をフリーデに任せた私たちは、ランダーを使って周辺地域の調査を進めているところだ。夕食の時間になると、各々が成果を持ち寄ってのミーティングが始まった。


「これで、だいたい50キロ四方の地図は出来たかね」

「そんな所だな。それにしても、ここは面白い地形だな」


 ぶ厚い岩盤で出来た大地の東側は崖になっている。まるでドーヴァーの白い崖を彷彿させるような景色が広がっている。その先の低地には標高1000メートル級の丘が連なっている。海があった時代なら、ハワイ諸島なみの景色が拝めたかもしれないな。


「オーデル、俺様は鉱山の跡地を見つけたぞ」

「どこだ」

「南西に20キロという所だな。道らしきものもあったから、クロウラーで行ってみようと思ってる」


 そっちはハンスに任せるとしよう。クロウラーと呼んではいるが、車両の足回りは不整地走行用の6輪タイヤだ。今回はキャタピラに換装した方が良い。彼の事だから、すでに換装したかもしれないが。


「それにしても、不思議な事があるのよね」

「不思議な事?」

「いままでカラスより大きな鳥や、キツネより大きな動物を見かけた事がないの」


 私はハンスに視線を向けた。


「俺様も見たことはないな。虫なら普通にいたけどな」

「……私もだ。こいつらのサイズは地球のものと変わらないな」

「不自然なのよ。上空からの観察では、このあたりは原生林が広がってる。植物も半分以上が地球のものか、その亜種なの」


 ここは赤色矮星を巡る地球型の惑星だ。重力が地球の半分以下で、空は昼間でも夕暮れ時のような茜色をしている。それだけの事だと思っていたのだが。


「植物相はそれでもいい。でも、動物は?」


 私たちの前で、ぱちぱちと音を立てながら燃えている焚火の周りには、今日の狩りの成果が木の枝で作られた串に刺さっている。森の中では、比較的よく見かけるリスのようなやつだ。一匹捕れば、数日分の肉には困らないと言えば、大きさの想像もつくだろう。


「こいつより大きな奴は見ていないな」

「地球の常識を当てはめる気は無いけれど、大型の動物がいないのよね。オオカミやクマのような肉食か雑食性の生き物が」

「言われてみればそうだな。俺様は気にしていなかったが、言われてみれば変だ」


 ここに永住するなら、調査は必須だろう。だが……

 パチパチと音を立てて燃えている小さな赤い炎を見つめた。


「ある意味、ここはいい避難所になるだろうな」

「そういう見方もあるな。俺様には、ちと退屈な余生になるけどな」

「まあ、大型の動物が出たら、その時はその時に考えよう。艦載砲を使えば大抵の事には対処できるだろ」


 宇宙船も武装している。主砲は口径105ミリのリニアカノンだ。

 宇宙船の内周に沿って据え付けられているサイクロトロンを加速器にして、直径100ミリまでの弾丸を発射するものだ。宇宙空間で使う事を前提に設計されているから、弾丸の速度は光速度にまで上げる事が出来るし、機関砲のように連射も出来る。


 地上で使う分にはそこまでの速度はいらないだろうが。

 世界各国で使われている最良の戦車砲でも、弾丸の速度は毎秒1800メートル程度だし、それでも充分な破壊力があるのだから。

 もちろん、こいつの口径も艦載砲と同じく105ミリだ。


「じゃあ、最後に私からね。今日解読できたのはここまでよ」


 碑文の解読も、もう少しで終わるだろう。

 火星で暮らしていた古代人たちは、自分たちの星の寿命が残りわずかだと知っていたわけだが、その関係で地球への移住も検討していたようだ。

 だが、惑星の環境が違いすぎて… という話だったが。


「彼らも宇宙開発に取り掛かっていたみたいね。探査衛星だけではなく、宇宙旅行も出来ていたみたいよ。そういう意味では私達より、少し先を行っているわね」

「そうなのか?」

「これが解読結果よ」


 フリーデは翻訳結果が書かれた紙を渡した。


『小惑星帯にこそ神の福音、約束の地があったのだとは、誰が考えようか。

 かつてはソルを巡っていた惑星、ペーメリアの欠片が残された希望だった。

 祖先がストーンサークルを遺していたのだ。

 それこそこの惑星、アルサーニへとつながる次元通路の入り口だった。


 我らは、3つのグループに分かれる事にした。

 生まれ育ったメドリーフに残るものたち。

 原始惑星であるラーリッドに向かうものたち。

 そして新天地たるアルサーニに来た我々である』


 こうなる事は、どこかで想像はしていたよ。

 想像はしていたんだが……

宇宙編(笑)も、もう少しで終わります。

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