もらったお菓子の色は
魔物の駆除は順調です。群れが合流して大きくなる前に個別撃破を繰り返しているというか、そんな感じです。
ゴブリンの怖い所は、とにかく数なのです。そしてそれを指揮する変異体が生まれたら、こうも簡単には事は進まなかったでしょう。
そういう意味では、恐ろしいほどに仕事は捗っているのです。
今のところは、ですけれどね……
「ナギ様、エチィグ商会の会長がお見えになりました」
で、その関係とか資金調達とか。
ええ、間違っていませんよ? 国家予算にも限度と言うものがあるのです。
勘定奉行の千本松さんに言われましたもの。
──アンタ国を潰す気ですか。そんなカネがどこにあるんです。
と、いう事で王国宰相の許可をもらってオークションを開いたんですが…
たしか売りに出したのは傷のほとんど無いオーガの皮とか、魔晶石とか。
そうそう、香木なんてのもありましたかね。
あっという間に目標金額の3倍以上の金額が集まりました。
いやぁ、千本松さんの悔しがる顔は見ものだったというか。
そのお金を、湯水のように使って駐屯地を完成させたのです。
半月後には次のオークションを開く予定ですが…… 開く予定はなかったのですが、色々な所から開催の声が。
それも孝之さんの方から、やってくれないか? と来たものですから……
怖いのは商人さん達の情報網と言うか、行動力と言うか。
気が付いたら駐屯地の中に私の家が出来上がっている始末。
それも、メイド付きの一軒家ですよ、あーた。
こうまでされてしまうと、嫌とは言えないじゃないですか。
「…応接間にお通ししておきましたので、お急ぎください」
ここ数日はお客さんがひっきりなしに来るようになってしまいました。
特にエチィグ商会の会長さんが凄いんです。
この前のオークションでは出品したオーガの3割近くをエチィグ商会が買って行きましたから、邪険にすると今後の商売に差し障るというか。
でもね、今日は半月ぶりにゲットした休日なの。
「いやぁ、お目通りいただき有難うございます」
だからね、なんで来たのよ。今日は居留守を決め込んででも、14時間睡眠を楽しもうと思ってたのに……
この半月というもの、私は夜しか寝ていないんだからね。
「まあまあ、そう邪険になさらずとも。
今日はちょっと珍しい菓子をお持ちしましたので、どうか、ご機嫌を……」
要は商館建設の許可が欲しいらしいけど、私の一存ではちょっと。
たしかに、駐屯地の建設予算の大半は私の狩ったオーガの代金だけどさぁ。
商人さんたちは、何か勘違いしているのかな。
この駐屯地にいる騎士は王国騎士団から引き抜いた人たちで、ここは私の私設軍隊の基地だと思っているらしいのよね。
「公式には騎士団の駐屯地ですが、実質的にはナギ様のモノでは?」
「そういう不穏当な噂は、早々に拭い去ってくれない?」
たしかに、お金は稼ぎましたよ。けっこうな数の木も伐りって、適当に水分も抜いておいたので、大工さんからも喜んでくれたようです。
そろそろ材木が足りなくなるとは聞いていますが……
「お待たせいたしました」
「うむうむ、これでよい。ナギ様、これは鶴印の季節限定品にございます」
「えっ?」
並んででも食べたいお菓子のベスト3に入るという、あれ?
よくもまあ手に入ったものですね。
「はっはっは、商会からのお願いには逆らえる菓子屋なんぞ、そうそうありますまい」
そう言って、目の前に置かれた菓子箱のふたを空けると……
「柿と洋梨をふんだんに使ったモンブランケーキでございます」
「……これが、そう… なの?」
鶴印の季節限定品は、販売数も日当たり20個と言う幻のお菓子なのです。
前に王妃様ズが権力乱用覚悟で手に入れようとした事があるとか。
あの時はエスターも本気で止めたというのですから… あの3人、どんだけ暴走していたんだか。
「左様でございます。ささ、飲み物の用意も出来たようでございますから」
会長さんのところの使用人が、テーブルにお菓子を出して、飲み物を用意してくれましたが… さすがにこのハーブティは…… ってぇ?
「勝手知ったる何とやらと申すでは御座いませんか」
……何かが違うような気がする。
職場でも快適に寝泊まり出来る整備する。
これってある意味では、凄い事なのかも……




