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時間との競争

 クアルガ紛争は終わったと思っていたのに、厄介な事になりました。

 騎士団長(カズマさん)が倒した魔族は、魔物使いだったようなのです。

 そして、引き連れてきた魔物が近辺の森の中に潜んでいる事も……


「たしかに、このあたりは魔物が多いそうですが」

「それは… 誰から聞きました?」

「カズマさんですけれど……」


 騎士団本部に増設された物見やぐらでは、私と王国宰相(たかゆきさん)が駐屯地の様子を眺めながら、雑談をしていたのですが……

 もちろん暖かい恰好をして、舌が焼けるように熱々の甘酒を飲みながら。

 さすがにこの時期になると防寒服は必須ですね。


「……ふむ。彼が多いと感じているなら、間違いないでしょう」


 カズマさんは大雑把と言うか、野生の勘と言うか。

 こういう場合の見立ては、間違った事がないそうで。

 それにしても、たったあれだけの報酬で、これだけのことが出来るとは……


「たった、とは何です。あなたが倒したオーガ。あれ1体でも…」


 そう言いながら、振り返ると……

 彼の視線の先では、一大軍事拠点が生まれつつあります。

 ひっきりなしにやってくる大型の貨物馬車から、大量の資材と無数の職人が吐き出されています。


 そのかいもあって、あっという間にかまぼこ型の兵舎が立ち並び、工作兵の集団があちこちを走り回っています。

 これだけで、だいたいオーガ2体分という所ですかね。

 でも、私が狩ったオーガはまだまだあります。


 たったこれだけの事で、大富豪の仲間入り…… なんてね。


「この程度で良いなら、お手伝いしますよ」

「これだから龍人というのは… つくづく規格外ですね」


 王国宰相たるもの、常にクールで… って、震えてますね。

 それも仕方がないかも知れませんね。


「オーガは難敵ですよ。騎士団の手練れが数人がかりでやっと倒せるのに」


 そう言えばそうでしたね。でもオーガの皮はとにかく頑丈だし、その他の部位にも少なからず需要があるのです。

 かなりズタズタになっているにもかかわらず、良い値段がつくのです。

 それをオークション形式で売りに出したら、かなりの利益が出ました。


 完売したのは当然として、利益もかなりの額になりましたし、もう無いのかという問い合わせがあったくらい。

 面白そうなので、私が倒したのも出品しましたが、これはほとんど無傷でしたからねぇ……


 商人たちが目の色を変えて金額を吊り上げるものだから……

 もう、笑いが止まりませんよ。


「お陰で初期費用を引いても、この駐屯地の3年分の予算が手に入りました」

「潤沢な資金があれば、何でも出来ますねぇ」


 それで出来てしまったんですよ、この駐屯地。

 でも、これは人類にとって、絶対に必要な投資なのです。

 目の前の森林地帯には、数百体もの魔物が潜んでいるのですから。

 そして、季節は冬に向かっています……


 魔物に限らず、冬眠して冬を越す生き物が、冬眠前にする事はみな同じです。


 栄養をその身に溜め込むのです。

 そして、手軽にお腹いっぱいになる事が出来る場所は…… 人里です。

 戦前にも野生動物の被害はありましたが、そこい魔物が加わるとなると……


「冬眠をしないタイプの魔物もいますけれど、ゴブリンやオークなんかの……

 いわゆる人型をした魔物です。それも、中型や小型のものばかり」


 大型の… 全部まとめて巨人クラスとでも言いますかね。

 今までに私が対戦した事があるのはオーガと無頭鬼(アケパロイ)です。

 イズワカ城に残っていた戦闘記録やクラウゼルさんの話では、他にもサイクロプスやトロールが居るようで。


 あとは霜の巨人のように、時々出てくる属性持ち。

 それぞれが拳闘士や武器を使って戦う戦士、魔法使いなどのタイプが確認されています。もちろん対処する方法も変わるのです。


「それに人型をした中型や小型の魔物はね、増えるのが早いのです」

「ほう? それは初耳ですね」


 ネズミ算的に増えるものではないにしても、5年も放置すれば元の数の10倍以上になる事は間違いないでしょう。

 今でも最初の2倍くらいになっているかも。


「なるほどねぇ…… 今回の件が片付いたら何か考えなくてはなりませんね」

「そうですね」


 とにかく今は、森からあふれ出さないようにするのが先決です。

 あとはまあ、戦前の害獣対策と似たような流れで構わないと思いますけどね。


 まあ、上手くやってください。

オーガの皮は頑丈なので馬車の車軸受けから鎧、はたまた建材まで使える範囲が広いのです。でも、倒すのにはそれなりに時間がかかりますし、倒しても傷だらけになっていますから使える部分が少なくて……

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