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ザーラックの災難

 人類という種を説明しようとするならば──

 地球上のあらゆる環境に適応し、高い知性と旺盛な闘争本能の持ち主。

 たぶん、そういった内容に収斂されてゆくのではないだろうか。

 だが、それらは進化の過程で徐々に身に付いていったもの……


「っく…… けっこうキツいな」

「だから重鎧はやめておけと言ったじゃろ。自業自得だの」


 10月も半ばを過ぎると平地でも肌寒さを感じるものだが、深い山の中を進むザーラックは大汗をかいていた。

 原因のひとつは、彼の着込んでいる鎧や武器のせいである。


 戦国時代をモチーフにしたドラマなどでは、大鎧を着込んだ武将が戦場を走り回るシーンがあるけれど、実際にそんな事をしようものなら、とんでもない事になるだろう。というよりも、無理だ。

 鎧と言う装備は、そんな事を許すような軽いものではない。


 火縄銃が登場する前のモノであっても鎧の総重量は20キロ近かったのだ。

 その後の改良・強化によって防御性能は格段に上がっていくが、軽量化には限界がある。

 どちらかと言うと、鎧の重量増加は必然とも言えるだろう。


「仕方がないのう、小休止じゃ」


 ジャアックはヘロヘロになった男たちを見回すと、休憩をとるよう命じた。

 そういう本人の装備は皮鎧とよばれるものだ。防御力はそこそこだが、重さはザーラックの着込んでいるものの半分程度である。

 それでも、重いものは重い……


 ここで想像してほしい。

 もしもスーパーで売っている5キロ入りの米袋を6個から8個、全身にくくり付けたらどうなるだろうか。平地を歩くなら何とかなるかも知れないが、それが勾配のある深い山の中だったら?


 それに加えて、刀をはじめとする武器などの重量も加わるとなれば……


「爺やの言う事に間違いはありませんでしたね」


 けろりとした表情で飲み物を取り出したカロリーナは、改めて辺りを見回した。

 ここはアルーガにつながる街道から数キロほど南側に進んだ山の中だ。

 ジャアックが率いる10名ほどの男女が勾配もきつく、獣道すらない深い山の中を苦労しながら進んできたのには、それなりに理由がある。


「この間に我らは周りを調べておきますかな」

「頼むぞ」


 ここまで道案内をしてきた妖怪たちは、音もなくその場を離れた。

 妖怪たちにとっては、この辺りなは庭のようなものである。そのうえ武器も鎧も装備していない彼らの足取りは軽い。


「……本当にあるんですかね、魔物の巣」

「亀姫殿の調べでは、ここから3キロほど先になるかのぅ」


 それを聞いた男たちは、げんなりした表情になりながら、手にした飲み物をすすっている。ジャアックは休憩のために比較的平坦な場所を選んだが、それでもここはスキー場並みの勾配がある。ただ座っているだけでも神経を使う……


「あと3キロって……」

「ザーラックよ、山岳戦とはこういうものじゃ。3キロなど目と鼻の先だな」

「うへぇ……」


 地べたに座り込み、巨木に背中を預けながら飲み物をすすっていたザーラックは思わず天を振りあおいだ。この行軍を3キロも続け、その先にある魔物の巣を殲滅しなくてはならないのか……


「まあ、作戦自体は20分もあれば終わるじゃろ。擲弾筒の弾薬が無いだけ帰りは楽になるというものよ」

「軽く言ってくれますね……」

「白兵戦もあり得るとか言って、そんな重装備をするからじゃ」


 今回の作戦で、白兵戦は想定していない。

 部隊は魔物の巣の周囲を取り囲むように展開して、擲弾を叩き込むだけだ。

 こいつは爆発しても効果範囲は10メートル四方程度だが……


「討ちもらしの可能性だって有るだろうよ」

「まあ、無いとは言えんじゃろうなあ」


 ザーラックが心配していたのは、魔族がこの攻撃を耐えた時の事である。

 今回の彼らの装備は、擲弾筒だけと言っても良い。

 敵の魔法の射程外から、物量にものを言わせた攻撃をするだけである。

 それはその後に反撃を受けても対処できないという事を意味している。


「でもな、ザーラックよ。その可能性はほとんど無いぞ」


 魔物使いの標準装備は魔力強化したローブだ。事前偵察で、皮鎧を着ている事はまれである。そして彼らはテント暮らしをしている事も分かっている。

 そこに数分間で数百発もの擲弾を叩き込もうというのだ。

 オーバーキルもいいところである……


 結果から言えば、この作戦は大成功。

 が、しかし味方の損害もゼロではなかった。


 経験者の意見は、とても貴重なのだ……

スーパーでお米を買ってきましたが。

車から台所までの僅かな距離がががが……

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