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冒険を始める前に

 せっかく惑星に着陸したのだから、味気ない宇宙船のキャビンを出て地上でテント暮らしをするのも良いものだ。

 だから、ハンスがビールマグを片手に言い出した事は、まあ……

 いつかは言い出すだろうと思っていた事だ。


「俺様は地上に基地を作った方が良いと思うぜ」

「そうですね。低重力とはいえ、暮らせない事はありませんよ」


 フリーデもか。彼女はエルフ族だからな。森に近いところで暮らしたいだろう。

 それは良いのだが…… 重力は0.45Gしかないんだ。

 この前のような事故が怖いんだけどな。


「オーデルちゃんに質問。船内重力は1Gなのは何故でしょう?」

「ちゃん付けは止めてくれ。 ……船内重力を地球並みにしているのは重力発生装置を使っているからで… そうか、そういう事か!」

「ご名答。居住区に重力発生装置を組み込んでおけばいいでしょ?」


「そう言えばそうか。だとすれば、当座決めなければならないのは建物のデザインという事になるな」

「それについては俺様がデータを用意しておいたぜ」


 200メートル級宇宙船用の着陸床を4つか……

 着陸床を作るのに必要なのは、一辺が250メートルの正方形だな。

 こいつを中央指令室と通路でつなぐのか。

 サイコロの5の目のように各施設を配置するのは合理的な考え方だ。


「着陸床だが… 大は小を兼ねるというやつか?」

「そういうこった」


 そういうとハンスはニヤリと笑った。


 我々の乗る宇宙船はサイズこそ違うものの、いくつもの共通点がある。

 南極部のエアロックもそのひとつ。

 着陸床の中心にあるサービス・モジュールも同じものが使えるのだ。

 あとは宇宙船の大きさに合わせて着陸床の面積を広げてゆけばいい。


「まるで月面基地の旧区画だな」

「あれがベストの配置だと思うの。あの基地の建設はイングヴォロン達が知恵を絞って作り上げたものですからね」


 初期の月面基地の建物はすべて地上に建設したんだったな。

 周辺にあった球形の居住区を着陸床に置き換えたのか。その分だけ中央指令室が少し大きくなるが、特に問題は無いはず。


 しかし、だな。


「基地を建設しようにも資材や人員はどうする?」


 最大の問題は、この事実だ。


「資材は… 探せばいいじゃねぇか」

「無いモノは作れ。宇宙軍の伝統でしょう? それにね……」


 ワイングラスの中身を優雅に飲み干したフリーデはにっこりと笑った。

 ハンスはマグの中身を空にすると、サーバーから新しいビールを注ぎながら、こちらに視線を送っている。どう見ても楽しんでるな。


「最初はただの家で良いじゃない」

「俺様はヤポネス様式のヤシキって奴を建ててみたいと思ってたんだ」


 戻ってきたハンスは焚き火の前にどっかりと腰を下ろすと、思い立ったが吉日とばかりにタブレット端末を取り出した。

 そこまで意志が固いのなら、やってみるとしよう。


「まずこの辺りの地図を作ろう。資源の調査をしないと話が進まねえからな」

「私は森の調査を始める事にするわ。広場の方は終わっているものね」

「この広場については、ある程度推測できる事があるよ」


 だんだん作業リストが長くなっていく。それに応じて分析結果も。

 あくまでもコンピューターの結果は推論の域を出ないから、最終的には人間が確認しなければならないのだが、極端な違いはないだろう。


 あくまでも地球の古代遺跡と同じ基準で考えるなら、ここにあったのは首都クラスの都市という事になる。石碑は都市の中心に据えられているからだ。

 だが、建物の痕跡どころか道路の跡すら残っていない。

 ここに遺されているのは未知の物質で舗装された平坦な広場だけなのだ。


 わいわいと盛り上がっている二人は気が付いていないようだが、もうひとつ気になる事がある。

 それは気象データだ。

 地球とは重力が違うし、大気層の厚さも違う。


 しかし物理学の法則というものは大きく変わるものではない。

 つまり、ある程度の気象予測が出来る(・・・・・・・・)という事だ。


「盛り上がっている所を悪いんだが」

「なあに?」「他にも問題があんのか?」


 私は天気図と軌道上に残した衛星からの画像を表示しながら2人に言った。


「明日の午後からは雨が降りそうだ。観測機器を設置したら一時撤収しよう」

最近の住宅といえばプレハブ住宅でしょうか。

プレハブというのはプレファブリックの略だそうですが、あっという間に完成しますね。

2階建ての住宅でも、基礎工事さえ終わっていれば数時間で完成するそうです。

内装工事にはもう少し時間がかかるようですけれど。

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