猫神、成敗される
さすがに精神世界でのあれこれは大変だ。
俺の姿は直径は50センチくらいの澄んだ乳白色をした球体だ。
どうやら宙に浮いているのがデフォのようだが、こういう局面では便利だ。
全速で直進して直角に曲がるとか、方向転換は自由自在に出来るからな。
おかげで、ネコミミ幼女の攻撃はすべて、当たる寸前で回避する事が出来る。
しかし反撃手段が体当たりだけというのも寂しいな。
ネコミミ幼女が、見かけ通りの体型だと分かっただけでも良しとするか。
ふひひ…
「ええい、成仏してしまえい!」
ひゅんっ!
うおお、今のはヤバかったかも知れん。
爪の先がかすったぞ!
怪我でもしたらどーすんだ!
「こんのっ、でれすけがぁ!」
どかかかか!
うげぇ、こっ・・・ これはキツい。
腰の入っていない連打だが、同じような所に喰らっちまった。
もう1回くらったら、ちょっとヤバいかも知れん。
だが、捨てる神あれば拾う神あり、とはよく言ったものだ。
しゃらーん……
部屋の残骸でどたばたと暴れまわる中、そんな音が聞こえたような気がする。
ネコミミ幼女の背後で、ゆらりと風景が歪んだ。
……かと思うと、カメラのピントが合うようにひとつの人影が浮かび上がった。
『何をやってるんですかっ!』
もう一柱の神は出現すると同時に、ネコミミ幼女を一喝したのだ。
『そろそろ魂魄が目覚めたかと思って、様子を見に来たのですが……』
その神は部屋を一瞬で元通りにすると、ネコミミ幼女に説教を垂れ始めた。
『ちょっと目を離したすきに喧嘩はするわ、部屋を滅茶苦茶にするわ……
何を考えているのです?』
「妾は無実じゃ。この全身つるぺたが……」』
『ごじゃっぺやってんじゃねぇかんな! しみじみやれやぁ!』
ごがんっ!
あの拳の握り方だと、かなり痛そうだな。
頭のてっぺんにまともに入ったぞ。
「ぎゃあああ!」
雷撃を食らったのか。骨格が透けて見えるなんて、まるで漫画みたいだな。
ぷはははは、もう一発か。と・っ・て・も、かわいそうだなあ。
……笑っている場合でもないか。ここまでの情報を整理しておこう。
俺の魂魄を修復したのは、ヘルマという神だという事だ。全データの4割近くを欠損したファイルは、普通なら復元不可能と思っていい。
こいつは文字通りに『神業』だな。
そして私は、カクリヨという世界で目覚めたわけだが。
あそこで焦げてるヤツの説明だと……
現状では、元の世界には戻れない。
『そなたは次元通路の移動中に通路崩壊に巻き込まれ、消滅しかかったのじゃ。
魂魄だけでも助かっただけ運が良かったのう』
……だったかな、たしか。
その上で選択肢がふたつあると言っていた。
ひとつは輪廻の輪に戻る。まあ、成仏するという事だな。死亡した以上、そうするのが普通のような気がするんだが。その普通なら成仏する筈の魂魄を、手間暇かけて修復したのには、何か理由がありそうだ。
まあいいか、もう一つの選択肢だ。
もうひとつの選択肢は第3惑星・地球に行くことだ。
とはいえ、俺がいた本来の時間とは別の時代になるらしい。
時空座標をそこまで精密に計算している余裕が無かったためなんだが。
ランキング上位の神とは言え、出来ない事もあるんだな。
はてさて、どうするか。
猫神様はごじゃっぺ。(笑)




