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誤解されても不思議はない

 収穫祭が終わってしまえば、今年も山を越えたと言えるかな。

 これからは冬に向けて保存食糧を貯えていくのが一番の仕事と言えるだろう。

 幸いな事に、魔族はこの時期には動きが鈍るのだ。

 魔物については、いつもの如しだが。


 いつもと違った事と言えば……


 来客用のテーブルセットで、ひとりの女性が寛いでいる事か。

 ここはドゥーラ城でも一番奥まった場所で、国王の執務室と言う所なんだが。

 なぜあなたが、寛いでいるのかが理解できんませんな。

 それ以前に、どうやってこの部屋まで来ましたかな?


「普通に港から来たけど、なにか?」

「なにか? じゃ、ありませんよ! いくらナギ殿がばけ… 活動的とはいえ」


 さすがに孝之もこれは問題だと思うだろう?


 港に潜水艦が接岸したという報告を受けているが、それは昨日の話だ。

 ドゥーラの夜を楽しんでも、それはそれと言うものだと思っていたのだ。

 だが、どうやって城内に入り込んだ? 門番からは何も聞いていないぞ。

 それに…だ。本丸御殿はドゥーラ王国の中枢部とされている場所なのだが。


「もちろん歩いてですよ。私を何だと思ってるんです」


 ……なん、だと?

 普通に歩いてこの部屋まで来たというのか。

 さすがにこれには孝之も頭を抱えてしまったか。


「近衛騎士はいったい何をしていたと……」

「いやぁ、美少女と言うのは得ですねぇ」


 ナギはへらっと笑いながら、言い切った。

 でも、こいつも随分とイイ性格をしているじゃないか。というよりも、自身の使い方を心得ているというべきなのだろう。



 彼女の容姿は『絶世の…』とまではいかないが、忖度なしに整っている部類だと思うし、このあたりは多分、奥も認めざるを得まい。

 そうでなくともヘルマ神の分身のようなものだからな……


「警備の騎士にはね、最近それなりにお付き合いを… って言っただけで、皆さんとびっきりの笑顔で城内をくまなく案内してくれましたよ?」

「それは、いつごろの話なのです?」


 お陰で城内のマッピングはほとんど完璧だと?

 聞けば、それは昨夜の話だと言うのだが……


「だいたい8時から9時ころまで… でしたかね」


 さらりと言ってくれる。

 その時間なら…… そういう物言いをされては下手に突っ込めないか。

 食事を終えて3人の奥とまったりしていた時間帯だし、何よりも彼らとは出来ないからな。


 そういう事情は誰もが知っている。だから、若い女性が2の丸を独りで歩いていても、警備の近衛騎士に見とがめられる事はあるまい。それに、そういう事情だと思える人物に対しては、城内の奥深くに入れば入るほど、チェックは甘くならざるを得ないものだ。


「それに途中までは古城さんが一緒だったし」

「なんだとぉ?」


 つまり古城上級技官を身分証明書にして城内に入り込んだと言う訳か。

 それも城内の重要区画にまで同行したとあれば、それは通すだろうな。

 だが待てよ。


「そこまでは分かりました。では、昨夜はどこに?

 本丸御殿に客室は多くないし、それなりに報告があって然るべきだと思うが」


「ふんふんふ~ん♪」


 ……って、聞けよ!

 何も無いような空間から何かを取り出しては、並べているようだが。

 今度は大きな鍋と、食器… だとぉ?


「魔術的には防御がされているから、空間転移とかは使えないようになっているけど、私には関係なかったみたいねぇ」


 つまり、何らかの方法で魔法防御を無効にした、と?


「んんんんん、ちょぉっと違うかな」


 空間転移をした事は否定しないのだな?

 本丸御殿のマッピングが終わっているなら、城内に潜む事もなく空間転移でどこにでも行ける…… そういう事になりかねませんが。


「そう言うこと。転移ポイントを指定してくれると助かるかな」

「古代語魔法を使えば、城内の魔法防御など紙のようなもの… とでも言いたげですな」


 孝之はそう言うが、たしかにそうなるな。

 古代語魔法の使い手には何を言っても無駄だろう。


 あの魔法は、何でもアリなのだから。

時と所は収穫祭が終わって1週間ほど後の話。

イズワカで起きた事は城内に衝撃を撒き散らしましたが、それも収まってきた頃のお話で……

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