戦争は民族的な文化ですか
戦争と言う社会現象については、色々と研究されています。
なぜ戦争をするのか。
どうして戦争が起きるのか。
戦争をすることの意義。
数え上げればキリがありません。
ただひとつ言える事は、どの研究書も共通して言えることがあるということ。
はじめに戦争ありき。
つまりどの研究者も戦争をする事を前提にしているのです。そして、戦争をして大量殺戮と略奪することを正当化するための言い訳に終始している始末。
特に狩猟民族には、その傾向が顕著に表れていますね。
破壊と暴力が彼らの文化なのかも知れません。
「まあ、そういう事は暇になってからゆっくりやって頂戴ねぇ」
「妾もそう思うのじゃ」
いいじゃないですか、ひとときの現実逃避と言うやつです。
ちなみに、ここは亀ヶ城の天守閣の一室です。
部屋の真ん中に置かれた大きなテーブルに広げられた地図といい、サイドテーブルに置かれたおにぎりの山といい。
「戦争の準備が進んでいる事は分かっていますとも」
「それならよい」
とにかく今は情報の蒐集と整理が必要です。
他にも色々とする事が、こんもりと山になっているのです。
とりあえずメイド部隊は使われなくなった軍事施設に誘導して… 立て籠ってもらわないと。こっちは誘導役の座敷わらしが上手に立ち回ったのでしょう。
奥座敷に残された1枚の短冊には『ちょろい相手だった』と書かれていました。
あとで小豆飯を持って行ってあげないと。
お菓子も添えておきましょうかね。
この行動は、敵対勢力のメイド部隊に強力な拠点を提供したようにも見えます。
亀姫様も最初は「何をバカな事を!」と言っていたくらいですからね。
私の目論見を見抜いたのは、あの場では花音だけでしたか。
ああ、そうそう。この作戦が始まる前に、神様ズは席を外してもらいました。
酒肴を渡しておいたので、どこかで宴会でもやっているのでしょう。
彼らが今回の件にタッチ出来ないのは、ヘルマから聞いて知っています。
その原因が何なのかは別として、誰が何をやらかしたのかは本人の口からも明らかにされていたりしますから……
「何にせよ、これであ奴らの居場所をはっきりさせたのじゃな?」
そうですよ、亀姫様。
オーガと対等に渡り合えるようなメイドが100人もいるのです。
そんなのが分散して森の中に潜んでゲリラ戦でも仕掛けられたら、とても厄介な事になりますよ?
「それくらいなら、あの基地を見つけてもらった方が楽なのよねぇ」
「花音の言う通りなのです。それも、偶然に… ね」
座敷わらしの姿チラ見せは、そういう事なのです。
森の中で小さな子供の姿を見つけたら、誰だって放置はできないでしょう。
特にメイドは、人のお世話をしたがるものなのです。
プログラムされているとかではなく、本能的なモノのようですね。
「烏天狗さんの偵察では軍用グライダーも全部、むこうに移動したそうです」
「ふっふっふ。これで貴重な時間が稼げたわ」
拠点の整備には、そこそこ時間がかかるでしょう。
あの基地は規模の大きなものではありませんが、建物は頑丈に出来ているのです。
ドーム状の建物の壁の厚さは最低でも2メートルはありますし、魔術的な防御もされているようですからね。
「立てこもられたら、かなり厄介だと思わなかったの?」
ゲリラ戦を仕掛けられたら、怪我人が増えるだけですよ。
それに、宇宙船の構造材より丈夫なものだとは思えませんけれどねぇ。
花音、あなただけでもあの程度の基地なら……
「スキンスーツの性能だけじゃ無理ね。私はナギと違って、生身では光線なんか出せないのよぉ?」
「それもそうでしたね。てへ」
こればかりは種族の特性でしょうね。
大多数の地球人には魔法を使うための遺伝的な… 因子がありません。正確にはヒト族には、ですね。
そういう意味でエルフ族やドワーフ族には一種の先祖返りが起きているのかも。
「とにかく、今回の侵攻の目的をはっきりさせておきたいですね」
それについては亀姫様が手を打ってくれたそうです。
メイド部隊の指揮官宛てに、お手紙を書いてくれたそうです。
「飛脚に扮しているとはいえ、奴らに貉をどうにかできるとは思えぬぞえ」
そりゃあ、そうですよ。
特に今回選抜されたフア君なんか、忍者になれるんじゃないかしら。
……だってね。
彼に狙われて無事だったおやつは……
これで亀姫様にも大義名分ができたようで。




