嶺衣奈ちゃんと節分祭
年が開けたと思ったら、いつの間にか立春です。
そういえば、お給料もらったな~ とか思っていたのですが、乾物屋への支払いも凄い事になっていました。
「……なぜ猫神社に煮干しを奉納する事になったのでしょうね」
答えは簡単です。
猫神と道祖神は『転移してきた何者か』の行方を探るべく、猫を使っているようなのです。報酬は煮干し3匹ですが、どれだけの猫を動員したものやら。
「嶺衣奈、いつも済まないにゃ」
「私からも感謝。おかげで順調に捜索が進んでいる」
道祖神も呑気なものですね。
今まで見つからなかったという事は、探す方法が間違っているんじゃないかしら。
煮干しの奉納は私だけではないけれど、彼等の目的と、その結果を知っている私は色々と溜め込んでしまっています。
と、いうわけで。
今年も節分の日がやってきました。
節分は四季折々の季節の分かれ目とされる日の事ですが、春の節分は特別の意味を持っています。春は寒さがやわらぎ、野に山に草花が芽生えるのですから。
今年の立春は2月3日です。節分は前日になります。
節分と言えば豆まきです。
病気とか災害は鬼がもたらすので、それを追い払おうというものですね。
また、散供といって、穀物をばらまくことでお祓いやお清めをする事があります。多分、そのあたりが起源なのかもしれませんね。
とにかく、今日の夕方は豆まきです。
豆まきですが、まいた豆がどこかに当たっても仕方のない事です。
逆に言えば、まいたモノが猫神にぶつかっても、それはそれなわけで。
はい、察しの良い方はお分かりですね。
炒った大豆が主役ですが、豆や穀類なら何を投げても良いわけです。
たとえばナタマメとかハナマメなどです。けっこう大きいですよ。
とことん乾燥させましたから、かなり硬くなっています。
そういえば、イビム帝国では青いソラマメというのがありましたね。
小銃や拳銃で使われた弾の事です。
彼等は大陸の東側に拠点を作り、先住民族を虐殺しつつ西側に侵攻しました。
皮膚の色が白くないから、大量虐殺をしても犯罪にはならないそうです。
さすがに危険すぎるので使いませんよ。鉛は色々な意味で厄介な金属ですから。
でもね、ソバの実なんかはとがった所もあるし、固いし。
何よりもも穀類で、それなりにストックもありますからね。
ここ数日というもの、暇を見つけては専用のランチャーも作り上げました。
いちおう、形式の違うランチャーを2種類です。
ひとつは長い筒の片側にカートリッジを仕込んで、反対側から飛ばすというもの。
この場合、筒は発射した物が変な所に飛ばないように制御するためのモノです。
これでナタマメとかハナマメを飛ばしてみたいと思います。
カートリッジは文字通りの使い捨てですが、魔晶石の粉末にエアハンマーの魔法を封じてみました。圧縮した空気の塊を敵にぶつける魔法の応用です。
エスター様に相談したら、カートリッジをいくつか作ってくれましたよ。
私?
無理ですよ、そんな複雑な術式。組めるはずがないじゃないですか。
ランチャーは5発も撃てば壊れてしまいますが、今回はそれで十分でしょう。
キャニスター弾? 何ですか、それ。
もうひとつの魔道具は長い筒を発射台として使います。
筒の端に取り付けた入れ物の中に豆を入れておいて、的に当たった途端に入れ物が破裂して中身をあたりに撒き散らすというものです。
パンツァーファウスト?
さっきから、いったい何を言ってるんですか、もう。
どっちも武器じゃないですか。
これは大量の豆を勢いよく飛ばすための使い捨て魔道具です。
明日は節分の日で、豆まきをする日ですよ。
初速ですか? ああ、大してスピードは出ませんよ。
多分、50間/秒(1間は1.8メートル)くらいのものですが何か?
これで、明日の豆まきの用意は万全です。
今年も猫神たちが鬼の役を引き受けてくれるのは毎年の事ですからね。
遠慮なく腹いっぱい喰らうがよいわ。
「おい、愚妹。頼まれたものを買ってきたぞ」
「ありがと、お兄ちゃん」
愚兄に頼んで、最後の物資も確保する事が出来ました。
……それなりの量の納豆を、ね。
一般的な空気銃の弾の場合は180メートル/秒程度だそうです。
ランチャーの性能は、サバイバルゲーム用のトイガンのデータを参考にしました。
ちなみに、トイガンの一部も改正銃刀法では準空気銃に分類されるそうです。
普段の生活には全く関係のない無駄知識ですね(笑)




