家老さん、成敗される
ソルナックさんは、アンドゥイユの串焼きに興味があるようです。
ひょいと手にとると、しげしげと眺めた。
「これは腸詰めか?」
「自家製ですよ。運よくイノブタを捕まえる事が出来ましたから」
「自分で解体したのか、大変だっただろう」
「それはもう、苦労しました」
たったそれだけの会話の間に2本のアンドゥイユが消えてなくなりました。
けっこう太いんですけどね、それ。
アンドゥイユというのは、ソーセージの一種です。
一般的なソーセージはひき肉や刻み肉を使いますが、これは内臓を使います。
内臓肉の料理はヘルシーで美味しいのですが、手間を惜しまずに丁寧に下処理をしなければなりません。けっこう大変だったんですよ。
ちなみにモズマの里にも内蔵料理はありますが、煮物か鍋物だそうです。
「それにしても、こいつは美味いな」
「で? 他に何かおっしゃりたい事はありませんかね?」
「ああ、そう言えばな……」
捜索隊が里の北側に向かったのは、そこが最後の捜索範囲だったからだ。
草ぼうぼうの荒地を抜けると、帰らずの森が広がっている。
そこは禁断の地だ。足を踏み入れれば生きて還る事はない。
一応、捜索をする事にしたのだが……
「森の入り口で天幕が見つかってね。 …周囲に戦闘の痕跡はなかったそうだ」
長い間放置されていたこともあり、動物たちに荒らされていたが、そこには行方不明になった若者たちの持ち物が残されていたそうです。拠点となるキャンプをがら空きにして森に入ったわけですか。
「キャンプをがら空きにするというのは…… どうなんでしょうね」
「無しだな。常識的に考えて」
「捜索隊は森の中に入ったんですか?」
「まさか。帰らずの森だぞ。そんな命令は出せないよ。無責任極まりない」
無責任極まりない… ですか。
たしかに彼らが行方不明になってから、かなり時間が経っています。
運が良ければ、森に入った捜索隊は遺品を回収する事が出来るかも知れない。
でも、現実的に考えれば、未帰還者のリストを長くするだけでしょう。
「つまりは、そういう事だ」
無謀な若者が大した装備も持たずに帰らずの森に挑んだ。
問題は旧家の次期当主だったという事かしら。
「それで連中の『遺族』がゴネてな」
要は遺族の皆さんが、若者の暴走を止めなかったソルナックさん達に難癖をつけていると、そういう訳ですか。
……お気の毒さまです。
「捜索願を出さないで自分たちで捜索隊を出せばよかったのに」
「隠居したとはいえ長老衆とそのシンパだからね。そのくらいは出来た筈だよ。
それなのに捜索願を出した。ゴネた連中の腹はバレバレだな」
あああああ。最後のアンドゥイユががががが……
私の夕ご飯ががががが……
思いっきり完食なさってくださりやがりましたよ、こんちくしょう。
「ふう、久々に肉を堪能したって感じがするよ」
「そりゃぁ、ようございましたねぇ?」
「……ひょっとして、お前の夕食だったのか?」
「今ごろ気が付きやがりましたか」
私は、ゆっくりと立ち上がるとポンチョを脱いで……
ポンチョの下は、当然の事ながら銀色のスキンスーツです。
その異様な雰囲気を感じ取ったのか、ソルナックは血の気の引いた表情で叫んだ。
「ま、待て! 何をする気だ?」
「決まっているでしょう」
あなたが食べ尽したアンドゥイユは失敗に失敗を重ねて、やっと作り上げた成功の味だったんですよ。それを、あっさり食い尽してくださりやがりましたね。
「話せばわかる!」
「問答無用!」
十字に組んだ腕からは、光の奔流が……
どんっ!
光線が当たった場所は大爆発を起こしました。
彼は間一髪で光線を避けましたか… おっと、簡単には逃がしませんよ?
食べ物の恨みは、マリアナ海溝よりも深いのです。
美味しく出来た料理を奪うようなヤツは成敗されて当然だと思うのです。




