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メイドは湖岸でひとやすみ

 私の個体名はケヤキ。

 隣でランチボックスの中身をぱくついているのが、リッカ。

 とりあえず出来る事は、目の前に広がるのはオノール湖の風景を愛でつつお弁当を食べることくらいですが……


「おニューの機体が壊れてしまいました……」

「さすがにメイド長(ジーラ)に文句を言われるでしょうね」


 背後を振り返ると、エリントシーカー2号機が地面にめり込んでいます。

 より正確にはエリントシーカーだったものが、と言うべきでしょう。

 機体のあちこちに穴も開いていますし、背中に背負った大きなレドームも姿を消しています。


 魔導機関が爆発しなかったのが不思議なくらいですよ。


「……はあ」

「ため息をつくと、幸せも逃げてしまうのです」


 あの日に起きた時空震の震源がオバラムの上空だという事をを割り出したエスター様は、偵察機を出すことにしたのよ。

 今までの観測では時空震で開いたはずの次元通路の先は、海でも空でもなかったようだ。かと言って、地形の入れ替わりがあった訳でもない。


 一番心配していたのは魔族の増援だけど、そっちは大丈夫だったみたい。

 でも、少なくとも開閉式ドーム球場くらいの何かが出現しているはず。

 いまのところ、見つかっていないけど。


「そうは言うけどねぇ、まさか味方から撃たれるとは思わなかったし」


 オバラムの偵察を終えた私たちは、イズワカを掠めて海に向かうコースを飛行中でした。東の古都イズワカには大きなお城があります。

 市街地は廃墟になっていますが、あの天守閣は良い目印になるのです。


「今回はイズワカ城を一周してから海に出ましょうか」

「それは良いけど、嫌な予感がするのです。私の予感はよく当たるのですよ」


 いつもは、のほほんとしているリッカの声が心なしか強張っているような気がしたのですが…… ここに魔族はいない筈です。

 特に心配するようなことは何もないはず……


 なぜなら、モダテ武士団が頑張ってくれているお陰で、イズワカは軍事的な空白地帯というか、緩衝地帯になったとというか。

 とにかく魔族はいない筈なのです。


「ねえケヤキ、妙な電波を拾ったのです」

「電波だって?」


 センサーからのデーターを回してもらったけど……

 周波数は8ギガヘルツ… 一般的な軍用通信の周波数帯ですね。

 暗号化されているようで、内容は分かりません。

 どうやらデジタル信号のようですけれど……


「おかしいですねぇ。このあたりには人間も住んでいないのです」

「土地神と妖怪はいると思うけど?」

「彼らが軍用通信機を使う事はないのです。それ以前にイズワカ城は10年ちかくも放置されているのです」


 言われてみれば、おかしいですね。

 どんな機械でも手入れをしないまま10年も放置すれば、故障していてもおかしくはないのですから。仮に生きていたとしても……


「別の周波帯を感知! ケヤキ、これは……」

「周波数は…… なんだか火器管制レーダーっぽいのです」


 たしかにそうかも知 ……ちょっと待って?


「火器管制レーダー、ですって?」

「それっぽいのですよ」


 がんがんがん!


「なあぁあ?」


 コクピットの中に、何かで殴りつけられたような幾度も鈍い音が響き渡った。

 しばらくすると、大きな衝撃があって機体が大きく傾いて……


「ちっ、地上からの攻撃なのです。対空射撃なのです」

「わわわ、落ちるぶつかる!」


 リッカが何やら叫んでいますが、私はそれどころではありません。

 反重力エンジンを全開に!

 機首の姿勢制御バーニアを使って機首を上に向けて……


 がががりがり……


 機体の一部が爆発、レーダードームも脱落したようですが……

 地面を削りながらも何とか上空に舞い戻ると、そのまま超加速でその場を離れたのですが、オノール湖の近くまで来たところで燃料切れ。


 私たちは、運よく寒中水泳だけはしなくて済みましたけど。

 エリントシーカーは、地面とキスする破目に。

 まあ、ぼやいていても仕方がありません。

 今は出来る事をするだけです。


 ところで、リッカ。

 私のランチボックスはどこにあるの?

現在の工業製品と違って、昭和時代のそれは品質レベルが全然違うのです。

コロナ前に、昭和2年に製造された工作機械が実際に製造現場で活躍しているのを見た憶えがあります。

イズワカ城の対空陣地も、そういう事なのかも知れませんね。

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