真夜中に作るもの
ごごごごごご……
洞窟の入り口にあたる部分の岩壁が、地下に沈み込んでいきます。
ぽっかりと口を開いた先に見えるのは、新月の夜空です。
ふふふふふ。やっちまいましたよ、私。
これは、いわゆるひとつの秘密基地、というヤツです。
ここから輸送用のドローンを出発させようとしているのです。
そして、ドローンの出し入れを簡単にするために、岩壁にも細工をしたわけで。
どこかで見たような気がする、ですか?
細かい事は良いのです。気にしてはいけません。
夜しか眠れなくなったらどうするんですか、もう。
洞窟の中では、軽トラックの荷台に乗るくらいのドローンが待機しています。
輸送機として使えればいいので、機体は骨組みだけです。
…嘘です。ごめんなさい。
ストックしてあった金属資源は岩壁の工事と格納庫の工事に使ったら、材料が足りなくなって機体の外装を作れなくなってしまいました。
「それでも、やり遂げたのですから、私はえらい?」
そうとでも言わなければ、やってられません。
とっとと、ドラ息子の装備を運び出してしまいましょう。
人が通らなくて、里からあまり離れていなくて、洞窟から離れているところ。
里の北側と西側の方向は、原始林が広がっています。
そこなら問題がなさそうです。
「……しょっ… と」
野営地もどきも作りました。天幕は張りましたし、資材も入れてあります。
焚き火の跡を作っておくことも忘れません。
アーロイスの食べ残しは、適当に放り出しておいても良いでしょう。
そろそろ夜明けですね。とっとと帰りましょう。
洞窟に帰ったら岩壁を元に戻して。輸送機はリサイクルです。
「……なんで、そんなに面倒な事をするノ?」
「それはね……」
あのドラ息子たちは、カロリーナの護衛に混ざり込んで里を出たのは間違いありません。要所要所で点呼を取っていますけれど、担当者は買収されていました。
水神様の祠には確実にいましたから、姿をくらませたのは、そのあとでしょう。
「ここまでは、いいかしら?」
「なぎとあいつらは会った事がないというコト?」」
「そうよ。だってね…」
私は里長の屋敷から一歩も出なかったし、どこかに転移もしていません。
ちゃんと証人はいるのですから。天井裏とか、屋敷の要所とかに、ね。
水神様から話があったとはいえ、それだけで初対面のヒト族を全面的に信用する筈がありません。監視は付けるでしょう。常識的に考えて。
「そうなノ?」
「残念ですが、人間関係を作り上げるというのは、こういうものなのですよ」
彼女には里長として、里に住むすべての人に対して責任があるのです。
いくら水神様からとはいえ、ハイそうですか、というのは無責任です。
それが、あの試合であり、滞在期間だったのだと思うのです。
「ナカーマ認定されたノ?」
「そうね、里に行ったときの居場所が決まっただけ、なんだけど」
「なぎ、なぎ、いなくなっちゃうノ?」
それはあり得ませんよ。
私の根拠地は、あくまでも亜空間要塞なのですから。
だから、そんな悲しそうにしないでちょうだい。
「だから、心配しなくてもいいのよ」」
「うん、わかっタ」
現金なものですね。
最近はアーロイスの感情が少しだけ分かるようになってきました。
「そして、里を出たドラ息子たちは……」
何を思ったのか知りませんが、彼らは洞窟には『来なかった』のです。
あんな所に拠点を作って、何をしたかったのでしょうね。
放っておけば、誰かが見つけてくれるでしょう。
色々なものが夜中に作られていくものです。
イロイロと、ね?




