公務員とヤバい遺留品
番外編(用語解説的なもの)を18時に投稿します。
本編とは関係がありませんが、ネタバレがあるかも。
私は古城嶺衣奈。
ヒト族が多いドゥーラ王宮に勤める数少ないエルフ族で、上級技官で……
気が付いたらエスター様のお気に入りというポジションに収まってる。
エスター様はハイエルフ。
私たちエルフ族にとって、ハイエルフは神にも等しい存在だ。
私のどこを気に入ってくれたのかは分からないけど、お屋敷には私専用の居室が用意されていたりする。
破格の待遇もいいところだと思うんだけど。
「嶺衣奈ちゃんには、それだけの実績があるという事なのよ」
「そうですかねぇ……」
王宮から送られてきた勲章を手渡しながらエスター様は言ってくれたけど……
実は登城の話は、急きょキャンセルになったんですよ。
それを聞いたメイド長は、とても残念がっていましたが……
私は『よかった助かった…』と思ってしまったのは秘密にしておいた方が良さそうです。
「実はそれどころの話ではなくなってしまったのよね」
アノウジの戦場跡で見つかった、とってもヤバいモノ。
より正しくは、魔族が残した一軒の小屋と、中にあった遺留品だけど……
「魔族が使っていた小屋もそうだけど、問題は遺留品なのよ」
「武器や防具の類いとか食糧だと聞いていますけど、他にもまだ何か?」
小屋の奥に空間曲線がおかしくなっている場所が見つかったけど、そのあたりはデーターを集めている最中だ。最新の精密機器が使えないので、原始的な方法に頼るしかないので時間がかかりそう。
でも重力場の検証や光速度の測定だって、最新の電子機器を使ったわけではないし、電卓が使えるだけでもまだマシだと思うしかないのよね。
「空間の歪曲場らしいけど、あなたの仮説が実証されたかも知れないわ」
論文の内容は100年近く前に発表された方程式の特殊解のひとつだ。
国際科学技術庁で『レーナの仮説』として認められちゃったから、もう大変。
妙な宗教家やマスコミのストーキングでひどい目に会いかけたけど…
まあいいか、過ぎた事だし。
とにかく、魔族の小屋にある空間の歪みは、おそらく空間の一部を高次空間にはみ出させるとか、そんな類いのものだと思うのよね。
その場合は方程式の解がふたつある。
どちらも別の空間への通り道になるけど、それが別の空間に繋がる廊下のようなものが出来るか、行き止まりの廊下が出来るかのどちらかだ。
「そこまでは想像できるんですけどね」
「別の空間に部屋か何かがあって、出入り口が空間の歪みとして見えるのね?」
「たぶん、そういうイメージかなぁ… って思いますけどね」
猫神たちが使う空間転移と似たようなもの…… 違うか。
空間転移で出来る廊下っぽい何かを固定したような…… ああああ、考えすぎて耳から煙が出てきそうだぁ……
「まあ、ゆっくり考えなさい」
「はい……」
ををを!? これはチーズタルトじゃないですか。
それも夏みかんをたっぷり使った逸品!
不思議なもので、夏みかんは早めに収穫すると酸味が強いのですが、この時期まで収穫しないでおくと、とっても甘くて美味しくなるのです。
「セバスが種から育てた1本だそうよ」
「それはまた貴重な……」
何でも出来ますね、あのスーパー執事。
彼の場合は、出来ない事を探す事すら難しいかも。
「お客様がおみえになりましたが、お通ししてもよろしいでしょうか」
「構わなくてよ。お客様をお通ししてくださる?」
そのセバスが、来客を告げに来た。
王国宰相は専門家を派遣すると言っていたけど、その人かな?
鉱物の専門家だとしか聞いていないけど……
「すーぽーこっ」
「ほえ…… 琴ちゃん?」
「相変わらずテンション低いねぇ。まだ体温上がりきってないの?」
「あたしゃカエルか何かかいっ!」
やってきたのは、吉沢 琴音。
漆黒のストレートロングに白い肌。いつ見てもお人形さんのようなヒト族だ。
彼女とは中学以来の腐れ縁という事になるだろうか。
琴音が派遣されてきたのは、魔族の遺留品を調査をするため。
複雑な文様の刻まれた台座に安置されていたそれは、ピンポン玉くらいの大きさの、内側から鈍い光を放っている謎の鉱石。
調べなくとも、この鉱石がエネルギーを貯えているのがわかる。
それが、かなりの量だという事も。
……これは一体、何なのでしょうね。
嶺衣奈がスポ子と呼ばれているのかは……
中学時代は謎がいっぱいあるものです。今になって思い返して見ると、どうしてそうなった的なイベントがたくさささs……




