老兵は死なず・・・
うふふふふ。ダンジョンの攻略です。
攻略される側の私に、こういう日が来ようとは。
「そう言えば、師もナギもいかなる言葉を操っているのでおじゃるか」
「えっ、あれれ……?」
どこらへんから分からなくなりました?
ダンジョンコアは簡単に破壊…… なるほど。
「どうやら『母国語』で話をしたようであるな」
「そのようで」
いつの間にか、爺とは火星語で会話していたようです。
それなら水神様には分からなくても仕方がありませんね。
いやあ、失敗、失敗。
……てへ。
「あれは上位古代語じゃ。ダンジョンについては、この方が分かりやすくてな」
「左様でおじゃりまするか」
爺はから火星からの移民団の一員です。
余りにも違いすぎる環境──この星の大きな重力と高い気温──に適応する過程で突発的な進化が起こり、神格を得る事が出来たのだそうです。
そのお陰でしょうかね、この星の神様は、彼らを受け入れてくれたのは。
あとは、魔法を使うことが出来たというのがありますか。
この星には魔法を使える人が少ないのです。
やり方を知らないというか、手さぐりで魔法の使い方を学んでいるか。
話を聞いていると、どうやらそんな感じだったようですね。
「まあよい。そのあたりは後でな」
「師のおおせのままに」
じゃあ、対物ライフルの試射でもしましょうか。
的ならば、立春の宴で使ったかまどの材料が残っていますからね。
爺もどんなものか見ておいた方が良いと思いますが?
「むろんじゃ」
「では、海岸に行きましょうか」
この距離で霞を使いますか。
おぉおおぅ、なんかすんごく風格があるというか、かごを背負って隣の山を走り回っていたのと同一神物だなんて、誰も思いませんよ。
まさに、ザ・神様って感じです。
「褒めてもなにも出んわ。とにかく撃ってみるがよい」
せっかちな爺ですね。
いくつか用意しておきましたから、とりあえずは…… 何から行きますかね。
ストレージの中には、けっこうな在庫があるのです。
「そうよの、あの大物からではどうじゃ」
「じゃあ、ソロサーンからですね」
水神様が選んだものは、口径20ミリの大型対戦車ライフルです。
ヤポネスでも似たようなものが作られていたのですが、なぜかこっちの方が優秀なのです。あの頃のヤポネスは高品質の特殊鋼は難しかったのかも。
本来ならば、架台に取り付けて撃つのですけれど……
どうんっ!
みかん箱くらいの大理石で出来た的は、無事に粉々になりました。
私は平気な顔をして撃っていますけれど、単の下にはスキンスーツを装備していますからね。当然の事ですが、普通に立ち撃ちですとも。
さあ、対物兵器の品評会を始めましょうか。
「……対物ライフルに擲弾、ヒグマを殺れる拳銃に、光線か」
「これなら充分でしょう?」
光線技も久々ですね。的を置いてあった場所には、ちょっとした池が出来ちゃいました。中身は煮えたぎった花崗岩ですけれど、ささいな事ですね。
そして最後に攻撃魔法ですが……
「それは撃たんでも良いわ!」
無詠唱で空気の塊をぶつけるなんて反則ですよぉ。
それも、爺が得意な変則軌道です。
今回の魔法は、火炎の嵐を作り出すだけの、穏やかなモノだというのに……
「まあよい。これだけ派手な事をすれば主だった者は、すぐに集まるじゃろ」
まさか目的はそっちですか。
爺が土地神様でも、いささか乱暴すぎませんかね。
って、本当に来たじゃないの。
「土地神様はご無事かえ? この池は… いったい何事が起きたのじゃ!?」
亀姫様が一番乗りでしたか。
ジーナスでタテハマに直接乗り付けるとは。奇襲上陸戦を地で行ってますよ。
それから、続々と妖怪さん達も集まってきて。
集まってきた皆の前で、爺は爆弾発言をかましました。
対戦車ライフルは、大まかにふたつの系統に分けられるのです。
大口径・大型で大威力だけど重量のあるものと、比較的小口径で軽いもの。
軽いと言っても、程度の問題ですけれど……
私:前者はスイスのゾロトゥルン社が開発した20ミリ砲なのです。
父:主流は12.7ミリ機関砲弾を使うけどな。呼び名は対物ライフルだ。
私:いーの! 対戦車ライフルはロマンなの!
父:偽札工場をぶっ壊しに行くなら、それでも良いけどなぁ……




