弱い者いじめはやめよう
ナギがジジイ共の集中攻撃を受けた瞬間、俺は立ち上がっていた。
両手には、とっさに掴んだ盾を一枚づつ持って。
……この爆炎が収まったら、次はナギの反撃が始まる。
あんな連中、一瞬で粉々にされちまうぞ。
「おおっと、そこまでにしてくれ!」
はあぁ、間一髪で間に合ったぜ。
ナギがジャアックのジジイに一発入れたのは、仕方がない。
悪いが、この場での殺しはまずいんだよ。
特に、いま、ここで、くたばってもらっちゃ困るんだよ。
「何故?」
「状況終了だ。全員が行動不能になっている。基本条項3項の2だ」
「私が知らないルールですけれど?」
「いいから、戦闘中止だ。ここから先は、弱い者いじめだぞ」
とにかく、この場でこいつらが死ぬのはまずい。
本音はともかく、俺たちにとって政治的な致命傷になりかねない。
長老衆のシンパが何をするか予想も出来ねぇ。
「慈悲の一撃という単語もありますよ」
「だーかーら! そういうのはちょっと待てっつーんだよ!」
俺はナギを抱きかかえるようにして、その場を離れた。
バタバタと足音がするのは、医術師どもがジジイ共を助けに行ったんだろう。
「……いつまで抱きしめているつもりですか?」
「あ、すまん」
腕の力を緩めると、ナギはしっかりとした足取りで、里長――クラウゼルの方に歩いて行った。
ああん、ザーラックの野郎、何をちゃっかりとアピールしてやがるんだ。
「おお、ナギさん。お疲れさまでしたね」
「…朝の話にあった条件は?」
「クリアーしましたとも。満点です。いや、満点以上の出来でしたよ」
はあ? 条件だとぉ?
ああそうか、ナギは勘違いしているのか。
長老衆は、単純にヒト族が里に住み着くのを嫌って、難癖を付けてきただけだ。
そいつを利用したんだな。まったく、したたかな奴だ。
「あなた… ナギなのね?」
「そうですが、何か?」
クラウゼルは、ぽかーん、とした顔をしてるな。
そりゃあそうだろうな。
俺はしばらくの間、彼等を見ていたが、その場を離れると、老人たちを治療している医術師たちを眺めているザーラックの脇に立った。
「……で?」
「第1戦が終わった時に人を動かしました。あとの展開は医術師の腕次第です」
「相変わらず、素早いな」
適当に理由を付けて、どうにかしちまおうって腹か。
まあ、あいつらを失脚させるには丁度いいか。
「失脚? そんな事はしませんよ」
「お前にしては温厚な判断だな。ナギが来たからか?」
ナギが里に住むようになったのと同時に… ってのはなあ。
「違いますよ。今回は『何もしない』のが正解なのです」
「失脚する奴はいねぇし、病気や事故も無いんだろ。実に平和的じゃねぇか」
「……今は、ですけど」
前言撤回だ!
やっぱこいつ、何かヤバい事を企んでやがる。
まあいいか。聞けば不幸になりそうだからな。
ここは見ざる聞かざる、だ。
「……そう言えば、長老衆の御子息と、お仲間が行方不明だそうですが?」
「俺のとこにも捜索願が出てるぞ。何か情報はないか?」
ちら、と視線を送ってみた。
んんん? どうしたんだ、その顔。
「私のところには何も。里を出入りした形跡は見当たりませんが?」
「じゃあ里の中か? 連中の立ちまわりそうな所をもう一度探してみるか」
こうなると、病気とか事故はヤバい。
人数が多すぎるしタイミングも良くないな。
スキンスーツを着たナギって、無敵ですから。
無敵はス・テ・キ ∩(o|o)∩




