爆炎の中に佇むもの
おのれおのれ。
お前たち! 長老衆とは名前ばかりの腰抜け集団に成り下がったのか?
ヒッコックは杖を構える間もなく一蹴されたではないか。
我々はかつて第13グローリ独立戦隊の名を冠していた猛者なのだぞ!
「まあはあ隊長、そうかりかりしなさんなって」
「ガザック…」
せっかく里長を巻き込んで、御前試合の体裁を整えたというのに、存外と使えん奴ばかりではないか。ヤスト会戦でオーガの群れを粉砕した猛者が、ヒト族の小娘にいいようにされおって!
「連中は足止め専門の前衛だろうが。主力の我々は健在だぜ」
「お前たち……」
「久しぶりにやってみようじゃないか。殲滅戦ってやつをよ」
「……わかった、やろう!」
儂はナギに近づくと、ゆっくりと話しかけた。
そう、相手を警戒させぬように…… 穏やかな口調でな。
「ナギよ。ルール変更を申し入れたいが、いかがかな?」
「どのような変更を?」
話ながらハンドサインで後ろの連中に指示を出す。
タイミングを外すでないぞ?
「うむ。それはな…… こうじゃ!」
「なあっ!?」
どおぉおん!
さすがだな。
一糸乱れぬとは、こういう事を指すのであろう。
5人で放ったファイヤーボールはナギの身体を包み込んだ。
至近距離から放たれれば、避けようもあるまい。
「ふ、ふふふふふ。さらばじゃ、ナギ。里のはずれに墓のひとつも立ててやるから安心して成仏するがよいわ」
かつて前衛を務めた3人は、魔法の連射が得意であったが、打撃力は今ひとつ欠けておったもの。我らの戦術は、前衛3人が敵の動きを止めている間に、大火力で敵を殲滅するものじゃ。
込めた魔力が尽きるまで燃え続ける特殊なファイヤーボールは、いかなる敵も焼き尽くしてきたものじゃ。
「……やったか?」「いや、まだだ!」
炎が消え去った跡には、ひとり静かにたたずむ何者かの姿があった。
身体の左側をこちらに向け、うつむき加減になりながら。
「ぬっ、何者じゃ?」
それは表情を窺う事を許さぬ仮面をつけておる。
人の姿をしておる、銀色の異形じゃ。
緋色の紋様を浮かべた銀色の身体。
胸元には青く光る宝玉をいただき、その顔には楕円形の目が黄色く光り。
まとっている魔力は――量的にも密度も人類レベルのものではない。
これほどの魔力を身にまとう事は、魔法を使う事に長けている我々、エルフ族ですら不可能じゃ。
魔力で身体を焼き消されてしまうじゃろう。
「いや、まさか…」
ヒト族の小娘と侮っていたが、これほどの威圧を放つとは。
これは既に人類の範疇には入らぬものやも知れぬ。
「そなたは……」
この儂が恐怖のあまり、身体が震える事すら出来ぬとは。
「……ナギ、なの… か?」
異形は、ゆっくりと身体をこちらに向けると。
すうっ、と儂を見すえた。
通り過ぎた刻は、刹那の狭間にも満たぬものか、それとも永劫か。
ふと、異形の姿が視界から消えると、身体が砕け散るかのような衝撃を受けて。
次の瞬間には、儂は……
どこまでも抜けるような春の空を駆け昇る、一羽のヒバリの姿を……
ナギが着ていたのは、例のスキンスーツです。
いくつかバージョンが有りますけれど、当分はこれだけで何とかなりそう。
スーツの出番が無いことを祈るばかりですけど。




