なんでこうなるの?
長老たちは挑発に乗って、演習場に出てきました。
あの手の輩は、ちょっとプライドをくすぐってやれば、簡単に動きます。
ふっ、ちょろいモノですね。
勝ち方には、色々あるものです。
ヒト族のそれは、兵力の運用の仕方が秀でているから、という点でしょう。
この山脈の西側にあるヤスト盆地での大会戦では、その真価を発揮したと言われています。他の種族を見てみると、ドワーフ族は個々の武技、エルフ族は魔法戦士として、戦うのが一般的、という感じですね。
目の前にいるのは、老いたりとはいえ、実戦経験が豊富な面々です。
どんな戦い方をするのでしょうね。
「まずは儂からじゃ。儂は――」
「名乗りはいりません」
「なんじゃと……?」
「もしも私に勝つ事が出来たら、その時に聞いてさしあげます」
軽く煽る。
びきり……と、周囲の空気が凍るような音が聞こえた… ような気がします。
まあ、気にしないでいきましょう。
「劣等種族の分際で…… 冥神の御前に送り込んでやるわ!」
ひゅん!
大きな雹弾が頭のわきをかすめた。
そう。お互いが試合場に入った所から、試合は始まっているのです。
先鋒から無詠唱ですか。戦場を生き抜いてきた人はレベルが違いますね。
ならば、お返しです。
相手に分かりやすいように、両手を大きく開いてから呪文詠唱を始めます。
「ミームアリフ……」
「させるか!」
おお、今度は梅干しくらいの大きさの氷の粒ですか。
かなりの数が飛んできましたね。
どざあああっ!
とっさに顔は守りましたが、ポンチョの袖に仕込んでおいた鉄板は、べこべこになって飛んで行ってしまいました。でも被害はそれだけです。
「なんと? あれを耐えたか」
「…ダールぅ、アリフラー……」
「ならば、こうしてくれる!」
なんかムキになって、魔法を飛ばしてきますが、普通に躱していきます。
雹弾の魔法というのは、スピードの乗った氷の粒を飛ばすだけ、というの単純なものですが、その威力はあの鉄板を見れば明らかです。
厚さ5ミリのモリブデン鋼でさえ、べこべこになっていますから。
注意しなければならないのは、今のように大量の雹弾が飛んできた場合です。
ひとつの雹弾は軽くても、数がそろえば、それなりの質量になりますからね。
でも、もう遅い。タイムアウトです。
こちらの呪文は詠唱が終わりましたよ。
「……ターザンメ!」
力ある言葉を開放すると、私の魔法が発動しました。
ごぉおおおお……
「うごぁあああ!」
魔法の発動と共に、老戦士を中心に竜巻が起こります。
竜巻の高さは数メートルに過ぎませんが、中にいる人にとっては、さぞかし不愉快な環境でしょうね。
竜巻の中の気温は、火酒が凍りつく程度です。ああ、そうでした。竜巻の中では氷の塊が舞い飛んでいますよ。
竜巻が消えた後には、人の形をした氷の像が立っていました。
しばらく様子を見ていましたが、氷像はぴくりとも動きません。
えええ? まさかこれで終わりという訳ではありませんよね?
せめて氷を吹き飛ばして反撃のひとつくらいは……
「そこまでじゃ!」
あら、ジャアックさん。
あなたが試合場に入ったら、この試合が終わっちゃいますけれど?
この爺様、とっても強いんですけれど。
残りの爺様たちだって、人外レベルで強いはずなんですけど。
ダメダメでしたね。




