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朝から大変です

 今朝の朝議(ちょうぎ)で、里長から昨日到着したというヒト族が紹介された。

 ポンチョを着ているので細かい事はわかないが、ヒト族にしては華奢だな。

 性別は…… これもわからないが、まとった魔力はなかなかのものだ。

 それにしても、エルフ語を流暢に使いこなせるとは珍しい。


「……と、いう訳で水神様の御意思は、モダテの里に受け入れよ、とのこと」


 どう思うか、と問われても困る。

 水神様は、この辺り一帯を治める旧き神の一柱。

 その力は天にも通じるほどだ。

 雨を乞えば慈雨を賜り、長雨が続けばそれを鎮める。


 ゆえに我等は畏敬と感謝を込めて水神様を祀るのだ。


「水神様の御意思であれば、受け入れましょう。今までもそうしてきたように」

「……じゃが、あれはヒト族じゃ」


 やっぱり出てきたか。

 長老衆は伝統と格式を重んじ、新しい事を嫌うのだ。

 今までも前例がない事を始めようとすれば、必ず反対してきた。

 今回も、か。


「さようさよう。いかな水神様の御意思とは言え、ヒト族を受け入れるのはどうかと思いますぞ」

「魔法も満足に使いこなせぬヒト族が、エルフの里で暮らしていけますかな?」

「だが、あの魔力はどうなのだ?」

「魔力をまとうだけなら、ヒト族でも出来るじゃろ。だが使いこなせまい…」


 老人共が喧々轟々と舌戦が繰り広げる中で、それまで静かに話を聞いていたヒト族が初めて口を開いた。


「魔法を使いこなせる事が、ただひとつの条件… なのですね?」


 毅然とした口調で長老衆に話しかけたのだ。

 ふむ、相当に自信があると見えるな。

 ナギ… と言ったか。

 正面切って長老衆に喧嘩を売るとはな。


「よかろう。それほど言うのであれば、その腕、見せてもらおうぞ」

「そうであるな、それがよい」

「……どうなっても知りませんよ?」


 クラウゼルは不思議な笑みを浮かべながら長老衆を牽制している。

 うむ、何か隠している事があるな?

 この場を切り抜けられるだけの、何かを。

 見せてもらおうか、ナギの実力とやらを。


「……私は別に構いませんが。外はまだ暖かいとは言えませんよ?」

「これしきの事で、外を歩けぬほど歳は取っておらん!」


 年寄りに早朝の気温は堪えるだろう、だと?

 こんなに簡単に挑発に乗るとはな。

 仕方がないな……


「ザーラック殿、演習場を使わせてもらいたいのだが」

「ふむ、私も武士団長(ザーラック)殿にそれを提案しようと思っていたところです」


 ここは連中の思惑に乗ってやるとするか。

 老人たちはここでナギを葬り去りたいところだろうが、里長立ち合いでの試合という形式をとれば、不測の事態があっても色々と介入しやすい。


「いかがかな皆の衆。長老衆の言い分が本当に正しいのか、確かめてみたいと思うのだが。

 里長も、それでよろしいかな?」


 いいチャンスだ。

 ナギには悪いが、この状況、使わせてもらうぞ。


「ナギ、どうしますか?」


 ふっふ、クラウゼルも乗り気だな。何か策でもあるのかな。

 すました顔でナギに聞いているが、子供の頃からの付き合いだ。

 あいつが何を考えているか予想するまでもないぞ。

 隣でザーラックもニヤニヤしているじゃないか。

 ……こいつも何か知っているな?


「私は別に構いませんが…… 最低限のルールは必要かと」

「我らに手加減せいと言いたいのかの?」

「あとになって手加減してやったからだ、などと言われたくないのですが?」

「ぬう……」

「ちょっ、ナギ? 待ってちょうだい、そうじゃなくて……」


 くっはぁ! なかなか楽しい事になりそうじゃないか。

 クラウゼルも目論見が外れて残念だったなあ、おい。


 いいよ、いいねえ、その昏ぁい笑顔。

 殺る気満々じゃねぇか。


 ……ようし、わかった。

 これが終わったら、後見でも何でも引き受けてやろうじゃないか。

 家老としてではなく、このストマー・ソルナックが、な。


 だから。


 全力でやっちまえ!

はて、どこかで聞いたことがある名前ですが……(遠い目)

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