神々を崇めるもの
番外編(登場人物のまとめ的なもの)を18時に投稿します。
本編とは関係がありませんが、ネタバレがあるかも。
みなさまよろしく。
カロリーナが水神様の祠から、無事に帰ってきたのは喜ぶべきことだけど。
前回同様に魔物の群れが出てきましたけど、武士団の主力部隊の全員に出撃を命じたんだもの。
ゴブリンなら脅威にもならないわ。
だってね、100人も兵力を投入したのよ?
結果的に見れば、杞憂に終わったけど。そこまではいいわ。でもね。
水神様の祠では、一人のヒト族を紹介されて、連れ帰ったのが… 面倒ごと。
かの神は、とても旧い神。1000年もの昔には、すでに神として在ったの。
だから、その神託は非常に重いのよ。
――かの者、里に受け入れるべし。
――水神としての、麿の意志なり。
ここまで明確に意思を示されたら、他に選択肢なんてないでしょ。
それに、一緒にお昼を食べたけど、なかなかいい子じゃないの。
でもねぇ…… 本当に面倒なのは、こいつらなのよ。
「いけませんな、いかに里長とて勝手は許されませんぞ」
「そうじゃ。いかに水神様から話があったとはいえ、ヒト族でありましょう?」
私にこうやって言いがかりじみた意見をしてくるのは、旧王国時代にこの世で生まれ、新王国時代の今を生きる長老たち。時代が変わる事を怖がっているのよね。
古き良き時代と言えば聞こえはいいけれど、エンサイクロペディアを紐解けばわかるように、旧王国時代というのは血と破壊、混沌と知性の入り混じる時代。
エンサイクロペディアは、旧王国の賢者たちが編纂した英知の結晶。
それはエルフがドワーフやヒトと共に手を取り合って歴史を歩んできた証。
長老たちは、それを封じようと画策している事を知らないとでも思っているのでしょうか。御子息たちを使って私を亡き者にする計画も知っていますよ。
「長老衆の意見を無碍にする気はありませんけどね」
「ならば、クラウゼル殿。この話は無かった事にするのですな」
「うむ、それがええじゃろ。水神様が何と言おうとヒト族なんぞ、要らぬ!」
言ってしまいましたね? いいでしょう。ここは勝負です。
水神様をないがしろにしましたね?
「水神様の御意思を曲げる事の出来る、長老衆の話ですからね」
「クラウゼル殿、いま何と言われたかな?」
ジジイ、お前たちだよ。いま水神様が何と言おうと、って言ったでしょ。
「あなたがた長老衆は、水神様がお望みになった事を『無かった事』にせよと言われたのです。それは水神様よりも上位にあたる御方だけが出来る事ですよね」
「それは……」
私は狼狽えた老人たちに畳みかけるように言い放った。
「水神様を軽んじるばかりか、ハイエルフたるエスター様の御意向も無視。
二柱の御意思などちゃんちゃら可笑しくて、聞く気にならんと言ったのですよ、あなたたちは!」
「そうは言うが、ヒト族じゃぞ! エルフ族に下賤な血を混ぜるおつもりか?」
神の御意思の是非については不利を悟ったのでしょう。
今度は人種問題ですか。
「ヒト族は魔法すら満足に使えぬ劣等種族。ドワーフですら属性魔法を使いこなす程度の事はできるのじゃ」
「そうじゃ、儂らはかような劣等種族を受け入れるほど愚かではない!」
放っておくと、神が創造した優良種たるエルフ族とか言い始めそうね。
……暇つぶし程度には話を聞いておきましょうか。
さあ、彼等は上手くやってくれるかしら?
明日が来るのが待ち遠しいわね。
「……そもそも、神代の時代には……」
分からない事を言い始めたわね。
話のネタが尽きて、世間話でも始めそうな雰囲気だわ。
そろそろ夕食の時間になるんだし。
そろそろ帰ってくれないかしらね。
というか、とっとと帰れっての!
あ~あ、昔はよかった…… かつて英雄と呼ばれた人たちは、そう思うかも知れません。
英雄たちの活躍は伝説となりまして。
やがて神話と呼ばれるものになりますが……
神話はお笑いへと進化するのかも知れない(笑)




